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演劇文化の振興のため、1992年に創設された「読売演劇大賞」。

選考委員のノミネート、投票委員の投票という2段階を経て、作品、男優、女優、演出家、スタッフの5部門の年間優秀賞を決定しています。

2月25日に「第29回読売演芸大賞」贈賞式が行われ、各賞の受賞者が出席。受賞者へトロフィーを渡すプレゼンターは、昨年の各最優秀賞の受賞者が担当。

最優秀男優賞を受賞したのは、「フェイクスピア」での演技が評価された、高橋一生さんです。

高橋さんは、プレゼンターの山崎一さんから笑顔でブロンズを受け取ると、「自分の人生においてほとんどの時間をお芝居に携わらせていただきました。最優秀男優賞をいただけたことは、今後の僕の指針になります。ありがとうございます」と感謝。

そして、「私事ですが、今回の受賞は私を育ててくれたマネージャーから電話で受けました。受話器越しにそのマネージャーの大きな声の一人バンザイ三唱を聞けました。その大きな声に受話器から耳を離しつつ…（笑）。芝居をやっていてよかったと、初めて思えたような気がします」と笑い交じりで、振り返りました。

続けて、「賞をいただけることがすべてではありませんが、自分とは別の他者の存在がいなければ、こうして喜ぶこともできませんし、もしかしたら、お芝居をしたいという欲求が、僕からなくなってしまうかもしれないと思いました。それと同時に、今回受賞したきっかけとなった『フェイクスピア』という作品のご縁を心から感謝いたしました」としみじみ。

最後に、『フェイクスピア』に関わったすべての人物名を、2分間にわたり述べて、「この男優賞をいただけたのは、このカンパニーです。本当にありがとうございます。これからも、多くの評価がいただけずとも、生きることに懸命で、時には孤独になってしまうかもしれませんが、一塊になれない、そのおひとりにとって、自分は灯のような芝居をしていきたいです」と力強く語りました。

最優秀女優賞に選出されたのは、「砂の女」での演技が評価された、緒川たまきさん。

緒川さんは、プレゼンターの鈴木杏さんから、ブロンズを受け取り、「今日久しぶりに、鈴木杏さんの顔を見て、真っ先に浮かんだ言葉は、『信頼感』です。彼女は、共演者として作品を作っていても、観客として作品を拝見していても、信頼感で満たしてくれます。その信頼感が生むものは、とても大きなもので、共演者としてもたくさん手を引いてもらいました」とニッコリ。

続けて、「今回の『砂の女』という作品で、この栄誉ある賞を受賞させていただいたのは、何をおいても、私を信頼感で引っ張て、背中を押してくださったスタッフや、共演者の皆さまにつきます。これから心に誓うのは、『ご一緒する共演者、スタッフ、観客の心に信頼というものを届けて、そのことが作品を強度のあるものにする』ということを誓ってまいります」と語りました。

■最優秀作品賞　「フェイクスピア」（NODA・MAP）

■最優秀男優賞　高橋一生
「フェイクスピア」（NODA・MAP）

■最優秀女優賞　緒川たまき
「砂の女」（キューブ/ケムリ研究所）

■最優秀演出家賞　上村聡史
「OSLO」（フジテレビジョン/産経新聞社/サンライズプロモーション東京）
「森 フォレ」（世田谷パブリックシアター）

■最優秀スタッフ賞　伊藤雅子
「反応工程」（新国立劇場）、「友達」（シス・カンパニー）、「ジュリアス・シーザー」（パルコ）の美術

■杉村春子賞　那須凛
「アルビオン」（劇団青年座）、「春の終わりに」（ENGISYA THEATER COMPANY）、「ザ・ドクター」（パルコ）

■芸術栄誉賞　本多劇場グループ
40年に渡り東京・下北沢の劇場群を運営し、コロナ禍でもいち早く行動して演劇人を支援した。

■選考委員特別賞　「桜姫東文章」（松竹）

■優秀作品賞
「帰還不能点」（劇団チョコレートケーキ）
「砂の女」（キューブ/ケムリ研究所）
「ニュージーズ」（東宝/TBS）

■優秀男優賞

阿部サダヲ　「THE BEE」（NODA・MAP）
佐藤B作　「ザ・空気ver.3 そして彼は去った…」（二兎社）
松尾貴史　「鷗外の怪談」（二兎社）
村井國夫　「獣唄 2021改訂版」（劇団桟敷童子）、「にんげん日記」（トム・プロジェクト）

■優秀女優賞

板垣桃子　「獣唄 2021改訂版」（劇団桟敷童子）、「飛ぶ太陽」（同）
倉科カナ　「雨」（こまつ座）、「ガラスの動物園」（東宝）
長澤まさみ　「THE BEE」（NODA・MAP）
みやなおこ　「堕ち潮」（TRASHMASTERS）、「ガラクタ」（同）

■優秀演出家賞
岡田利規　「未練の幽霊と怪物―『挫波』『敦賀』―」（KAAT神奈川芸術劇場）、「夕鶴」（東京芸術劇場）
野田秀樹　「フェイクスピア」（NODA・MAP）、「THE BEE」（同）
日澤雄介　「帰還不能点」（劇団チョコレートケーキ）、「一九一一年」（同）
眞鍋卓嗣　「インク」（劇団俳優座）、「海王星」（パルコ）

■優秀スタッフ賞
国広和毅　「OSLO」（フジテレビジョン/産経新聞社/サンライズプロモーション東京）、「森 フォレ」（世田谷パブリックシアター）、「ザ・ドクター」（パルコ）の音楽
塵芥　「獣唄 2021改訂版」（劇団桟敷童子）、「飛ぶ太陽」（同）の美術
長田佳代子　「森 フォレ」（世田谷パブリックシアター）、「一九一一年」（劇団チョコレートケーキ）の美術
松本大介　「帰還不能点」（劇団チョコレートケーキ）、「母 MATKA」（オフィスコットーネ）、「ダウト～疑いをめぐる寓話」（風姿花伝プロデュース）の照明