個や組織の“挑戦”を支えるマーケティング会社が「就労移行支援」に取り組む理由。0→1で新規事業を立ち上げた女性責任者に聞く
PR・マーケティング領域のコンサルティングやプランニング事業を手がけるレターズでは、2023年5月よりIT特化型の就労移行事業所の運営を始めました。
埼玉県の南西部に位置する所沢市は、ベッドタウンとして栄える街。
近年は都市開発も進み、今年はスーパーマーケットやファッション、ライフスタイルなど、約150店舗が入る大型商業施設の開業も予定されています。
そんな所沢市にオープンした「就労移行ITスクール所沢校」の設立当初から参画しているのが、同社事業責任者の村谷七海さんです。
異業種から福祉業界へ転職し、一から就労移行事業所を立ち上げた原動力や、仕事に対するやりがい、今後の展望について話を伺いました。
メンタルケアや障がい理解・就職支援に加え、ITスキルやソーシャルスキルも学べる「就労移行ITスクール」
── まずはこれまでのキャリアについて教えてください。
村谷:新卒のタイミングで上京し、ロボットにできない仕事がしたいと考え、人の大切な機会に携わる「ブライダル業界」に就職しました。
ウェディングパーティーだけでなく、多くのことに挑戦する機会をいただき、マネジメント、企画、人事等、幅広く携わりました。
その後、IT業界に転職していたのですが、とあるきっかけで当社の役員と知り合いまして。
そこで、新しく就労移行支援事業所を開設するので、「初期立ち上げメンバーとして参画してほしい」と誘ってもらったんですよ。
「福祉」「障がい」と聞くと、人によっては遠い存在に感じるかもしれませんが、昨今では向き合わずにはいられない世の流れがあるかと思います。
私自身も身近に考える機会があります。これまでの経験や学んできたことを、活かせるチャンスだと感じ、挑戦してみようと前向きに捉えまして。そして、2023年4月に就労移行ITスクール所沢へ入社することになったのです。
── 就労移行ITスクールとはどのようなものでしょうか?
村谷:障害福祉サービスの一つ「就労移行支援事業」の中でも、ITスキルの習得に特化した事業所の一つです。うつや発達障がいでお悩みの方の社会復帰をサポートします。
障害のある方が、就労に向けてどのような知識やスキルを身につければいいのか。たくさんの働き方があるなかで、どうすれば自分に合ったものを選べるのか。
このような複合的な部分を、私たちが親身になって、一人ひとりに寄り添いながらサポートしていくのが、就労移行ITスクールの役目だと言えます。
── グループ内でも所沢事業所の特徴とはどのようなものでしょうか?
村谷:大きく分けて2点あります。
1点目は、「土台作りの重要視」です。もちろんITスキル、PCスキル、資格も重要ですが、それらを活かすための土台として、体調管理や自己理解、障がい理解、自分にあったストレス対策、コミュニケーションスキル等です。障がい名は一緒でも、悩みや恐怖、課題は人それぞれ。一人一人のお気持ちや目的にあったトレーニングを、スモールステップでサポートしています。
2点目は、「充実したスキル習得環境」です。所沢事業所では、福祉の資格保有者だけでなく、webデザイナーとして現場活躍経験者、現役動画編集・プロデューサーの外部講師、キャリアコンサルタント資格保有者も在籍。
自分で学ぶだけでなく、通所を通して、就職した後も「長く活かせるスキル」習得を、多角的にサポートしています。
そのような環境で、ご本人が頑張られた結果、通所中時点でも、未経験か所沢市役所からの動画制作を担っていたり、現場の方にお褒めの言葉をもらえるまでのデザイン制作を行えるようになった方も。
もちろん、パソコンを基礎から学びたい方も、しっかりカリキュラムを用意しています。
人生100年時代に入り、いくつになっても学び直したり、スキル習得をしながら、人生をかけてキャリアや人生を考えていく時代に入ったと感じています。選択肢や価値も多様化しています。障がいを持ちながらも、個性と向き合い、魅力を見失わず、可能性を広げていけるよう、支援員一同努めています。
このスクールは模擬オフィス。スタッフは何度でも失敗しても良い練習相手。
── 1日の仕事の流れや業務の内容について教えてください。
村谷:私は事業責任者として、社員の配置、人材採用・教育だけでなく、利用者さんへの支援や提供カリキュラムの策定などにも関わっています。
カリキュラムは一人一人に合わせて個別カリキュラムで作成していますが、
構成は主に3つのカテゴリです。
・自己理解と障がい理解
・PCスキル(事務基礎スキル全般、セキュティ知識、Webデザイン、動画編集など)
・自分の心を守り、他者と少しでも心地よく過ごすためのソーシャルスキル
就労移行ITスクールでの1日の流れは、AM10時から朝礼が始まります。
支援員による連絡事項の伝達や、一人一人と体調確認や目標の共有を行ったあと、個別訓練に入っていきます。
13:00~14:00は、会社の会議を想定して、画面共有ソフトを使用した日替わり講座を実施。
メンタルケア・ビジネスマナー・コミュニケーション・デザイン・PCスキルなどについて支援員から講義形式で学ぶことが出来る時間を設けています。
会社でも働き方の選択肢は増えており、在宅出勤や、オンライン会議は増えてますよね。
現代に合った形で学習できるよう、在宅通所環境やオンライン学習ツールも完備しているので、卒業生には在宅勤務を選択されている方もいますよ。
15時になったら夕礼と日報の記入を済ませ、その日が終了するという流れですね。
そんななかで、利用者の皆さんには、「何度でも失敗して、確認して良い、模擬オフィスとして、事業所を使ってほしい」とお伝えしています。
会社に入ってからは、聞きたくても聞けないことや、どう聞いて、進めていいか分からずに困ってしまうことも。
なので、実際に会社で働いているのを想定し、私たち支援員のことを失敗OKな練習相手と捉えて、コミュニケーションを取ってもらうようにお願いしているんです。
初めから完璧を目指さず、体調管理やまずは環境に慣れるところから、ステップ分けに応じて一緒に進めています。
言葉の向こう側にある“行間”や“真意”を汲み取ることを大切に
── 2023年5月に所沢校の立ち上げに参画して以来、何か印象に残っている出来事はありますか?
