佐久間由衣・奈緒「大丈夫と笑っているけれど本当は大丈夫じゃない人へ」“生きる”を選択することを伝えたい

映画「君は永遠にそいつらより若い」 9月17日（金）より全国公開

めざましmedia編集部

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芥川賞作家・津村記久子のデビュー作であり第21回太宰治賞受賞作品でもある小説を原作にしたことで話題の映画「君は永遠にそいつらより若い」が9月17日（金）より公開される。

本作は、主人公の堀貝佐世（ホリガイ）が残り少ない大学生活の中で、「暴力」「児童虐待」「ネグレクト」などの社会の闇と、それに伴うやり切れない「哀しみ」に直面しながらも、友人の猪乃木楠子（イノギ）と、かけがえのない関係性をはぐくみながら“生きる”ことを選択する物語。

緻密で力強い演出で定評のある吉野竜平が監督・脚本を務めている。

「ぜひ参加したかった」と本作への意欲を語るホリガイ役の佐久間由衣と、イノギ役の奈緒に、初共演の印象、演じるうえでの思いを直撃。そして、2人の素の表情が垣間見える「一問一答」にも挑戦してもらった。

「どこにでもいそうな大学生の女の子、その中でいろいろな悩みがある」（佐久間由衣）

――本作のオファーを受けたときの心境をお聞かせください。

佐久間：主人公のホリガイはどこにでもいそうな大学生の女の子だけれども、その中でいろいろな悩みがある。身近な人がいなくなってしまったり、新しい出会いがあったりといった中で、ホリガイという人物をすごく大切に丁寧に演じてみたいなと思いました。

私は役を演じるにあたって、「身長が高すぎる」「ショートカット」ということで、思い描いている役のイメージと異なるということが多くあるんです。でも本作は、原作の中でホリガイの容姿が“高身長である”と描かれていたこともあり、もし今の自分を活かせるのであれば、ぜひ挑戦してみたいという気持ちがありました。

奈緒：まず原作自体がとても魅力的だと思いました。主人公のホリガイさんは、社会と向き合ってもがいている姿がとても不器用で、他人のことを気にしすぎてしまう。でもそんな、生きていくのが上手でないホリガイさんの姿に、私はものすごく惹きつけられたし、そこになんだか放っておけないようなイノギさん、目が離せない他の登場人物たちも加わっている。きっと日常では注目されない人たちだけれど、こういう人たちを絶対に見過ごしちゃいけないと感じて、ぜひこの作品に参加したいと思いました。

お見合いを兼ねた「お茶会」お互いの第一印象は？

――お2人は初共演ですが、初めて会ったとき、共演しての印象は？

佐久間：クランクイン前に吉野監督とホリガイ役についてのすり合わせをしていた中で、奈緒ちゃんと顔合わせとお見合いを兼ねたお茶会の機会を作ってもらったんです。挨拶をしながら扉を開けて入って行ったら、私が原作と台本を読んで知っていた“イノギさん”がそこにいて「うわー！」と思って（笑）。その瞬間にこの映画は素敵なものになると感じました。

奈緒ちゃんは役と向き合うときに、その役をイメージして顔合わせに挑むことがあるというのを聞いて、本当に素敵な女優さんだなと思い刺激を受けました。いろいろ話をして、チャーミングな一面を知ることができたし、一緒にこれから同じ時間を過ごせるのが楽しみだなと思いました。撮影現場でも、言葉を発さずとも落ち着いていられて、盛り上がるときはワーッ！と盛り上がる。そういう時間を奈緒ちゃんと作っていけたのが、この映画の中でもすごく財産になっている気がしています。

奈緒ちゃんは遊び心があるというか、先日見た出演舞台でもやっぱり本気で楽しんでいて。普段もそういうユーモアがたっぷりあって、ちょっと毒を吐くことがあったり、それがすごく面白かったり。私が奈緒ちゃんのことを女優さんとして素敵だなと思っていた理由は、一緒にいるにつれてわかっていきました。

