『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』第5話完全版
五十嵐唯織(窪田正孝)たちラジエーションハウスの面々が長年共用していた冷蔵庫がついに壊れた。タイミングよく、甘春総合病院では、経営陣に新たな医療機器や備品の購入許可を求める備品選定委員会が開かれる予定だったため、田中福男(八嶋智人)や軒下吾郎(浜野謙太)らは、なんとしてでも新しい冷蔵庫をゲットしてくるよう、技師長の小野寺俊夫(遠藤憲一)にプレッシャーをかける。
あくる日、備品選定委員会に出席した小野寺は、10万円の冷蔵庫を購入したいと申請する。しかし院長の灰島将人(髙嶋政宏)は、業務に関係ないモノを申請したいならそれ相応の成果を出してからにしろ、と言って取り合わなかった。
そんな中、灰島から呼び出された小野寺は、人件費削減のため、技師の中から早期退職者を1名選ぶよう命じられる。しかし小野寺はそれを拒否し、他のことならどんなことでもやるから考え直してほしいと訴えた。すると灰島は、小野寺にある提案をする。それは、セレブをターゲットに、高いサービスを提供するプレミアム人間ドックの導入だった。
その話を受けた小野寺は、温泉付きの高級旅館を併設したプレミアム人間ドックを運営している「帝光クリニック」を見学するよう灰島から指示される。一泊二日で温泉付き高級旅館に行ける、と聞いて同行を希望するラジハの面々。
すると、甘春杏(本田翼)も見学に行きたいという。それを聞いて唯織も手を挙げた。希望者多数のためくじ引きを行った結果、帝光クリニックへ行くことになったのは、唯織、杏、広瀬裕乃(広瀬アリス)、田中、そして小野寺の5名。思いを寄せている杏が、唯織と温泉旅行に行くと聞いた整形外科医の辻村駿太郎(鈴木伸之)は、大きなショックを受け…。
帝光クリニックに到着した一行は、豪華な施設と、至れり尽くせりのサービスに圧倒される。最新の検査機器を導入している帝光クリニックでは、検査は眠っている間に終わり、撮影された画像は身体の部位ごとに分けられた専門の放射線科医にすぐさま転送されるという分業システムを採用していた。
が、裕乃とともに読影室を見学した杏は、加工されていない断面画像だけが大量に送られてくることに違和感を抱く。そのとき、新しい胸部CT画像が届いた。それを見た杏は、冠動脈の石灰化に気づく。
留守番組の黒羽たまき(山口紗弥加)は、軒下、威能圭(丸山智己)、悠木倫(矢野聖人)に小野寺からの指示を伝えていた。それは、カテーテルや紙コップなどの備品を、より値段が安いものに切り替えたり、節約したりする経費削減のための方策だった。
それを知った副院長の鏑木安富(浅野和之)は、ラジエーションハウスの経費削減はやり過ぎではないか、と灰島に進言した。しかし灰島は取り合わず、備品選定委員会で最新のエコーをオーダーした渚(和久井映見)のことを切り出す。
灰島は、渚がエコーをオーダーしたのは、503号室の患者のためではないか、と疑っていたのだ。その患者が渚の隠し子だという噂はデマだったようだが、鏑木は引き続き渚と患者の関係を調べることを灰島に約束させられていた。
その頃、唯織は小野寺、田中とともに露天風呂を訪れていた。すると、入浴中だった西園寺豊という男性が胸を押さえて苦しみだし、倒れるという事件が。唯織は、しばらく前に、この男性が胸を押さえて苦しそうにしているのを目撃し、声をかけていた。この件はすぐに読影室にも届く。名前を聞いた杏は、冠動脈が石灰化していたCT画像の人物であることに気づき、露天風呂へと駆けつけた。
杏は、西園寺の心臓マッサージを続けていた唯織に心筋梗塞の可能性が高いことを告げた。だが、帝光クリニックのスタッフは、ここでの処置は無理だから他の病院へ搬送すると言いだす。人間ドッグの客への対応が優先だというのだ。
