明石家さんまと40年以上の付き合いで、“盟友”ともいえるフジテレビの三宅恵介ディレクターが、『明石家サンタ』の裏側を語った。
明石家さんま、八木亜希子が司会を務める同番組は、今年は『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2021』として、12月24日(金)25時15分~放送される。
同番組は、その年に身の上に起こった「不幸な話」を生放送中に電話でさんまに報告。さんまが面白いと判断しクリスマスベルを鳴らせば「合格」で、その場で豪華賞品が当たるチャンスがもらえる。一般視聴者がメインだが、芸能人枠も設けられており、みなハガキや電話で応募をする、というルールだ。
「これを見ないとイブが終わらない」という視聴者も多い人気番組は、1990年の初回から変わらぬスタイルで放送を続けている。さんま&八木のコンビもさることながら、初放送から30年にわたり演出を担当するのが、三宅ディレクター(以下、三宅D)だ。
このたび、三宅Dの取材会が行われ、三宅Dが持参した「番組の面白さを象徴する」という2017年の映像を見ながら魅力や裏側が語られた。
ハプニングこそが醍醐味「VTRできれいに編集し、まとめてしまっては伝わらない魅力がある」
この年、さんまが最初に電話をしたのは、中学生の女の子。祖母と彼氏とのラブラブの電話を聞いてしまった、と少々生々しい発言を交え報告するといきなり「合格」。さらに、賞品の抽選をしたところ、いきなり目玉の自動車を引き当てた。
ところが、女の子は車に興味を示さず、姉がさんまの大ファンなので電話を代わってほしいと依頼。姉が電話に出たが、声が女の子に酷似していたため、さんまは、本当に姉なのか、と疑い再び女の子に代わらせる、といったやりとりでも盛り上がった。
続いて、「45歳を行ったり来たり」と、番組の“お約束”で年齢を答えた男性。しょっぱなからディープな番組視聴者であることがわかるネタを連発し、さんまも「俺の番組いっぱい見とるわ」と感心。その陽気な感じに「不幸な話はないのでは?」とツッコむと、職業を聞いてほしい、と男性。「職業は?」と聞くと「建築関係トントントン」とさらに“お約束”ネタで返す。
ここまで、かなり時間を使っていたため、八木は「(不幸話まで)たどり着くかな…」と不安を見せるも、さんまは焦ることもなく不幸話をリクエスト。男性は、最後までさんまと番組ネタにからめ、冬の日本海に落ちたというエピソードで「合格」。さらに、賞品抽選で「ハズレ」を引き当てるというオチをつけ、爆笑となった。
最後に三宅が紹介したのは、38歳の男性からのエピソード。「お仕事は?」と聞くさんまに、「それがネタなんです…」と男性。「じゃあ、不幸な話聞くわ」というさんまに「○○の社員です」と、当時、大幅なリストラを行った家電メーカーの名前を挙げると、一瞬で合格のベルが鳴った。さらに、賞品抽選を行うと、別の家電メーカーの商品を引き当てるという見事なオチをつけた。
“素人いじり”の達人で生放送も得意とするさんまをして、「すごいな今日。図ったよう…」と言わしめた“ミラクル”が連続した回だが、三宅はこういった「予定“不調和”」が、バラエティ番組を作るうえで大切にしていることだと話す。
離婚後の芸能人が名前を言っただけで「合格」になったことも
「番組の一人目で、しかも中学生に目玉商品の車が当たるとは、さんまさん、スタッフ、視聴者全員ですら予想できません。こういった台本に書けないことが起こると、この先どうなっていくんだろう、という期待感も同時に生まれる。この期待感が非常に大切で、VTRで編集してきれいにまとめてしまったら伝わらないし、魅力がなくなってしまう」と、生放送のメリットを説明。
番組最大の魅力である、さんまと一般人応募者との生のやりとりについては、「さんまさんは相手がプロであっても、素人の子どもさんであっても、誰にでも平等に接します。一律に平等で忖度なしで切り込んでいく。相手のいいところを拾ったり、引き出したりして笑いに昇華させる力は、本当に世界一だと思いますね」と改めて絶賛。
さんまの隣で番組を進行する八木については「いい意味で欲がないところが魅力。“ここで笑いをとろう”とか“目立とう”ということがないんですよね。のほほんとして屈託のないような雰囲気でいて、キツい感じを出さずにさんまさんに平気でツッコんでいける。わりと対等な関係として、さんまさんもやりやすいのではないかと思います」と評価した。
2019年に、八木の体調不良で代役を務めた中野美奈子についても触れ、「八木さんがお休みされて、さんまさんとどうするか相談したんです。以前、『27時間テレビ』でさんまさんと共演して、すごく相性がいいなと思った中野さんにお願いしてみたところ、彼女の魅力である少し手厳しいところも出しながら非常に面白くやってくれたと思います」と振り返った。
長年番組演出に携わる中で印象に残ることについては、「ご紹介した車が最初に当たってしまった回や、2018年にハズレを引いてしまった子どもさんに、特別にもう一回抽選をしてもらったらそれもハズレだったという回が印象に残っています。磯野貴理子さんが離婚後に電話してきて、名前を言った瞬間に合格になった、というのもありましたね」と回顧した。
メールが普及する中で、ハガキでエピソード募集する意図については、「メールで募集をすれば、もっと多くの方から応募いただけるかもしれません。でも、“広がると薄くなる”と思うんです。“ハガキに書く”という工程を通すことで、話をでっちあげたり、人から聞いた話をさも自分のことのように書くことに抵抗感を持っていただけるのでは、と。ハードルは上がるかもしれないですが、その方が本当に体験した出来事を書いていただく。そのために今もハガキにこだわっています」と、変わらぬスタンスを明かした。
現在、ネタの募集期間(12月17日まで)ということで、採用基準を聞いてみると、「電話での説明になるので、なるべく簡潔なネタがいい。自分にとっては不幸でも、他人から見ると笑いになるネタがいいですね。あとは、話の起承転結がはっきりしているほうが好まれます。でも、さんまさんとも毎回話しますが、“ネタは3割、キャラクターが7割”というところもある。どんな方が投稿してくれているのか、毎回楽しみにしています。皆さんもぜひご応募いただければと思います」と締めくくった。
応募や番組の詳細は、公式サイトまで。
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