奈緒：由衣ちゃんの第一印象は、「凛としていて佇まいがきれいな人だな」でした。由衣ちゃんの周りに静かに流れている空気というのがありながらも、ものすごく大きい口を開けて笑ったりとか、おちゃらけていたりとか、ひょうきんな部分もすごくあって。こんなにきれいな人なのに、なんで周りを緊張させないんだろうって。

撮影現場でも、すごく穏やかに安心してその場にいられるような空気を由衣ちゃんが作ってくれていたので、第一印象で感じた静かな部分と、話していく中で見えた親しみやすく無邪気な部分というのは、由衣ちゃんがあわせ持つ素敵な魅力なんだと思います。特にセリフがないシーンでも、由衣ちゃんとだったら安心してホリガイさんとイノギさんでいられたので、すごく頼りにしてましたし、楽しかったです。

「ものすごく強くて真っすぐな“生きろ”というメッセージ」（奈緒）

――吉野監督からの演技指導、印象的だった演出はありましたか？

奈緒：監督の演出は準備段階から始まっている感じがしていて、由衣ちゃんとのお茶会を設けてくれたのもそうですし、役に対してもイノギさんが持っているリュックの中身まで全部一緒に考えてくれました。お芝居のやり方ではなく、もっと内面的なところで「どうしたら、そこにその人として居られるか」ということを一緒に作ってくれたような気がします。

――監督と一緒にそれぞれの役の履歴書を作られたそうですね？

奈緒：イノギさんの血液型から好きなお酒や映画。あとリュックのファスナー部分にサボテンのキーホルダーをつけているんですけれども、サボテンが好きそうだよねとか。本当にイノギさんという人が存在するように「イノギさんてどういう人だろうね？」と、監督と細かいクセの一つについてまでいろいろと話しました。

佐久間：私も監督と（履歴書を）作りました。ホリガイの家の中は散らかっているけれども、汚れているわけではなく、水回りはちゃんときれいにしてある、散らかってはいるけれども何がどこにあるかわかっている…みたいなことまで話し合いました。

――すでに完成作品を見たそうですが、いかがでしたか？

佐久間：試写を見終わって涙が止まらなくなってしまって…。自分が出ている映画でそういう感情になったことがあまりないのですが、小日向（星一）さん演じる同級生の“ヨッシー”が言う、「人は朝起きて歯磨くみたいに簡単に死ねちゃうんだよなぁ」というセリフがすごく響いてきて、涙が止まらなくなってしまったんです。

人は何かを選択しながら生きていて、朝起きて歯を磨くか顔を洗うかもすべて選択して生きていける。その中で私たちはたまたま“生きる”を選び続けているから生きていけているけれども、そうじゃない選択肢を取るってすごく苦しいこと。常に生きるか死ぬかを選択していく中で、生きるを選択しても苦しいこともあるし、日常って当たり前ではないんだなと思いました。

奈緒：この作品は自分が関わったっということを置いても、すごく好きな映画だと思いました。見た後に、めちゃくちゃみんなに薦めなきゃという気持ちになって（笑）。ものすごく強くて真っすぐな“生きろ”というメッセージを、私はこの映画から感じるので、たくさんの方に生きているうちに届いて欲しいとすごく思いました。

――この作品を見てくれる方にメッセージをお願いします。

佐久間：ぜひ“生きる”を選択してほしい。私もそうなんですけれども、「自分なんてたいした人間じゃない」と思っている人もたくさんといると思いますが、実はそんなことない。誰かと関わっている時点で誰かを救えているはずだし、この映画がそういう存在になれたらうれしいなと思っています。

奈緒：「大丈夫？」って聞かれて「大丈夫」って笑っているけれども、本当は大丈夫じゃない人のためにこの作品を作ったと監督がおっしゃっていて。まさに監督が思い描いていた通りの映画になっていると思いますし、少なくともこの作品に関わったみんながそういう気持ちでこの作品を作りました。見に来てくれる方に対しても「あなたを気にしている人間が、私たちがここにいます」というメッセージになって届いてくれたらいいなと思います。