1月29日(金)、お笑いコンビ・天竺鼠が単独ライブ「高級ジャンピングボレーライブ」を“無観客・無配信”で開催。新ネタ11本と、“今1番忙しい後輩”をゲストに迎えたコーナーを披露した。

当初は観客を入れて同日開催予定だったが、緊急事態宣言を受けて一度は中止に。しかし、「ライブはしたいが、配信はしたくない」という天竺鼠本人たちの意向で、“無観客”そして“無配信”という異例の試みへ。スタッフと取材陣のみが見守るなか、“(観客は)誰も見ていない”ライブを開催した。

そのため、本来は配信でまかなえるはずの資金を、クラウドファンディングで募集。すると、開始2時間で目標金額45万円を達成。ライブ当日を迎えてもなお、支援額は増加し続けている。(2月7日まで実施中)

開催までの経緯や、クラウドファンディングの個性的な「リターン」について語ったインタビューはこちら!

今回、フジテレビュー!!ではそんな異例の取り組み、“無観客・無配信”単独ライブの模様をリポートする。

本番前、リハーサルは時間にとらわれず、“本人たちの納得がいくまで”入念に行われ、当初の予定より40分ほど遅れて公演がスタート。“誰も見ていない”にもかかわらず強いこだわりを見せていたが、むしろ“誰も見ていない”からこそ、とことんこだわることができたと言えるのかもしれない。

場内が暗転すると、前方スクリーンに「オープニングVTRまで…」という文言とともに数字が大きく映し出される。しかしここで順調にカウントダウンとならないのが天竺鼠。数字は上がったり下がったりを繰り返し、結局オープニングVTRが流れるまで、体感で数分ほどの時間を要した。

VTRを終えると、ようやく暗転。明るく照らされたステージには、オフィス風に2つ並んだデスクと、パソコンをカタカタと操作するサラリーマン役の瀬下豊の姿が。そこへ、別部署から異動してきたサラリーマン・川原克己が登場。サラサラのおかっぱ頭というだけで、インパクトは十分だ。

川原は「名前は、当て字なんですけど『未来』と書いて『したごしらえ』といいます」と自己紹介をはじめ、その後もひたすらに小さなボケを連発。しばらくの間無視を決め込んでいた瀬下だが、最終的には変人・川原を隣のデスクから移動させるよう上司に願い出ると、「ここまでしてもダメですか!?」と、自らの鼻の穴へ、わさびとからしのチューブをつっこみ、同時に絞り出すという体を張ったお家芸を披露。

もはやどちらがボケでどちらがツッコミなのかわからないような状態となり、川原が「こんな会社辞めてやりますよ!」とその場をあとにして、この日1本目のネタが終了した。

その後も、「大縄飛びをするために、縄を回してくれる人を待つ」コントや、「飲み会翌日の友人同士」のコント、「プロレスのマイクパフォーマンス」コントなど、個性豊かなネタを次々と披露。

7本目に披露した、「ヤクザの親分と子分」のコントでは、暇を持て余したヤクザの親分・瀬下が子分の川原に、1万円を賭けて「だるまさんがころんだ」をしようと提案。結局1万円を勝ち取った子分が最後「1万円!」と親分にせびる声が数分間こだまし続けるというシュールなオチだったのだが、終盤は叫ぶ川原自身も耐えきれなくなったのか、「いちまんえ〜ん!」という声に笑いが混ざっていた。

10本目のネタではセンターマイクが登場し、いよいよ漫才を披露する時間が。子どもの頃の遊びについてや、子どもと大人との違い、酒を飲みすぎた翌日の二日酔いのつらさなど、さまざまな話題を語る川原だが、特にボケもしないため、瀬下もつっこむことはせず、ただただとりとめもないトークが続く。

そして川原が「俺がいまだにやってないことがひとつだけあるんだけど」と挙げたのは、「美容院に行くこと」。「どんな感じなのかやってみたい」と、コント漫才を展開するのかと思いきや、ここでもやはりボケはせず、淡々と美容院のシミュレーションは終了。

