2.5次元界を牽引する俳優・佐藤流司がアーティスト・Ryujiとして、PENICILLINのHAKUEIと結成したユニット、The Brow Beatが約3年間のインディーズ活動を経て、ついにメジャーデビューをはたす。
人気アニメのオープニング主題歌にも起用されているデビューシングル「ハレヴタイ」は、作詞をRyuji&HAKUEIが担当。作曲をHAKUEIが手がけ、疾走感あふれる爽快なナンバーとなっている。
それぞれの分野で独自の輝きを放つ2人が曲に込めた思い、そして、これからのミュージックシーンにおいて、どのような野望を抱いているのか赤裸々に語ってもらった。
「バンドがやりたい」Ryujiの思いにHAKUEIが応え、年齢差24歳のツインボーカルが誕生
――Ryujiさんが出演し、HAKUEIさんが音楽を手がけた舞台がお二人の出会いの場だったそうですが、ユニット結成のきっかけは何だったんですか?
Ryuji:一緒に食事をしているとき、俺がHAKUEIさんに「バンドがやりたいです」と伝えたことが始まりですね。
HAKUEI:Ryujiくんがもともとロック好きだということを知っていて、話してみたら、普段聴いている音楽の趣味がとてもいいんですよ。(一緒に)やるとしたら、これは本格的なロックバンドになるだろうなと。
今はツインボーカルでやっていますが、あくまでも僕はプロデューサー的立場。Ryujiくんがボーカルのバンドをつくるものだと思い込んでいたんです。
Ryuji:1stアルバムの制作中、俺はHAKUEIさんと2人で歌うものだと思ってレコーディングを進めていたので、4曲ぐらいレコーディングしたあたりで、「ところでHAKUEIさんってどの曲をいつごろ、レコーディングするんですか?」と尋ねたら、HAKUEIさんが「えっ!?」となって、俺も「えっ!?」って。そんな勘違いからスタートしました。
――ついにメジャーデビューですが、どんな思いで歌詞を書いたのですか?
Ryuji:普段、ネガティブな歌詞ばかり書いているので、今回のように仲間、勇気、希望というワードを盛り込むのはかなり頭を悩ませました。でも、昔から知っているアニメの主題歌だったので、作品にちなんだワードを入れるなど、“いい縛り”があって楽しかったです。
――曲のほうはいかがですか?
HAKUEI:僕は子どものころからアニソンが好きで、特に、その作品のために書き下ろされた曲が好きなんです。自分自身が『マジンガーZ』や『ドラゴンボール』にワクワクした世代なので、いつかは僕もそんな曲がつくってみたいと。
そして今回、この「ハレヴタイ」で念願が叶ったので、この曲を聴いた子どもたちに、オープニングからおもいっきりテンションを上げてほしいと思って、曲を書きました。
――メジャーデビューは、やはり特別なものですか?
Ryuji:インディーズのときからやりたいことができていましたし、楽しかったし、心持ち自体はそんなに変わらないんですけど、皆さんの目に触れる機会が増えていくという意味ではありがたいなと思います。
HAKUEI:正直、今はインディーズでもしっかりと流通しているので、垣根みたいなものが曖昧になっていると思うんですね。だから、僕もRyujiくんと一緒で、Ryujiくんが好きな音楽を僕がプロデュースして一緒に楽しむというスタイルは変わらない。
Ryujiくんがよく「ロックシーンを昔に戻したい」という発言をするんですけど、その言葉が僕もすごく胸に響いたんです。
インディーズで好き勝手やるのもいいけれど、メジャーなレコード会社と組んで世の中に広めていくのもロックバンドとして夢のあること。それを表現できたんじゃないかな。
――「ロックシーンを昔に戻したい」について詳しく聞かせてください。
Ryuji:例えば、ファッション業界も輪廻するじゃないですか。最近だとスマートフォンの裏にステッカーを貼るのが流行っていて、また携帯電話にストラップをジャラジャラ付ける日が来るんじゃないかと。
要は“輪廻”したいという話です。かつてのトガっていた時代の音楽に戻したいなって。本人たちの意図はわからないですが、今の曲は短すぎるというか、聴きやすくて「TikTokで使ってください」みたいな曲が多い。もちろんそうじゃない曲もありますが、そうじゃないよなっていう思いが俺の中にあって。俺としては、今日明日にでも人生を辞めてしまいたいという人を救済できるような曲が書きたいんです。
HAKUEI:もし、僕がそんなふうに感じていたとしても、僕からそれを先頭に立って言っちゃいけないと思うんですね。PENICILLINは結成が1992年で、そこから生き抜いてきた僕が言うと、「昔はよかった」と回顧主義みたいに受け取られてしまう。
僕らの世代はそういうことをなかなか言えないんだけど、それをRyujiくんの世代が言ってくれるのはすごくありがたいというか、「よくぞ言ってくれた」という感じです。
ピンクに染めた髪で日本武道館のステージに立つとファンと約束している
――ボーカリストとしてのRyujiさんの魅力はどんなところだと思いますか?
