視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出す新感覚ドキュメント『7RULES(セブンルール)』。
6月2日(火)放送回では、水中写真家・高橋怜子に密着。有り得ないほどの至近距離で野生動物をとらえた写真の力強さに定評を持つ高橋。エンジニアから転身してわずか1年で、世界的写真コンテストの日本人初グランプリを受賞した、彼女のセブンルールとは。
ルール①:クジラを探すとき イヤホンで音楽を聴く
野生のザトウクジラの撮影を試みるため、「波が高い時にクジラが遊ぶ」と、荒れ模様の海へ出発した高橋。船での移動中、光の反射などを防ぐ偏光レンズのサングラスをかけ、目視でクジラの姿を探す。
そして、高橋は音楽を聴かないと日常的なことを考えてしまって集中できないのだという。物思いにふけりたくなる気持ちを断ち切るために、船上で必ず聴くというのが、落ち着いた曲ばかりを詰め込んだ「Chill Mix」というプレイリストだ。
ルール②:生き物の本来の色にレタッチする
撮影に取り組んだ3日間で実際に写真が撮れるチャンスはほんの数分。その間に、カップルと思われる2頭のザトウクジラの姿をカメラに収めた高橋は、写真のレタッチに取り掛かる。
水の中での撮影では、青色が強調される「青被り」という現象が起こり、全体的にぼやけた印象になってしまうという。それを補正して輪郭を強調する他に、彼女が大切にしているのは、生き物本来の色により近づけ、身体の質感や肌の傷を際立たせること。
加工ではなく、あくまで補正にとどめ、本来の色味にこだわるのは「海底に行きたくても行けない人はたくさんいるので、目で見たそのままを人に伝えたい」という思いからだ。
ルール③:撮影終わりに地元の人と飲みに行く
エンジニアを辞め、写真家として歩みだした当時から続けているのは、その日をともにしたメンバーと、撮影終わりに飲みに行くこと。「その土地に根付いて(海を)研究している人とか、観察している人とかに『あそこで何が見れたよ』とか 『あそこに行ったら最高だったよ』とか、良い情報も沢山もらえる」と話す高橋。
例年を参考に推測するより、絶対に正しい情報を得られる場。親睦をはかるだけでなく、貴重な情報収集の機会でもあるのだ。
ルール④:徹底的に下調べする
撮影の場所と対象が決まったら、それについての下調べは欠かさない。インターネット検索を用いて、世の中で(その生きものの)どんな写真が撮られているのかをチェックし、イメージを膨らませる。
さらに生態や行動傾向まで、時には本を買って調べ、対象への理解を深めていく。そして、納得のいく情報が得られるまで、現地ガイドと何度もやり取りをする。徹底的なリサーチは、どれだけ近くに寄れるか、ストロボ発光が可能かなど、写真を撮る上で重要な点を押さえておくために欠かせない。
ルール⑤:水中にカメラは2台持って行く
海での撮影時、必ずカメラを2台を用意する。
はじめは近づかずにズームで撮影し、対象が寄ってきたらカメラをスイッチして撮るのだという。「本当は、ズームレンズは好きじゃなくて。フィッシュアイレンズでギリギリまで寄って撮ると臨場感が出る」と話すが、動きの予測できない生物の、あらゆるシーンに対応するには、レンズの異なるカメラ2台が必要だ。
そしてもう一つの大きな理由が。「いろいろやらかすんで、本当に心配なんですよ。電池が入っていないとかよくある。メモリーが入っていないとか。(海に入ってから気づいて)ショックすぎてもう…」。過去の手痛いミスから、現在のスタイルが確立されたらしい。
ルール⑥:写り込みは許さない
今回撮影したジュゴンを含め、絶滅危惧種の撮影時は、インストラクターの他に生物保護員のレンジャーや、現地の警察官など、大人数が同行することがほとんど。希少な生物に危害を加えないよう目を光らせるレンジャーの姿が、広角で撮影した写真に写り込んでしまうことも少なくない。
写真の加工で消すこともできるが、それには絶対に頼りたくないという。目で見たそのままを伝えるためにも、足したり引いたりしないのは彼女のこだわり。いかなる写り込みも許さず、全部ボツにしてしまうのだ。
ルール⑦:先のことは考えない
会社員としての安定した生活を捨ててフリーランスの写真家の道を選んだ高橋。きっかけとなったのは、会社の先輩の病死。「確かな先、未来っていうのは実はないかもしれないんだなっていうのが大きく膨らんでいった」と、当時を振り返る。
「貯金がゼロになっても取り敢えず行きたいところ行って、撮りたいものを撮って。それで何も実を結ばなければその時考えるかって。遠い先のことは考えない。絶対に。本当にわからないからね。何が起こるか。今のことを考えるのが重要なの」。
20年以上勤めた会社を辞め、好きな写真と向き合う生活を選んだ1年後に、世界から注目される写真家の仲間入りを果たしてしまうのだから、人生は何が起こるかわからない。
※本文、敬称略
次回、6月9日(火)の『7RULES(セブンルール)は特別編として、コロナ禍で奮闘する飲食店スペシャルが放送予定。過去の放送で密着された彼女たちが、営業の制限がかかる中で自身に課す新たなルールとは。