毎回さまざまなジャンルで活躍するゲストが集い、多彩な話題や事象を取り上げていくフジテレビのトーク番組『ボクらの時代』。
8月15日(日)は、30年来の付き合いがある稲川淳二、テリー伊藤、笑福亭鶴光が登場。
テリーが手掛けたバラエティ番組の思い出話や、タレント業を控え「怪談家」、「落語家」として邁進することに決めたきっかけ、現代社会の「人を批判する」風潮などについて語り合った。
テリー伊藤「稲川さんは僕らの想像を超えていた」
テリーがディレクターを務めたバラエティ番組に多く起用され、体を張っていた稲川と鶴光。テリーは「稲川さんは、常に期待に応えてましたね」と当時を振り返った。
稲川:プッ(笑)!
テリー:いや、これがすごいと。実はね、僕なんかが(企画を)考えるわけじゃないですか。で、これが本当に面白いかどうかというのは、実はやってみないとわからないことってあるんですよ。
鶴光:うんうんうん。
テリー:で、稲川さんがやると、「あ、こういうふうに面白くしてくれるんだ」っていう。僕らの想像を超えてましたね。
鶴光:この方(稲川)はね、自分でね、面白くしようって気持ちは全然ないのよ。一生懸命、必死にやってるのよ。
テリー:ああー。
鶴光:だから共感を得るのよ。つまり、ギャグでやってない。もう、マジなのよ。
テリー:なるほど!
稲川:やる以上はさ、やる以上はやっぱ、負けちゃいけない。
テリーは「稲川さんのリアクションはとびきりでした」「番組のスタジオとロケのスケジュールを稲川さんに合わせていた」と、稲川が当時の番組に欠かせない存在であったことを明かした。
「本職は本職にならないかん」高座で感じた危機感
テリーは、バラエティ番組を制作していた当時を「24時間ずっと面白いことばっかり考えていた」と言い、「あの中で頑張ってやろうとか、ここで勝負してやろう」という演者のパワーを感じていたという。これに鶴光は「あの当時は売れたい、それしかなかった」と言うが…。
鶴光:仕事なんて選んでられへんねん。
稲川:そうですよね。
鶴光:ヘビに噛まれようが、何をしようが。
稲川:ウケたほうが勝ちだもんね。
鶴光:とりあえず上を目指してって。
テリー:そうなんですよね。
鶴光:あるとき、ふっとね。僕、40(歳)で気づきましたね。「あ、これは間違ってるな」と。「僕の本職は一体何なんだ?落語家やろ。落語を忘れたらアカン」って思ったのが、僕40ですわ。
稲川:だいたい鶴光ちゃん、あなただって若いときからもうテレビに出て、(そのころ)一番売れたじゃないですか。
鶴光:いやだからそのとき、「落語が下手になっている」っていうことに気がついてん。(高座に)客は集まるのよ。で、落語やる前は、ウケんねん。話に入ったらだんだん…つまり、『オールナイトニッポン』の鶴光を見に来てんねんと。アホなことやっている鶴光(を見に来ている)。「おまえの落語なんか聞いたって、なんの意味があるねん」っていう感じやった。それで僕は、これはアカンと思ったんや。やっぱり本職は本職にならないかん。
テリーが「収入的にはどうなるんですか?」と尋ねると、「ガタッと落ちます」と鶴光。しかし、「落ちるけど、好きな仕事をするのは貧乏が覚悟やから。好きな仕事させてもろてるわけやから。だから、僕は今、落語が本職やけども、ラジオはアルバイト(笑)」と、笑いを交えて落語にかける思いを語った。
いつも下ネタやってる人間がコメンテーターはできない
落語家として高座に上がる一方、ラジオパーソナリティとしても長きに渡り活躍している鶴光を、テリーは「ラジオの鶴光ちゃんはすごいカッコイイ。圧倒的ですよ」と絶賛。続けて「鶴光ちゃんのすごいのは、コメンテーターに絶対呼ばれないところ」とも。
鶴光:私はね、なんでコメンテーターやらない言うたらね、「僕がしゃべったことくらいは、世間の人はみんな知っているやろ」と。テレビ見ている人、ラジオ聞いている人、俺よりもっと賢い人がいっぱいおるはずやと。いつも下ネタやっている人間が、そこで真面目なことを言うたら「こいつは一体、あのエロがほんまなんか、それともこっちがほんま?」って見透かされてまうでしょ。それやったら、得意なことをやったほうがええでしょ。
稲川:うん。
鶴光:テレビの規制が今、結構あるでしょ?
テリー:うん。
鶴光:言葉狩りもあるし、それからいろいろ、こんなこと言っちゃいけない(というのがある)…。
稲川:そうだよねぇ。うん、ありますよ。
鶴光:結構うるさいでしょ?。ほんだら、一体、今のテレビはどないしたらええねん!
