石橋貴明が文化人、ミュージシャン、タレント、アスリートなどジャンルを問わず“話してみたい”ゲストを迎え、焚き火の前でじっくり語り合うフジテレビ『石橋、薪を焚べる』。
11月10日(火)の放送は、奈良県立医科大学感染症センターのセンター長・笠原敬(かさはら・けい)氏が登場。今、話しておきたいコロナとの闘い方を語った。
日本で感染した初めての日本人患者を診たという笠原氏。
石橋:先生は、ここ(東京)まで、飛行機で来られてますよね。飛行機の中では、どんなふうに(コロナ)対策を練られてきたんですか?
笠原:マスクはしっかり。鼻と口を覆いますよね。
石橋:マスクはしっかりする。
笠原:それから、物にはなるべく触らないようにします。
石橋:物には触らない?
笠原:やっぱり、どこにウイルスがついているかわからないので、行儀悪いですけどポケットに手を入れるとか、腕を組んで移動するとか。
石橋:それくらい(の対策)でいいんですか?
笠原:それから…飛行機の席はなるべく後ろ。
石橋:後ろ!?
笠原氏は「気持ちの話ですよ」と言いつつ「後ろにいる人の飛沫が飛んでくるから」と、その理由を語った。
また、フジテレビの楽屋に入るとすぐに窓とドアを開けて空気の流れを作っていたことを指摘されると、「換気も大事なので、ここ(屋外での収録)は最高の空間」と笑顔を見せた。
医療機関の人間は「最悪のシナリオ」を想定して対応していくしかない
石橋は「ヨーロッパの友達から、『日本は(対策が)甘いよ』と言われる」とぶつける。笠原氏は、1日の感染者数が数百人単位で抑えられている現状は「やり方が甘いかどうかは別にして、患者数が、(急激に)増えていないようなところは、日本はうまくいっているという位置づけになっている」と返答。
多くの専門家が「まだ始まったばかり」「野球で言えば1回の表」と表現する中、笠原氏は今後をどう考えているのか。「僕の立場からは、予想を答えることに意味がないとお答えしている。医療機関の人間は、最悪のシナリオが起きたときを想定して対応していくことが大事」と語った。
「感染経路」は「接触」「飛沫」「空気」の3つ
石橋は、秋から冬に流行するインフルエンザと、新型コロナウイルス感染症についても聞いていく。
石橋:インフルエンザにかかってしまうと、コロナと間違えてしまう、わからないということになるんですか?
笠原:そうですね。新型コロナとインフルエンザは、患者さんを診ただけで診断をつけるのは難しいことも多いかなと思います。
石橋:そういう意味では、常にインフルエンザにかからないように手洗いうがいをしっかり。
笠原:我々、奈良医大が今一生懸命アピールしていることは「感染経路」という話をしています。
石橋:「感染経路」。「感染経路不明」みたいになっちゃって、いつどこでもらっちゃっているのかわからない…。
笠原:僕らが言っている「感染経路」というのは、例えば僕と石橋さんがここにいます。仮に、僕が新型コロナウイルスに感染していた場合、どのようにしてそれが石橋さんに感染するかということを「感染経路」と言っているんです。
「どこで感染したか」ではなく「どのように感染したか」が笠原氏の言う「感染経路」で、それは「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の3経路しかないとのこと。
ウイルスを絵具に例えると…
笠原:僕らは、よくウイルスを絵の具に例えるんですけど。
石橋:絵の具?
笠原:例えば、緑色のウイルスがいたとしたら、指に緑色がついて、握手で(相手の手に)緑色が移っていきますよね。周辺のものに触れば、そこに緑色がつく。実際は見えないんですけど、ウイルスの動きが目で見えるイメージができるようになると良いかなと思っているんです。
石橋:絵の具のイメージでウイルスを考える。
笠原:それが、みなさんできるようになると、何となくアルコールを置いているとか、何となく窓を開けているということから一歩踏み込んで、もっともっと自分を守れるんじゃないかなと。
コロナとインフルエンザの違いは「年齢層」
さらに石橋は「コロナとインフルエンザの違いは何ですか?」と質問。笠原氏は、新型コロナウイルスの感染経路とインフルエンザの感染経路は同じだといい、感染対策をしていけば、同時に予防できるとしたうえで、2つの感染症の違いは「年齢層」と解説する。
笠原:一番違うと思っているのは、どうやら、新型コロナは子どもがかかりにくそうだと。
石橋:子供はかかりにくいんですか?
