なぜ平成生まれの若者たちは、昭和の時代に熱狂しているのか。そして、彼らが口をそろえる“エモい”とはいったい何なのか。

12月14日(火)の『所JAPAN』(カンテレ・フジテレビ系)では、平成生まれの若者たちに人気の「昭和レトロ」を大調査。

スタジオには、MCの所ジョージ、レギュラーパネラーの佐々木希、パネラーとしてカズレーザー(メイプル超合金)、陣内智則、バカリズム、若槻千夏が登場した。(五十音順)

渋谷で見つけた昭和レトロブーム

渋谷センター街の奥にある東急ハンズの1階から入って一番目立つ場所にあるのが、昨年7月にオープンした、ラジカセ・カセットテープの専門店「DESIGN UNDERGROUND SHIBUYA-BASE」。

80年代後半にCDの縦入れで人気となった「Panasonic RX-DT50」や、1986年にグッドデザイン賞を受賞した「National RX-FW19」などの、発売当時、昭和世代の憧れだったラジカセが豊富に並んでいる。だが、客の多くは若者だという。

さらに調査を進めると、現代にはない斬新なデザインが若者の感覚に受け、3年ほど前からカセットテープブームになっているという。

音楽業界でも新たな動きがあるそうで、店主の松崎順一さんは、「ここ数年来、日本や海外のアーティストが、カセットテープで自分たちの音楽をリリースするような動きが活発になってきている」と説明。

レディー・ガガやジャスティン・ビーバーなど、若者に人気のアーティストがカセットテープで楽曲を発表するなどの動きも見せている。

さらにこちらのお店では、中古のカセットテープを音声を消去して販売。お店に来店していた28歳の男性は、「カセットテープは、中身が消されていているのですが、(カセットテープの)ラベルに『○○のテープ』だったり、『○○くんへ』とか書いてあるんです。それは『きっとその人のために録音したんだな』とか、結構渋い曲とかだと『たぶん、友達に貸したテープだろう』とか、そういうのがわかって面白い」と魅力を語る。

この男性は、かなりのカセットテープマニアだそうで、「未開封のテープが約5000本くらいあって、開封済みのテープが約5000本以上あります」と明かした。そんなお部屋におじゃましてみると…。

普段の楽しみ方を見せてもらうと、中身を消してある開封済みのカセットテープを取り出し、当時の所有者が書いた曲のインデックス通りに、CDからカセットテープに同じ曲をダビングするのだという。

男性は、「わざわざカセットテープに録音して聞くことで、(自分は世代ではないので)懐かしくはないんですけど、懐かしさを感じられる」とダビング中は、カセットの音に集中しながら、インデックスシートを眺め当時の状況を妄想するのだとか。

昭和レトロマニアであるバカリズムは、「あそこまで(インデックスに)書いてあるんだったら、ちゃんと(録音して音楽を)入れてあげたいなと思います。あれを作り上げて、自分で聴くのが楽しいんです」と共感。

音声消去済みカセットテープには、確かに今の若者を魅了するエモさがあった。

また、所自身も“昭和の部屋”を作ったことがあるそうで、「畳も自分で張って、窓の外とかには、昔の看板を置いたんだよ。(昔のテレビも見られるように)テレビのアンテナもつけたりした」と明かし、「(その部屋で)画像の荒れたテレビを見ながら、昔の漫画の広告を見ているといい感じ」と説明した。

これにバカリズムが、「それが『エモい!』って言うんですよ」と指摘するも、所は「違うからね!俺は、昭和を生きてきて振り返っているけど、君たちは昭和をバカにして、下に見て『うわ、こんなことやってたんだ』みたいな。みんなふざけてる。昭和をなめきって下に見てる」と主張。

カズレーザーは、「(エモいとされるものを)やりつくして飽きたから『エモいがわからない』って言っているだけ」とツッコみ、バカリズムも「エモ、終わってる」と同調。スタジオは爆笑に包まれた。

20代が殺到!静岡の昭和ホテルがエモい

そんな中、小松菜奈やきゃりーぱみゅぱみゅなど平成生まれの有名人が写真集の撮影で訪れた、静岡県伊東市にある「ハトヤホテル」(1946年創業)がエモいと若者たちに人気を集めているという。

このホテルは、いずみたくさんが作曲を手掛けた「伊東に行くなら~♪」のCMソングも有名な、昭和20年代に名をはせたリゾートホテル。

3代目社長の原口さんに、創業から75年続くハトヤホテルにいったいどれくらい若者が来ているのか聞いてみると、「『伊東』という観光地の特徴もあってファミリーが多いのですが、今は半分くらいが20代の若者グループの方です」と説明。

これまで20代だけの宿泊客は、ほとんどいなかったが、現在は5割が平成生まれの若者だという。

原口社長は「不思議な気分ですね…。何がいいのかな?たまたまあったものが受け入れられたという感じなので…。もう、わからないですね」と困惑気味。

そこで番組では、「ハトヤホテルエモスポットベスト5」を発表した。

行きたい!ハトヤホテル「エモスポット」5選

1位:まるで宇宙船 渡り廊下がエモい

ハトヤホテルの本館と別館をつなぐ長さ40mの渡り廊下。昭和の未来感があふれる、まるで宇宙船のような独特なフォルムと、レトロ感あふれるカーペットのデザインが若者に人気。きゃりーぱみゅぱみゅのアルバムの撮影でも使用された。

2位:豪華絢爛!螺旋(らせん)階段がエモい

1階と2階をつなぐ螺旋階段。2階から見下ろすように写真を撮影すると、エモさが爆上がりするという。

3位:山側の部屋から見える ネオンサイン

海が見えるオーシャンビューの客室ではなく、ハトヤのロゴでできたネオンが見える山側の部屋。ハトヤの「ハ」の部分が消えかけていて、チカチカしているのがまたいいんだとか。

4位:レトロな字体のロゴがエモい

どこか鳩を感じられるハトヤの字体。創業者の原口清司さんが75年前のオープンに合わせて書いた直筆だそう。

5位:建物のデザインがエモい

特に外壁のギザギザが近未来的。ファッション誌「荘苑」で小松菜奈を写したページにも選ばれた。

平成生まれが集まる山奥のエモスポットは、タイムカプセルのように時を止めた懐かしのホテルだった。

所は、「社長が(エモいを)理解できていないのが一番面白い」と、VTRでところどころ若者の「エモい」に対して「不思議ですね…」を連発していた原口社長にニッコリ。若槻も「社長には、今のままでいてほしい」と語った。