村谷:大きな出来事というより、本当に日々の積み重ねが重要だなと常々感じます。通所開始時の利用者さんの状態は、人それぞれ。日々の中で、目に見える「スキル習得や出来るようになったこと」だけではなく、「目に見えない感情や変化」も多く存在します。それらを一緒に見つけたり、確認したり、活かせたり、少しでも自信に繋がったりした際には、利用者さんからの反応が、しっかり返ってくると感じています。逆もしかりです。
まだまだ自分の至らなさを痛感する場面もありますが、利用者さんの行動や発言の意図を汲み取ることを心がけ、できるだけ固定観念を捨てて対話することを意識しています。
そういった会話から得る、支援者側の気付きや、ご本人の気付きを大切にしています。
── これから一緒に働きたいメンバーの人柄、人物像があれば教えてください。
村谷:私が一番重視しているのは「個」の強みです。
障がいをお持ちの利用者さんに対しての接し方や働きかけに正解はないからこそ、弱みの部分に目を向けるだけではなく、得意な部分に着目し、そこを伸ばしていくスタンスを大事にしていますね。
就労支援の前提知識を学んでもらった上で、OJTの一環で現場に入り、自分の得意不得意を見極めていきます。
そこから、その人にしかない強みを引き出していく。
その上で、利用者様にとっては有限で貴重な時間。
そのような時間を一緒に過ごす支援者として、必要な学びや成長を前向きにしていただけると。
自分も相手も尊重し、挑戦し続けられる姿勢を持っている方と一緒に働きたいと考えています。
また、利用者さんの考えや伝えたいことを理解する上で、ただ受け身に聞くだけでは、十分な情報を得られないことも多いです。
そのため、インプットとアウトプットの両面から適切なコミュニケーションを行い、言葉の向こう側にある行間をつかむ汲み取る力も必要になるでしょう。
福祉業界に新たな風を吹かせる存在を目指したい
── PR/マーケティング事業を展開するレターズが、就労移行ITスクールを運営する意義はどこにあると思いますか?
村谷:まさにスクールで習得するスキルはレターズが抱えるクリエイティブ領域の案件との親和性が高いと感じています。ですので事業所の卒業生とお仕事をマッチングできれば、新たなシナジーを生み出すことができるのではと考えています。
利用者さんは、日頃から企業の案件を依頼された想定で、制作物を作っているため、現場で求められる品質やクリエイティブに関しても、一定の理解やスキルを持てるよう学ばれています。
今後、就労移行ITスクールを運営していくなかで、当社のマーケティング事業ともうまく連携しながらユースケースを作っていきたいですね。
── 最後に所沢校と村谷さん個人の目標をお聞かせてください。
村谷:所沢事業所全体の目標としては、利用者さんに「長く使えるスキルを得て、就職してほしい」です。
長く使えるスキルとは、PCやITスキルだけでなく、自分の心との向き合い方や、自分に合ったストレス対処法、コミュニケーションスキル等、これから働くだけでなく、過ごしていく上で、本人のお守りになってくれるようなスキル全てです。
通所を通して得ていただく、心や身体の土台作りを元に、習得したPCスキルやITスキルを活かして働きたいという方も多いので、個々の目標をできるだけ叶えていけるように支援を進めています。
そして、具体的な就職先に関しては、障がい者雇用では、軽作業や事務職が一般的ですが、様々なことが多様化している今だからこそ、利用者さんにも様々な選択肢が得られるように支援をしていきたいですね。
加えて、福祉業界に対するネガティブなイメージも、マーケティングやPRの事業を手がける当社のような異業種が新しい風を吹かし、福祉業界を盛り上げていきたいです。
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