それからしばらくして、西園寺が搬送された病院から杏が戻ってくる。西園寺は治療を終え、一命を取りとめたという。苦しんでいる患者を目の前にしながら何も出来なかったことにショックを受けた裕乃は、もし甘春総合病院でプレミアム人間ドックを始めた場合、今回のようなことが起こり得るのなら導入には賛成できない、と小野寺に告げる。病院は、治療を望む患者のためにあるはずだというのだ。
だが小野寺は、それだけじゃやっていけない、とそっけなく返す。唯織も裕乃と同じ意見だったが、ここ最近の小野寺の様子から、灰島に何か言われたのではないかと勘ぐっていた。事情を知る杏は、怒りが収まらないでいる裕乃に、小野寺のことを悪く思わないでほしい、と告げるが…。
ラジエーションハウスに戻ってからも、裕乃の怒りは収まらなかった。そこへやってきた小野寺は、エコー検査をCT検査に替えると言いだす。CT検査のほうが高額、という理由からだった。それを聞いて、裕乃だけでなく、ラジハメンバーも不満を口にした。
ところがそこで、思わぬ事態が起きる。CT装置にX線を発生させるX線管球が切れかかっていたのだ。しかも、このCTは、購入5年目までは故障のリスクが少ないという理由から、安い保証契約に入っていたためX線管球の無料交換はできず、交換には2500万円もの大金が必要になるという。
それを知った小野寺は、新しい契約に切り替わる明日まで管球を持たせろ、と指示する。そんな小野寺に、怒りをぶつける裕乃やたまきたち。すると唯織が口を開いた。患者の体型や必要最低限の撮影範囲を見極めれば、今日1日、X線管球を持たせることができるのではないか、というのだ。
話を聞いていた杏も唯織に同意し、大量の画像が送られてくるシステムの帝光クリニックとは違い、いつも病変が見やすい断面や加工が加えられた画像を送ってくれるラジハメンバーなら可能ではないかと訴えた。その言葉に感じ入り、準備に取り掛かる技師たち。鏑木も、いつもより画像が荒くなることを考慮し、灰島に内緒で、杏の読影を手伝うことにする。
その矢先、緊急の腹部CT検査のオーダーが入った。急性胆嚢炎の疑いがあるという。唯織は、もし胆嚢が壊死していた場合、一刻も早いオペが必要であることから、胆石の検出感度が高いエコー検査の方が良いと提案する。それには、小野寺の技術が必要だった。小野寺は、平面にしか映らない臓器を立体的に映し出すことが出来る、熟練の技を持つ数少ない技師の1人なのだ。
小野寺の検査により、患者の胆嚢は胆石が詰まって一部が壊死していることがわかった。小野寺の検査を見守っていた消化器外科医の品川(登坂淳一)は、ただちにオペの指示を出し…。
ラジエーションハウスの面々は、X線管球を最後まで持たせ、無事その日を乗り切った。そこにやってきた灰島は、急患のCT検査をエコー検査に替えたことや、独断で人間ドッグの導入を断ったことを知って小野寺を責めた。
そこでようやく、小野寺がラジハメンバーを守ろうとしていたことを知る一同。小野寺は、検査するだけでなく、患者に合わせて正確な画像を作りだすラジエーションハウスの意義を訴え、用意していた退職願を灰島に差し出した。
それを受け取って去ろうとする灰島に、ラジハメンバーは経費削減に努めることを約束する。だが灰島は、それでも技師1人を雇う資金を捻出できるとは思わない、と言って受け付けない。そこに現れた鏑木は、急性胆嚢炎の患者が無事治療を終えたことを皆に伝えると、本来なら2億円はするCTで撮った画像がなければ手術適応だと判断できなかった、と続けた。
つまり、小野寺の腕には2億円に価する価値があるというのだ。「そんな人材を失えば、当院は莫大な損失を被ることになるでしょうね」。鏑木の言葉に何も言い返せなかった灰島は、受け取った退職願を乱暴に捨てて去っていく。
あくる日、裕乃たちが出勤すると、壊れていた冷蔵庫が直っていた。CTのX線管球を交換しにきたメーカーの元村(上島竜兵)が、事情を知って冷蔵庫も修理してくれたのだ。自費で冷蔵庫を買おうとして競馬に5万円もつぎ込んでいた小野寺は、ハズレ馬券を捨てると、「やっぱり金じゃねえよな」とつぶやいた。するとそこに、息子からのメッセージが届く。だがそれは、生活費の振り込みを催促する内容で…。