鈴木もぐらが、子どもが生まれてからの心境の変化を明かし、「やっぱり家族が力になるっていうのは、これは本当にありますよ」と語った。

1月9日(日)の『ボクらの時代』は、高円寺にゆかりの深い、鈴木もぐら(空気階段)、嶋佐和也(ニューヨーク)、坂井良多(鬼越トマホーク)が思い出の居酒屋さんに集合。芸人になったきっかけや、賞レース主義の現在のお笑いや子どもの存在などについて語り合った。

鈴木もぐら「ミルクボーイ、ななまがりがいなかったら今はない」

3人は、それぞれが「芸人になったきっかけ」について語った。

嶋佐:芸人になったきっかけは?

鈴木:きっかけは、僕は本当に昔からテレビがすごい好きで。

嶋佐:そうなんだね。

鈴木:そうなんです。母子家庭だったので。とにかく、昼、夜、働いてるじゃないですか、母親が。なので、もうテレビ。とにかくもう、ずっと朝から晩まで見てるんですよ。

坂井:あ、もぐらがね。唯一の娯楽という。

鈴木:娯楽です、娯楽です。ゲームとかも、貧乏なのでないですし。それで大学に入ったときに、ちょうど落研(落語研究会)が…。

嶋佐:落研入ってたんだもんね。

鈴木:そうです。なんかビラまいてて「ライブやるんで見に来てください」っつって。「どうせ大学生なんかつまんねえだろ」と思って見に行ったら、そこにミルクボーイさんとか、ななまがりさん(※)とかが出てて、めちゃくちゃ面白くて。「いや、こんな面白い人たちいんの?」と思って。

(※)現在は、2組ともに吉本興業に所属

嶋佐:素人で、大学生で。

鈴木:そこでもう「こういうふうになりたい」って、思いっきり影響されて。それで目指しました。

嶋佐:じゃあ、ななまがりさんとミルクボーイさんのおかげというか、きっかけはそうなんだね。

鈴木は「あの人たちがいなかったら、絶対一歩踏み出せていない」と回顧した。

芸人になったのは、頑固な父親からの自己解放

一方、坂井は高校卒業後「23歳まで何もしていなかった」といい…。

鈴木:元々ご実家が…。

坂井:そう。元々、ひいじいさんが温泉を掘り当てて、長野で温泉をやってたの。温泉の銭湯というか、旅館とかも。それを継ぐもんだと思ってたんだけど、仲が悪くてね、一族が。「犬神家の一族」のスケール小さい版みたいな。

鈴木:(笑)。

嶋佐:それはでも、本当に正味な話ね。

坂井:そうそう。仲が悪くて。おやじとも仲悪いんだけど、なんかずっとあんまり好きなテレビ見せてもらえなかったというか…。

嶋佐:由緒正しいから、意外とそうだったんだよね、良ちゃんは。

坂井:だから、おやじは志村けんさんのお笑いが一番というか、それ以外の後輩たちは認めないというか…。ダウンタウンさんとかナイナイさんの番組はもう「下品だ」っつって全部(チャンネルを)変えてたのよ。

嶋佐:リアルタイムで見てないんだ?

坂井:そうそう。だから俺、バラエティをAVとかを見る感じで見てたから。おやじに内緒で。

嶋佐:こっそりね。

坂井:「なんでこんな思いをしなきゃいけないんだろう」と思ってたけど。

嶋佐:おやじさん、じゃあ志村けんさんだけはめっちゃ好きだったんだ、芸人で。

坂井:昔の考えの持ち主でさ。ジャイアンツとか志村けんとかが好きで、それ以外、その後の世代のものを認めないというか。何か新しいものが入ってくると否定したいというか。

嶋佐:頑固おやじ。

近所にコンビニエンスストアができたときにも「なんで24時間やってんだよ!っつって。ずっとコンビニとフリースタイルバトル」をしていたと振り返り、「今は笑い話にできるけど、子どものときはもう恐怖でしかなかった」と明かした。

坂井:結局、何かで抑圧された人が、自己解放のために芸人やってる人がほとんどかも。

鈴木:いや、本当そうですね、だから、そう考えたら…。

坂井:もぐらはたぶん、貧乏からのテレビを見た憧れ。

鈴木:貧乏、母子家庭で、つまんなくて…。

坂井:で、俺はおやじコンプレックスだからね。「おやじの人生みたいになりたくない」みたいな。

嶋佐「サラリーマンになるのが怖かった」芸人の道へ

そんな中、嶋佐は「2人に比べたら普通」と自己分析。中学、高校とモテない青春を過ごし「とにかく田舎を出たくて」大学に進学したという。

嶋佐:高校卒業するときは「芸人になりたい」とかなくて、「とにかく東京に行って、大学生になって、はっちゃけたい」みたいな。やっぱりそれなりに楽しかったんだけどね。大学生になったら初めて彼女とかもできて。

坂井:ああ。大学は満喫したんだ。

嶋佐:田舎のときよりはそれなりに楽しく過ごしたんだけど。でも、いざ就職活動するってなったときに、「いや、ちょっと普通にやっぱりこのまま就職したくない」と思っちゃったんだよね。なんか「まだ足りない」と思った。大学時代楽しかったけど、やっぱり中高時代のツケがあるから。

鈴木:まだ返せてないと。取り返してないと。

嶋佐:返せてない感じ。普通に働くほうが怖かったね。だから、お笑いやろうと思った。

鈴木:いや、ロックンローラーですよ、もう。

坂井:確かに。

鈴木:もう普通に働くほうが、芸人になるより怖かったっていう。

嶋佐:そう。

坂井:「サラリーマンのほうが怖かった」と。

嶋佐:(うなずいて)サラリーマンになるほうが怖かった。

鈴木:根底が、だからロッカーですよね。ロックンローラーというか。

嶋佐:俺、全然やりたい仕事もなかったし、仕事できないから。

ここで、あることに気付いた坂井が「2人とも成功したから、全然聞いていられるんだけど」と言い出し…。

坂井:夢を語って、「いや、それロックンローラーですよ」っていう励ましを、よくほかの高円寺の飲み屋でも見る(笑)!