ボケそうでボケない、ツッコミも生まれない漫才が行われ続け、絶妙な緊張感が張りつめる中、川原が「このまま終えるのもなんだから、最後に一言だけ」と言うと、「ありがとうございました」と締め、ついにボケもツッコミも不在のまま、漫才を終えた。

最後は複数の黄色い風船を体にくくりつけた瀬下がドラム缶の上に仰向けになり、頭から複数の赤いハイヒールをぶら下げた川原が小さな台の上に立ち、リストのピアノ曲「ラ・カンパネラ」が流れ続けるという、この日一番のシュールなネタを披露。

このままネタを終えるかというところで、瀬下はゆっくりと起き上がると正面を向いて床に降り立ち、川原も台から降りてゆっくりと歩き出す。BGMがおどろおどろしい音楽に切り替わり、2人がゆっくりとすれ違ったところで暗転。この日最後、11本目のネタが終了した。

再び舞台が明るくなると、舞台袖から2人とともに、この日のシークレットゲスト・ミルクボーイが登場。気まずそうに微笑みながら、天竺鼠の2人とともに客席へお辞儀をし、再び舞台袖にはけていった。

そんなミルクボーイを迎えて、最後にコーナーを展開。内海崇は「無観客無配信で時間押すんですね!駒場(孝)、19時から着替えてましたよ!?」(この時点で22時30分)と驚きをあらわに。

「ちょっとまだ僕このライブがよくわかっていないので、もう一回説明をしてもらっても…?」と戸惑い続ける内海に、「今回のライブはどこにも出さない」と、川原。すると内海は「(世に)出せよ!こんな面白いやつ!」と抗議し、スマートフォンで動画を撮るスタッフに対して「ちゃんとしたやつで撮れよ!」とツッコんだ。

さらに内海が「このライブ、達成感とかあるんですか?今どんな気持ちですか?」と問いかけると、川原は「入口のない建物を作っている感じ」と、心境を明かした。

1つ目のコーナー「種類違うけど対決」は川原以外の3人が3分間、違う種目で競い、川原が独断と偏見で勝者を決定するというもの。駒場がホワイトボードに「木へん」の漢字を思いつくだけ書き、瀬下はほうきの柄を手のひらの上に乗せてバランスを取り、内海は「感動する話」を披露することに。

結局、駒場は漢字を8つしか書けず、内海の話を川原がろくに聞いていなかったため、最後までほうきを落とさず手のひらの上でキープし続けた瀬下が勝利した。

そして最後のコーナーで行われたのは「クイズ」。川原以外の3人が爆音の流れるヘッドホンとアイマスクをつけている間に、川原はクイズをどこかに隠すと説明したのだが、3人がそれらを装着したところで川原は、このコーナーが「クイズに見せかけた放置ゲーム」であることを明かした。

何も見えない、聞こえない状態で、3人がどれだけ待っていられるか。限界がきてヘッドホンやアイマスクを外した者が負けとなる。

川原が「瀬下は僕がしつこいと知っているから、我慢が長そうですね」と話していると、早速、違和感を抱きはじめた内海が「長いなぁ…まだ?」と声を上げる。さらに「怖い怖い!」と自分の角刈りをそっと撫で、「なんか濡れたぞ!?」と、落ち着きを失った様子。「(ヘッドホン)取りますよ!?」と何度も確認をして、恐る恐るヘッドホンを外した内海は、そこで初めて状況を察知して爆笑した。

と、ここまで微動だにしていなかった瀬下と駒場だが、瀬下はおもむろにアイマスクを外すと「俺、車出さなあかんねん」と、駐車場の利用時間制限が迫っていることを告白。

最終的に、「ボディビルで鍛えているから粘り強い」と内海が分析した通り、最後までアイマスクとヘッドホンをつけてじっとする駒場を放置したまま、公演は文字通り幕を閉じた。