HAKUEI:Ryujiくんはもともと俳優としてメディアに出ていた人ですが、「俳優がちょっと音楽やってみました」というレベルではないんですよ。そういう人たちをディスっているわけではないんですが…、まぁ、ディスってもいいか(笑)。そういう人たちとは違うと思ってください。僕は彼を素晴らしいボーカリストだと思って一緒にステージに立っているし、プロデュースしています。
――逆に、プロデューサーとしてのHAKUEIさんの魅力は?
Ryuji:ライブの構成からグッズのデザイン、何から何までHAKUEIさんが隅々までつめてくださって、毎回素晴らしいものを提示してくださるので、大船に乗った気持ちです。
――お二人の声の相性はどのように感じていますか?
HAKUEI:面白いですね。
Ryuji:ケミストリーの逆みたいな(笑)。
HAKUEI:声質の違うツインボーカルの両方が、しっかりメロディまで歌うのはあまり見かけないですよね。どこかの遠い国にはいるのかもしれないけど、僕の知っている限りは存在しない。僕からしてみたら、予期せぬところで宝くじに当たっちゃったみたいな感覚で、「これは!」と思いました。
――デビューシングルのタイトルにちなんで、それぞれ「晴れ舞台」だと感じたステージや出来事について聞かせてください。
HAKUEI:まだインディーズのころだったんですけど、PENICILLINで初めてやったホールライブの渋谷公会堂。そこのインパクトが一番でしたね。その後、日本武道館にも立ちましたけど、あの渋公は今思い出してもゾワーッとくる。
Ryuji:へぇ~。
HAKUEI:それまでの最高はキャパ300人で、「ワァ~ッ!」で止まっていた歓声が、2000人になると「ワーーーーーーーッ!」って止まらないのよ。
Ryuji:俺は中学1年生の時に3位をとった英語弁論大会が晴れ舞台でした。参加者は10人ぐらいしかいなかったけど、ECCジュニアをやっていてよかったなと(笑)。
――今後の野望を聞かせてください。
Ryuji:今後も好きにやらせてもらえたら満足なんですけど、やはりロックバンドなので武道館のステージには立ちたいです。
HAKUEI:プロデューサー的な立場から言わせていただくと、インディーズで3年間培ってきたものをきちんと表現したい。新しいステージへ行くことで楽曲の幅も実際に広がってきていますし、今回のシングルで僕たちを初めて知ったという方たちには、この曲だけで僕たちを判断してほしくない。もっとエグイ曲やRyujiくんが書く凄まじい歌詞の世界観、インディーズのころよりもエッジの利いたThe Brow Beatに注目してほしいです。
Ryuji:さっきの発言と矛盾するようですけど、TikTokでも使われたいですね(笑)。俺、お客様と約束してるんですよ。武道館とか大きなステージに立つときには髪をピンクにしますからって。早くピンクの髪にしたいです。
撮影:河井彩美