ショ~~ティ~~~~~レ~~~~ン♪
ショ~~ティ~~~~~ノ~~~~ン♪
この何言ってんのか、何語かすらわからない、不気味過ぎるBGMが耳から離れない!!
「13歳から13年間行方不明となっていた少女が突然家に戻ってくる…」というあらすじだけで、どんなドラマなの?と高まるワクワク感…そして脚本は、僕の初めて買ったCDが『ミセスシンデレラ』(※1)主題歌「DO NOT」(藤井フミヤ)で大変お世話になった浅野妙子先生、監督は『タブロイド』(98年)、『アフリカの夜』(99年)、『ラブコンプレックス』(00年)、『カバチタレ!』(01年)、『ロング・ラブレター~漂流教室~』(02年)、『ビギナー』(03年)と、90年代後半から00年代前半にかけての“僕的ドラマ黄金時代”、全部のドラマ大好き!の水田成英監督(※2)という布陣で、もう期待しかない!!期待しすぎて僕がほんの少し担当している雑誌「日経エンタテインメント!」8月号、夏ドラマダービーでも、すでにほとばしる興奮を抑えきれず、推しコメントを出したほど、楽しみでしかなかった、超待望!!のドラマの冒頭が、
ショ~~ティ~~~~~レ~~~~ン♪
ショ~~ティ~~~~~ノ~~~~ン♪
謎過ぎる!
そして、最高過ぎる!!
2020年のドラマBGM大賞、最有力候補です!(個人的賞です)
※1:『ミセスシンデレラ』(97年)は、薬師丸ひろ子さん主演のいわゆる不倫ドラマ。なんだけど、主人公の主婦が内野聖陽さん演じる世界的ピアニストと恋に落ちてしまうというロマンティックラブストーリー。浅野先生はこの作品のほか『Age,35 恋しくて』(96年)や『薔薇の十字架』(02年)、最近では『黄昏流星群』(18年)など、不倫ドラマの名手。とみせかけて『神様、もう少しだけ』(98年)や『大奥』シリーズ(03年~19年)、『ラスト・フレンズ』(08年)、『八日目の蝉』(10年)など、激情系作品も絶品。
※2:水田成英監督は映像美とスピーディ&スタイリッシュな演出が特徴の監督。直近作では『アライブ がん専門医のカルテ』も担当しており、ヒューマンドラマはお手の物。
っというわけで、今まで隠していた僕のドラマオタクが全開してしまって、『13』のレビューだっていうのに序盤から制作陣への熱い思いとBGMの不気味さだけでついつい字数を埋めてしまいました。大変申し訳ございませんでした。
だけどご安心下さい、やっぱり「オトナの土ドラ」裏切りませんよ!!
そのド頭でかかる謎過ぎて不気味過ぎるBGMの雰囲気のまま、最後の最後まで緊張感たっぷり、見逃せないシーンの連続なんです。
てっきり、空白の13年間を埋める家族の再生ドラマ、ヒューマンストーリーかと思いきや、
思った以上のショック&サスペンス&ミステリー!
13年間どこかで監禁されていた百合亜(桜庭ななみ)…なぜ家に戻っても笑顔を見せないのか?なぜ母(板谷由夏)は娘に対してぎこちないのか?なぜ父(神保悟志)は娘を恐れているのか?なぜ妹(石川瑠華)は姉を快く迎えないのか?なぜ警察は百合亜に対して高圧的なのか?なぜ百合亜は幼馴染の渉くん(井上祐貴)にだけ反応したのか?
…その数々の“なぜ”を絶妙な塩梅、スピード感で提示しつつ、わからなくてイライラしない程度に答えを徐々に明かしつつ、だけど結局、何が何だかわからない…百合亜は13年間何をしていたの?誰といたの?なぜいま戻って来たの?本当に誘拐だったの?渉くんは一体何なの?監禁してた男(藤森慎吾)は一体何者なの?何を隠しているの百合亜―――!!!???って、放送後発狂してしまう程、あっという間の1時間。1シーン1シーン、一瞬たりとも見逃せません。
そして、板谷由夏さんが演じるからこそ醸す何か抱えてるに違いない母、神保悟志さんが演じるからこそ出るいい父なはずがない感じ(失礼)と、それぞれの役者さんならではの演技、造形が堪能できるのはもちろんなんですが、今回は何と言っても主演、桜庭ななみさんの造形ですよ。普段の桜庭さんは、どう見たって完成された美しさをまとっているはずなのに、百合亜の造形は、メイクや衣装だけでは表現できない、どっからどう見ても“完成されていない女性”、つまり“13年間監禁されていた少女”にしか見えないのです。
公式HPのこの顔!見てくださいよ。すごくないですか?あの完成された美しさはどこへいったの?ってくらい不気味、怖くないですか?この怖さ、オーラのおかげで、ドラマ全編を覆う緊張感が作り出され、冒頭のBGMでとどめを刺すのです。
また物語のテーマ的に、社会派の超重厚ヒューマンドラマになってもおかしくないのに、家族たちが奏でる不協和音や、あふれ出る生々しさは、まさに「オトナの土ドラ」にしか出せない質感。イギリスのBBCで制作されたドラマのリメイク版とはいえ、そこにはしっかり日本的なオリジナリティ、東海テレビ制作にしか出せない味がちゃんと出ているので、毎回こうして東海テレビドラマを堪能している視聴者にはその“らしさ”の発見に嬉しくもなります。とかいいつつ、元のドラマ知らないんですけどね。
そして、コロナの影響で奇しくも『犯罪症候群』→『ミラー・ツインズ』と3作連続で“誘拐”モチーフになってますが、そのいずれの作品とも全く違う面白さで、新作では前作という位置づけ『隕石家族』とももちろん全然、全く違った家族モノに仕上がってます。
よくよく考えたら『パパ恋』→『隕石家族』→『13』の順番で放送する予定だったんですもんね…。世界一読めない枠、それが「オトナの土ドラ」!
っというわけで、このドラマ、全4回というスピード感ですってよ!奥さん!!(誰)
もうこの第1話見たら最後。1ヵ月間『13』と共に夏を過ごすこと間違いなし、必見です!
で、いつになったら毎週土曜の夜、ぐっすり眠らせてくれるんでしょうね?
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)