鈴木&嶋佐:(笑)。

3人は、「クズがクズを励ますときの“高円寺あるある”」だと笑い合った。

優勝賞金で借金完済、そしてクズ芸人卒業へ!?

「キングオブコント」優勝で獲得した賞金で、借金を完済すると宣言した鈴木。坂井から「どうするの?今まで培ってきたクズトーク、二度とできないよ?」と聞かれると、「今年はクズ芸人を卒業したい」とも。

坂井:でも、すごいよ。高円寺純情商店街で、飲んだくれて外で寝てたようなもぐらが…純情商店街の看板(横断幕)にね。

鈴木:ああ、そうだ。

坂井:「『キングオブコント』優勝おめでとうございます、もぐらさん」って。そんなことやってくれる街、高円寺しかないですよ。

鈴木:いや、そうですね。

嶋佐:すごいことだよね、それは本当に。

優勝したことで人生を変えた鈴木を、坂井は「高円寺ドリームよ」と称えた。

賞レース主義、コンプライアンス重視のお笑い界に思うこと

また、優勝こそ逃しているものの、同じように賞レースで上位に食い込み名前を知られるようになった嶋佐は「僕ら(ニューヨーク)は本当にそれで変わった」と語った。

嶋佐:俺ら(コンビ)って、それこそ2人とかと比べたら、なんだろう、マンパワーというか、単純にそれほどエピソード濃くないし。なんか「ネタ面白い」って当初言われて。それって、イコール賞レースで結果出したいなと思ってたからさ。

坂井:でも、タイプは全然違うよね。俺ら(鬼越トマホーク)はもう、“賞レース弱男”になったから。

嶋佐:いや、ていうか本来は鬼越みたいな形の芸人が正解だと思うんだよ。ちょっと今は異常だよ。賞レース主義になり過ぎてない?

鈴木:主義だね。やっぱりその、重機じゃないと通れない道みたいなのもありますしね。

坂井:そうそう。だから、みんなと違う道を行って、お笑いってこういうのもあるよっていう、道しるべに…。

嶋佐:それが本来のお笑いだし、より若手のすそ野を広げてくれている立役者だと思うから、絶対にそれはその方がいいと思う。

鈴木:道がいろいろあるっていう。

坂井:あとちょっと気になるのが、やっぱり、昔から、「M-1」とか「キングオブコント」があったとして、じゃあ極楽とんぼさんとかロンブーさんとかみたいな人たちは出てたかどうか、っていうね。賞レースじゃないじゃん、ネタじゃないじゃん、あの人たちは。

嶋佐:やっぱり出ないかっこよさもあるよね。

坂井:そうそう。あと人を傷つけない笑いじゃないけど。なんか要は芸人が一番コンプライアンスとかルール守んなきゃいけないみたいな。

嶋佐は「確かに俺も本当そう思うんだよね。なんか、今ちょっと一番ヤバいかもね」と、現在のお笑い界の在り方を危惧した。

鈴木もぐら「家族が力になるっていうのは、本当にある」

3人の中で唯一家庭を持つ鈴木は「やっぱり家族が力になるっていうのは、これは本当にありますよ」と語った。

鈴木:子どもはもうね、僕だけの子どもじゃないというか、もう社会の子ども、みんなの子どもだからね。

嶋佐:もちろんね。

坂井:子どもは宝だね。

鈴木:宝ですよ、やっぱり。

坂井:だからもう、もぐらの人生は「キングオブコント」である意味、ピークを迎えたようなもんじゃん。あとは、子どものために命を削って。

鈴木:そうですね。

嶋佐:でも、そのネクストステージって、すごいすてきなことだと思うよ。

鈴木:子どもが生まれた瞬間、なんかもう「自分の物語、終わっちゃった」と思ったんですよ。

坂井:あ、いいセリフだね。自分の物語、終わったんだ。

鈴木:いや、もう生まれた瞬間に「うわっ」と思って。「俺、もうサブキャラだ」と思っちゃったというか。

嶋佐:それ(「キングオブコント」で)優勝する前だもんね。

鈴木:そうですね。だから、『ドラえもん』で言ったら、もうのび太のおやじ。たまにしか出てこない人。で、もうその主人公というか、のび太は今、ここに生まれたから、(自分は)一人前になるまで面倒を見るだけの。

坂井:主人公が替わったっていうことだね。

鈴木:主人公がもうここで替わったと思いました、本当に。

坂井:もう受け継いだと。

鈴木:はい。

鈴木:だから何か、サブキャラとして、息子に迷惑かけないように。どう、いいサブキャラでいるかっていう。

鈴木の思わぬ!?告白に、坂井は「いいセリフ」、嶋佐は「それがちゃんとできてるのがすごい。やっぱできない人、できてる人ってたぶんいると思うから」「家庭も持って売れてる。それだけ最上級なことないよ」と、感心した。