視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。

10月13日(火)放送回では、新宿ゴールデン街にあるバー「シーホース」店主・マチルダ(小黒奈央)に密着。コロナ禍で厳しい状況の中、本格的な家庭料理、ハーブやスパイスを使ったお酒を求め、女性ファンも多く訪れるシーホース。マチルダの丁寧な接客は、同じゴールデン街で働くベテランママからも好評を得ている。

古き良き新宿ゴールデン街で女性たちをも虜にする、彼女のセブンルールとは。

ルール①:お通しにはスープを出す

300もの酒場が軒を連ね、「飲兵衛の聖地」とも言われる新宿ゴールデン街。かつて、寺山修司ら文豪や、松田優作など俳優たちも愛した街として知られるこの地の一角で、彼女は2年前からバーを経営している。

18時の開店前、この日、彼女は新しく出すお酒を試飲していた。インフュージョンと呼ばれる、果実やハーブを漬け込んだ自家製酒を数多く提供しており、そこには「私はちゃんとしたバーテンダーさんじゃないので、カクテルとかは作れない。でも、こういうものなら割と簡単に(他の店との)差別化はできるから」と、こだわりが。

さらに、お通しでもハーブやスパイスを使った創作料理を提供。「お腹が空いている状態でお酒を飲むのも良くないし、汁物だけでも入れて、胃を温めてから、(お酒を)飲んだほうがいいかなって」という思いから、日替わりで総菜3品に温かいスープがついてくる。

また、「お酒を飲むのって、ちょっと罪悪感があるじゃないですか。だから、お通しに野菜をいっぱい入れている」といい、お通しには、心おきなくお酒を楽しんでほしいという、彼女から客に向けられた優しさが詰まっている。

ルール②:看板は控えめに

9月上旬、コロナ禍による営業自粛を経て、時間を短縮しての通常営業を再開。常連客が続々とやってきた。

もともと一見の客は多くないというシーホース。それもそのはず。彼女の店には看板がない。唯一あるのは、店名すら書かれていないタツノオトシゴの突き出し看板だけ。彼女は、「控え目めのほうがかっこいいかなって」と笑う。

ただ、決して一見さんお断りをしているわけではなく、悪酔いして空気を乱す人はお断りだといい、「常連になっていただいた方に、できるだけ安心して落ち着いて過ごせる場所を作りたいので、あえて入りづらい入口にしています」と、明かした。

ルール③:朝は8時に起きる

東京・調布に生まれた彼女。大学を辞め、目指したのは演劇やダンスパフォーマンスなど表舞台への道。しかし、少しずつ実力の限界を感じ始める。

「『これはもしかしたら私、できないんじゃないか』って認めちゃうときついじゃないですか。いきなりよすがをなくすのが」と、当時、限界を認めることに恐怖を感じていたという。しかし、「もう目を背けられなくなった」。

その時すでに、新宿ゴールデン街で働いていたマチルダ。彼女にとって、この街で過ごす日々が、パフォーマーとしての道を諦めた喪失感を埋めてくれたのだ。

その後、老舗の有名店でのバイトや、雇われ店長の経験を経て、34歳で自分の店を持つまでになった。

以前は深夜2時まで店を開けていたが、現在はコロナ禍での時短営業のため、午後11時ころには店を出る。遅い時間であることに変わりはないが、翌朝、スタッフが自宅を訪ねると、すでに起床し、朝昼兼用の食事を摂ろうとしていた。

聞けば、「絶対、8時前後くらいには起きてますね」と彼女。「お客さんと同じリズムで生活をしていたほうが、テンションが合ってしゃべれて、(お客さんが)リラックスできるかなと思って」と、語る。

1日を終えるお客さんに、始まりのテンションで向き合わない。それが、店に心地よい空気を生み出している。

ルール④:最低週1でキックボクシングジムに行く

開店前、両肩に荷物を抱えた彼女が向かったのは、4年通っているというキックボクシングジム。このジムで、週に一度は自分を追い込んでいるという。

キックボクシングを始めたのは、まだ演劇やパフォーマーとして活動していた頃。「もともと1人で舞台に立つことが得意じゃなくて。リングの上では1人なので、キックができたらちょっとは変われるかなと思った」と、自身の苦手克服のためだった。

アマチュアの試合にも出場した経験がある彼女。「自己肯定感を得るためにやってる」と、今でも続けている理由を明かした。

ルール⑤:木曜日は母からお菓子作りを学ぶ

店が休みの木曜日、彼女には必ず会いに行く人がいる。実家の母・きみえさんだ。

マチルダは、パン・お菓子の研究家であるきみえさんから、毎週お菓子作りを学んでいるという。

「教えられる日が来るなんて思わなかった」と語る母。マチルダがコロナ禍で店を続けることが厳しく「休もうかな」と弱音を吐いた時、母が声をかけたことがお菓子作りを始めたきっかけだったそう。

休業や時短営業を余儀なくされ、シーホースの売り上げは通常の半分以下まで落ち込んだ。「お酒とかも日持ちしないものがあるので、結構余っちゃって、泣きそうになりましたね」と振り返る。

それでも「店はどうしても残したいので、いろんなことをやってみる」と強い意志を見せる彼女は、今後、母が作ったお菓子の通信販売を経営面でサポートしていく予定。この、母とのお菓子作りの時間が彼女の心の拠り所になっている。

ルール⑥:お客さんの名前・職業・住所は聞かない

通常なら、週末への解放感から人が多くなる、新宿の金曜日の夜。しかし、シーホースの店内はお客さんが少なく、いつもより静かだ。

彼女は、どんなに暇であったとしても、呼び込みや客に直接連絡をして来店を勧めることはしない。「お願いして飲みに来てもらうお酒が、そんなに美味しいとは思わない」といい、好きな時に、好きな場所で、美味しいお酒を飲んでほしいという思いがあるから。

そして、接客の際に特に大事にしているルールがあるという。

常連客も多く、いつでも親しく話す彼女。この日店を訪れていた10年以上常連の男性客が、番組スタッフに対し「写真好きの人が読む専門誌を作ってます」と語ると、マチルダは「仕事知ったの初めて!」と驚きの表情を見せる。

「名前、職業、住んでいる場所は、ご自分で言いたい方じゃなければ、私は触れないようにしています」。そこには、「飲みに来ている時って、普段の自分から離れて楽しんでもらいたい」という彼女なりの心遣いがあった。

ルール⑦:ずっとゴールデン街のお客さんでいる

ある日、店を閉めた彼女が向かったのは、ゴールデン街にある友人の店。15年以上前からゴールデン街に通い、自分の店を持ってからも、この街で飲み続けている。

「もともと好きだから(ゴールデン街に)通っていて、好きだから働かせてもらって、お客さんとして“好きだな”って気持ちを思い出しに来るのかな」という思いから、友人の店に来たのだ。

300店近くお店があるゴールデン街に「正解はない」と語る彼女。その上で、「私が好きだと思っているゴールデン街の中に、私が行きたいお店を作りたい」といい、「他愛もない話をして、みんなで楽しく笑って、帰り道で“別に何も内容なかったな”と思ってくれるようなお店かな」と、理想とするお店を笑顔で明かした。

かつてパフォーマーの道から居場所を見失った自分を受け止めてくれたゴールデン街。今は自分のもとに、さまざまな思いを抱えた人たちがやってくる。

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次回、10月20日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、日本モンキーセンター飼育員・田中ちぐさに密着。世界屈指の霊長類専門動物園でサルたちと向き合う飼育員である、彼女の7つのルールとは。