宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第7回は、彩吹真央(あやぶき・まお)が登場。

繊細な演技力と豊かな歌唱力を持つ雪組男役スターとして活躍し、2010年の退団後は舞台を中心にミュージカル・ストレートプレイなどで幅広く活躍中。2月17日(木)から上演される舞台「僕はまだ死んでない」に出演し、終末期医療を題材にした本作で医師を演じる。

そんな彩吹に、フジテレビュー!!がインタビュー。

後編では、宝塚歌劇団の演技指導の仕事について聞いた。また、タカラジェンヌOGといえば、オシャレで個性的なファッションも魅力のひとつ。そこで本連載では、それぞれの“こだわりの一着”も紹介してもらう。

<【前編】彩吹真央「天海祐希さんのお芝居に衝撃を受けた」演劇好きになったきっかけ>
<彩吹真央 フォトギャラリー(全9枚)>

宝塚現役時と今の感覚を混ぜ合わせて、演技アドバイス

――彩吹さんは近年、宝塚歌劇団に演技指導スタッフとして関わっていますが、きっかけは何でしたか?

宝塚在団時に深いご縁があった、演出家の小柳奈穂子先生にお声がけいただきました。宝塚の生徒は各組80人近くいるのですが、小柳先生が演出に集中できるよう“生徒のかゆいところに手が届く演技指導者”を探していらっしゃったところ、宝塚OGで今も舞台に立っている私にお声をかけてくださったのです。2020年の「はいからさんが通る」(花組)に続き、今年「今夜、ロマンス劇場で」(月組)に携わらせていただきました。

――指導では、どんなことを意識していますか?

「あの子、今こんなこと考えているな」とか「ここ演じにくいと思っているだろうな」とか、私自身が現役だったときの感覚と、今現在の役者としての感覚を混ぜ合わせて、アドバイスしています。

例えば、宝塚大劇場という大きな舞台で、心の機微や変化をどう表現するか。客席から見るのと実際に演じるのでは、受け取り方が全然違います。私自身、現役のときはなるべく客観視しようとしていましたが、できていない部分もあったと思います。

また、ファンの方がどんなところにキュンとするかも考えています。男役と娘役が、どうセリフを交わしたら、どう手を取り合ったらキュンとするのか。宝塚ファン、宝塚の元生徒、そして現役の役者として、27年の芸歴からいろいろ引き出してアドバイスを送っています。

――大変だなと感じることはありますか?

ないですね、楽しいことばかりです!逆に、娘役さんを見て「あの見せ方素敵!きれいやなぁ、ちょっと盗もう」と思うこともあるくらい(笑)。

今回の「今夜、ロマンス劇場で」(月組)は、前回の「はいからさんが通る」(花組)に比べてお稽古期間が短かったので、まだ何かアドバイスできるんじゃないかと少し心配しましたが、初日の舞台を観て、後日もう一度観に行ったら、すごく良くなっていて。お客様を前に演じることで、ぐんと成長した姿を目の当たりにしました。もう全然心配していません。

月組の皆さんは志が高く、もともと芝居心やスキルを持っている方ばかりです。また、下級生が上級生のお芝居を見てしっかり勉強しているのだと感じました。

――演技指導をすることで、自身にも変化を感じますか?

大きく変わったかはまだわからないですが…「今夜、ロマンス劇場で」はコメディ要素が多い作品なので、今回私が出演する「僕はまだ死んでない」でも、「人間って面白いな」と思ってもらえるポイントを作れたらと思います。もちろんコメディ作品ではないので、笑わせようということではありません。さじ加減が難しいのですが、シビアな物語の中にも、ホッとする瞬間を作りたいです。

洋服の毛玉取りに夢中!

――最近ハマっていることがあれば教えてください

プライベートは面白味があまりないのですが…強いて言うなら、洋服の毛玉をジャリジャリ取ること(笑)。

昨年12月の「今夜、ロマンス劇場で」のお稽古期間中に、月組の皆さんとクリスマスプレゼント交換をしたんです。感染対策の関係で、プレゼントを渡す相手は事前にくじ引きで決めたのですが、私は千海華蘭(ちなみ・からん)ちゃんという、いつもおしゃれな生徒さんに渡すことになって。それから2週間ずっと彼女のことを考えたのですが、素敵なお洋服を長く楽しめるよう、毛玉クリーナーをプレゼントすることにしました。

自分用にも買って使ってみたら、毛玉を取るのがもう楽しくて(笑)。今日着ているセーターやマフラー、お稽古場でつけているレッグウォーマーなど、いろいろなものを引っ張り出して毛玉を取っています!

――これからの活動のビジョンや、やってみたいことを教えてください。

コロナ禍では抑制されることが多く、心が“ギュッ”となりがちです。舞台がいろいろと中止になり、やるせない思いもあります。でもそれに飲み込まれるのではなく、どうせやるなら面白がって、楽しいと思える瞬間を見つけた者勝ちなのではと、2022年を迎えるときに思いました。

今もほぼ毎日、家とお稽古場の往復だけですが、その中でも楽しいことを探すようにしています。好きなお仕事をさせていただけて幸せですが、今まで通りのテンションでやるのではなく、セリフを覚えられない苦しさや、医師役という難しい壁さえも楽しもうと思っています。

ですから今年はどんな作品、どんな役でも「面白い!」をたくさん探していきたいです。私自身が、新たな役にチャレンジすることをもっとエンジョイしていきたいですし、その結果、見てくださるお客様が「面白いな」と思ってくれたらうれしいです。

<こだわりの一着>

袖の部分がニット素材になっているのがポイント

宝塚時代から着ている、「And A」というブランドのノーカラージャケットです。15年以上前、梅田芸術劇場の近くで買った気がします。男役のときは私服もパンツスタイルがほとんどで、宝塚を退団したときにだいぶ処分したのですが、このジャケットは「いつかスカートを履くことがあっても合わせられるな」と思って、手元に残しました。

いろいろなスタイルに合わせやすいですし、柔らかい本革素材も気に入っています。秋口など服装に悩む時期にちょうどいいですし、前を閉めればタイトなシルエットになるので、真冬は上からコートを着ることもできます。

撮影では着る予定はなかったが、「このスカートに合いそう」と着用してくれた

今は、スカートに合わせて着ることが多いです。例えばロングスカートを履くときは、トップスは短めのほうがバランスがいいですよね。このジャケットは、いろいろなスカートに合うので、よく登場します。

腕の部分がニット素材で毛玉がつきやすいのですが、最近、毛玉クリーナーを購入したので(笑)ジャリジャリ取っていたら、新品のようにきれいになりました!大切な一着なのでこれからも丁寧に着続けたいです。

撮影:河井彩美