テレビドラマや映画といった映像作品の中で、時に主人公を支え、時に物語に彩りを与えるのがバイプレイヤーだ。彼らの存在はキャストを輝かせ、物語のスパイスとなり、見るものをより楽しませる。
そんなバイプレイヤーへのインタビュー企画「支人【ささえびと】~人を輝かせる達人」。
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今回は、現在放送中の月9ドラマ『ラジエーションハウスⅡ〜放射線科の診断レポート〜』(毎週月曜21時~)で、甘春総合病院の放射線科「ラジエーションハウス」の一員・軒下吾郎を演じている浜野謙太をフィーチャー。ラジハの続編が決まった時の思い、そして今作で共演している“ささえびと”の先輩・八嶋智人から受けたアドバイス、今後の野望などを聞いた。
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皆さんが“ラジハ”を大事にしていることが感じられて、すごくうれしかった
──すでに1話、2話と放送されていますが、改めて、続編の話を聞いた時の感想をお聞かせください。
“ささえびと”としてはあるあるなのですが、ご一緒した共演者の皆さんが、その後、ものすごい勢いでスターダムを駆け上がっていくということを経験していまして。ラジハで言うと、前作のあとに窪田くんは朝ドラ(NHK朝の連続テレビ小説『エール』)に出ていたし、本田翼さんも広瀬アリスちゃんもいろいろな作品に出て大活躍されていて。
だから、続編が決まったときは「本当に僕が一緒にドラマに出ていいの?」と、ちょっと心配になりました(笑)。
でも、今作の現場に入ってみたら、窪田くんをはじめ皆さんの温かさや変わらないグルーヴを感じられて、すごく気持ちが温かくなったし、「やっぱり仲間だな」と思えたんですよね。
現場では、僕が演じる軒下のイジり方を含めて「ラジハといえばこうだよね!」みたいな話をすることも多くて、皆さんがラジハを大事にしていることが感じられて、すごくうれしかったです。
──そんな皆さんとの撮影で、何か前作との変化は感じていますか?
僕自身の芝居も変わっているのでなんとも言えないですが、みんながそれぞれに変化している中で現場に入って、チューニングを合わせていく作業が「さすがだな!」と思いました。
本田さんやアリスちゃんなんて、ちょっとヤンチャな雰囲気だったのが、なんか色っぽさみたいなものが出てきてて…って、こんなことを言っている僕は、何様だ?って感じですかね(笑)。
でも、例えば軒下とアリスちゃん演じる広瀬裕乃のやり取りも、前作では勢いでやっていたような感じだったものが、濃厚に演じられるような脚本になっていて、すごく充実した時間を過ごせるようになったんです。まぁ、アリスちゃんはカメラが回っていないところでバカ話ばかりしているのですが、そこはまったく変わっていませんでしたね。
軒下は“クズ”。でも、それがちょっとでも可愛らしく見えたら
──軒下のキャラクターについては、前作と比べて変化はありますか?
八嶋智人さん演じる田中福男が新たにラジエーションハウスのメンバーになり、関係性が変わった部分もあるんですけど、軒下は相変わらず楽しい人だなと。同時に、一筋縄ではいかないキャラでもあるなと感じています。
ラジエーションハウスのメンバーは本当にみんなステキなのに、軒下は言葉を選ばずに言うと「クズ」みたいなヤツ。でも、そんな軒下がちょっとでも可愛らしく見えたら、きっと視聴者の皆さんも救われるんじゃないかなと思うんです。だからといって、可愛らしさを狙って演じるのではなくて、「クズ」なところを周りのみんなに拾い上げてもらって、そこに軒下の味わい深さが出るといいのかなと思っています。
──軒下は決して「クズ」なのではなくて、周りがスゴすぎるというか…一番一般人の感覚に近いキャラクターですよね。
ずっとマッチングアプリを見ていたりしますしね(笑)。あれだけカッコいい人たちの中にいたら、そりゃ卑屈になるよな〜とも思いますし。実は視聴者から一番共感してもらいやすいキャラクターなのかも、と思って演じています。
八嶋智人の“ささえ力”に感激「すごい人ですよ」
──ラジエーションハウスの新メンバー・田中福男を演じる八嶋智人さんは、作品の中でも現場でも、立ち位置が共通しているかと思いますが、ご一緒してみての感想は?
八嶋さんは“ささえびと”としての大先輩ですが、その支え方がすごいなと感じ入るばかりです。自分のキャラクターを殺して相手を支えるのではなくて、相手を支えることを通して自分のセリフの意味を立たせているというか。八嶋さんと共演して、改めて自分の“ささえ力”はまだまだだなと感じています。相手を支えることで自分を際立たせる…すごい人ですよ。
──その極意はどういったところにあるのでしょうか?
たぶんですけど、全員のセリフをちゃんと自分の中に飲み込んで、しっかり噛み砕いた上で支えているんだと思います。
これまで僕は、台本の自分のセリフのところに蛍光ペンで印を付けていたんです。“覚えるところ”という意味で。でも、そうすると自分のセリフだけがものすごく大切なものになってしまいがちなんだよって。ドラマの現場はみんなで一つの作品を作るんだから、それは違うのではないか、と八嶋さんと話している中でアドバイスをいただきました。
実は八嶋さんも、昔先輩から「そういうところに線を引く人なんだ?」と言われたことがあったそうなんですね。「自分のところだけ印を付ける」って、ちょっと軒下っぽいなとも思ったのですが、脇役なのに自分のことばっかり考えている“軒下らしさ”は大事にしつつ、今回から台本に線を引くのはやめようと。その代わりに、台本を読む回数を増やしてみました(笑)。
──劇中では、田中と軒下は容姿が似ていることで常にゴタゴタしていますが、そんな2人のやり取りにも注目ですね。
田中と軒下は、最初はぶつかっていがみ合ってという関係性なんですけど、それがだんだん変化して、時にいちゃつくような感じになっていきます。その変化を楽しんでいただきたいですね。
野望は「あいつだけ、いつも飄々としてるな!」と思われる存在であり続けること
──では、浜野さんご自身の今後の野望を聞かせてください。
それが最近すごく怖い夢ばかり見るので、悩んでいるんです。この間は、自分がいる家が倒壊する夢を見たのですが、それって、今までの人間関係が崩れたり挫折する暗示らしいんです(笑)。その後で新たな人間関係を築くことはできるんだけど、まずは一回崩れるんですって。
ほかに、長男と一緒に誘拐されて逃げ出す夢も見たんですけど、これは現状の自分から逃げたいと感じていることの暗示だそうで。だから、あまり物騒じゃない形で(笑)、新しい自分に生まれ変われたらいいなとは思っています。
現実問題、40代になると制約がいろいろ増えていくと思うんですけど、音楽もお芝居も、可能なら楽しいことだけしていきたいです。周りから「あいつだけ、いつも飄々としてるな!」と思ってもらえる存在であり続けることが、野望かもしれないですね。