笠原:小学生中学生くらいまではかかりにくいし、軽症で済むんですけれど、インフルエンザは昔から子どもがかかる病気だとわかっている。3月、4月くらいに学校をまず閉鎖した。新型コロナに関しては、そんなに効果がなかったんじゃないかと言われているんですけど、一方でこのまま学校が普通にやっていると、インフルエンザは学校でそれなりに流行する。そうすると「インフルエンザだと思うけど、コロナは否定できない」という人が増えてきて、現場が混乱する可能性があると思っています。
と、これからの季節を迎えるにあたっての懸念を示し「症状というよりは、感染する人の年齢層がかなり違っていて、そこがポイントになるのではないか」と語った。
石橋:じゃあ、コロナはもともと病気を持っていると重症化しやすいんですか?
笠原:僕らのイメージでは、50歳を超えて、いわゆるメタボ。お酒を飲んでタバコを吸って、ちょっとお腹が出ている、みたいな。そういう方々の中で、重症化する方がパラパラいらっしゃるなと。
石橋:それ聞いたことあって。ちょっと太ってる人がなりやすいって。
笠原:単に太っているというよりかは、そこでやっぱり、たばことかお酒とか、宴会が好きだったり。このウイルスはいやらしいところがあって、人間の「楽しい」というところにつけ込んで感染してくるんですよね。
PCR検査や抗体検査はあまり意味がない!?
一方、PCR検査や抗体検査は「受けたことがない」と話す笠原氏。
笠原:PCR検査というのは、基本的に「感染したかもしれないとき」に受けるものであって、僕はこの10ヵ月くらい風邪の症状にはなっていないので、受けていないです。
石橋:血液の抗体検査は?あれも、僕1回やったことあるんですけど。
笠原:抗体検査というのは、過去に感染していた場合に陽性になるので、しかもその感染してから抗体が陽性になるまで1週間くらいかかるんですよね。
石橋:あんまり意味ないんですか?
笠原:目的(による)。何のために行うのか、ですね。
笠原氏は、目的によって検査は必要だが、何時間おきにやればいいのか、何日ごとに検査すればいいのかを言い出すと「キリがない」と話した。
経済活動やオリンピック開催に関しても「ある程度、病院の闘い方がわかってきている」ので、「(研究を)やめないでよかった」と言われるように役割を果たしたいとの考えを示した。
「分断」した意見をまとめあげていくのには相当な年月を要する
「先生の話を聞いていて少しビビらなくなりました」と話す石橋に「ただ一つ懸念がある」と笠原氏。
笠原:今は、専門家の意見を聞きながらああだこうだ言っていて、その中でも分断が生まれていますよね。そんなに心配する必要がない派と、心配する派と。
石橋:はい。
笠原:感染者が増えてもそれは変わらないというか、より一層「自分の体験」として語りだすので、なかなかそれをまとめあげていくのは難しいんじゃないかと思っていて。
石橋:やっぱり、正しい情報を国として発信していくとか、そういうことをしていかないとダメだってことですか。
笠原:「病気」って、「自分の体験」がその人にとって正しいことになると思うんですよ。医学的には、「80%軽症、10%が重症化して、3%が亡くなっています」。それが事実だと思うんですけど、その3%の人にとっては、100%亡くなっているし。それっていくら正しい情報を言っても、実体験として病気になられた方々にとっては「そんなこと言われても自分はこうだった」となるので。こういうことがある程度社会に織り込まれていくには、相当の年数がかかるんじゃないかなという気はしています。
石橋:やっぱり、まだ「1回の表」なんですね。
笠原:病気の深刻さというよりは、新型コロナが、実体験として「感染した後こういうふうになる」というイメージが、インフルエンザのように、ある程度統一されていくには、10年単位でかかってもおかしくないなという気はしています。
一律にルールを守ろうとするのではなく場合分けをしていく必要性
そして笠原氏は「感染してはダメなのか?」と問いかける。
笠原:ゼロの感染を考えると何もできなくなってしまいます。少なくともわかっているのは、10代、20代の方々というのは無症状の方や軽症の方がほとんどだったりするし、一方で70代、80代になると重症化されることも多い。社会生活を考えたときに、10代、20代はある程度感染しても仕方ない、と許容して社会を考えていく。一方で70代、80代の人は感染されると困るので、一律に感染してはいけないとか。一律にルールを守ろうというところから、1歩進んで、感染リスクが多少あっても経済社会を回していかないといけない人たちと、そうでない人たちとか、場合分けをしていかないといけないんじゃないかなと思います。
「10年かかっても、ちゃんとこの病気と付き合えるように知識も経験も積んでいかなきゃいけないということですね」と石橋が感心すると、笠原氏は「少しでも感染経路をちゃんと理解して、意味のある予防がそれぞれできるようになってくるのが大事だと思いますし、日本人にはそのポテンシャルが十分にあると思います」と期待を込めた。
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