テリー:テレビも、本当にちょっと歪んできちゃってるから。今、日本人が「人を批判する天才」になってきちゃっている。これが、僕的にはものすごくつまらなくて。ネットなんかでも、すごくよく…人を批判したり追い込んでいくってあるでしょう?もう僕、見ないんですよ。なんかもう、イヤになってくるでしょう?それ以上に、面白いことが好きなので。
鶴光:あのね、僕はなんでいつも下ネタやるかって、人を批判するとあまり周りも愉快にはならんのよ。人を批判することによって、言われてる本人も嫌やし、言うてる本人も「俺はなんと器の小さな人間なんだ」と。もっと慈悲とか愛の心持てんのか!っていうふうになるやんか。それがええことであって。だから俺は「下ネタは世の中に害を与えない」というね。
鶴光の言葉に、2人は「大事です、大事です」(テリー)、「それは、絶対ありますよ」(稲川)と共感していた。
「理解してくれる人がこんなにいる」怪談ツアーを10年やって決めた覚悟
鶴光と同じようにテレビの第一線から退き、55歳から「怪談家」として活動を始めた稲川に、テリーは「なぜ?」と問いかけた。
稲川:(怪談の)ツアーをやっていて、今年29年になるんだけど。10年経ったときにね、すごくファンが良いんですよね。要するに「自分が話をしている、そのことを理解してくれる人がこんなにいる」。そう思ったら…例えば60過ぎて、「ああ、もう体力もないし気力もなくなったな。じゃあ、(テレビの仕事を減らして)多少、怪談頑張ろうか」じゃ、ちょっと失礼かなと思ったんで。
テリー:なるほど。
稲川:まだ55ならね、体力残ってるじゃないですか。「じゃあ、今からやろうかな」と。犠牲にするものがないんで、楽してちゃいけないんで、やっぱり多少、犠牲を払ってやらないと失礼かなと思った。
鶴光:タレントというものの魅力ってありまんがな。道歩いてて、(居合わせた人に気づかれて)「ああ!」とかね。それをなくしてしもて、本来の自分の姿って、あとに残るのは芸だけやからね。
稲川:そうよね。
鶴光:それを、55で気がついた稲川さんが偉いんですよ。
稲川:いや、とんでもない。
鶴光とテリーは「昔は、55歳で定年を迎えていた」と、その年齢から「怪談家」の道を歩み続ける稲川を称えた。
「団塊世代は死ぬ日まで面白くいるべき」(テリー)
また、70歳を越えた3人はこれからの人生についても語り合った。
テリー:もう、僕ら高齢者じゃないですか。不安とかってあります?これからの人生、何か。
稲川:あるっちゃあるんだろうけど…。
鶴光:いや、稲川さんないと思う。これもう、80になっても90になってもできる芸やもん。
稲川:いや、そうじゃなくてさ。
鶴光:いやいや、足腰達者で。口さえ達者だったら。
テリー:何かあります?稲川さん。
稲川:いや、差し当たってはないですがね。
テリー:ない?
稲川:そんなにはないけど。(テリーに)老後、考えてます?
テリー:僕はね、「北朝鮮からキャバクラまで」っていうのが、一応コンセプトなんですよ。
鶴光:(笑)。北朝鮮からキャバクラまで。
テリー:北朝鮮にも興味あるけども、キャバクラの女の子も興味あるんですよ。だから、こういう守備範囲の中でいるから、その中で「面白いな」と思えたことをいろいろ発信していきたいなと。本当は僕はね、稲川さんが今でもやっぱり、ワニに巻きつかれてほしいんですよ。
鶴光:わはははは!
稲川:それはもう、ちょっと年が年だから。
テリー:いやでも、それって僕は違うと思うんですよ。というのは、「70過ぎて、まだお前は戦ってんのか」というほうが、たぶん団塊の世代の人たちに勇気を与えますよ。
鶴光:YouTubeチャンネルでやったらええんちゃうの、そういうのは。
テリー:だから、YouTubeでも何でも。
鶴光:今テレビでは、それやらせてくれないでしょ。
テリー:YouTubeでも何でもいいから、やってくださいよ、稲川さん!
稲川:バカなこと言うんじゃないよ!だけど、それは体力ですよ。それは無理だ、やっぱりね。
テリー:いけますよ。団塊の世代の人たちが、僕はずっと面白くいるべきだと思っているんですよ。死ぬ日まで。
稲川:できりゃね。
鶴光:確かに僕もね、「現役」は必要やと思うんですよ。要は「レジェンド」とか言われるやんか。あんなことは好きやないのよ。「現役」なのよ。
鶴光は、91歳で高座に上がっている噺家の先輩(三遊亭金馬)の姿を見て、社会に必要とされている実感が、お金ではなく心の豊かさにつながっていると説き「我々ね、これから老後いうけど、この3人は安泰ですよ。要は、口と脳さえしっかりしてりゃ」と、笑い合った。
最後には、テリーから「この2人(稲川と鶴光)は友達じゃない」とツッコミが。「もう少し、同窓会みたいな感じでアットホームな雰囲気になるかと思った」が、お互いの話を聞かずに自分の話をしていく様子を「カラオケ行ったら、2人でマイクを取り合い『俺がしゃべる』『俺が歌う』って感じ」と評していた。