小関裕太ロングインタビュー「“もの”の感情を撮りたい」自分探しの先に見たもの

めざましmedia編集部

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俳優・小関裕太が、自身の24歳の誕生日に訪れたフィンランドで撮影してきた写真集『Kiitos! [キートス]~Koseki in Finland~photo by Jun Imajo』を11月23日に発売。その発売を記念した写真展を東京・世田谷区のIID 世田谷ものづくり学校にて、11月29日（金）まで開催している。

今回の写真展は少し変わっていて、写真家の今城純氏によって撮影された被写体が小関の写真展『Kiitos! [キートス]~Yuta Koseki in Finland~ photo by Jun Imajo』と、10代の頃から趣味で写真を撮り続けてきた小関自身が撮り下ろした写真を展示した『キートス! ベリーマッチ photo by Yuta Koseki』の2つの写真展が別会場で行われている。

やるなら写真集とかの小さなものじゃなくて、空間にできたらって

そもそも今回の写真展のきっかけは、写真集を発売したからではなく、小関の「写真展を開きたい」という想いが発端だったという。毎年、自身の誕生日に小関はファンと楽しむ企画を行ってきており、ショートムービーを作ってみたり、曲を作ってライブをしてみたりと、俳優の枠を超えたさまざま姿を見せてきた。そんな中、24歳の誕生日を迎えるにあたって考えたのがこの写真展だった。

「今までいろいろやらせてもらってきて、『今回、何だろう？』って思ったときに、毎回、新しいことに挑戦させてもらってきたけど、原点に戻ってみるのはどうだろう？っていう気持ちが湧いてきて。高校を卒業して、初めて買った高い買い物がカメラで、それ以来、趣味にしているけど、たまに友達にポストカードにしてメッセージを書いて送るとかぐらいで、自分のためにしか撮ってなかったから。けど、やるなら写真集とかの小さなものじゃなくて、空間にできたらっていいなって。その方が面白いし、新しいし。それでスタッフの方に『写真展どうだろう？』って言ったら、『いいじゃん！』ってなって（笑）。『じゃあ、どこかに撮りに行こう』、『だったら、憧れだった北欧に行きたい』ってことで、この形になりました」

写真に撮ることによって、もともとはない“もの”の感情を表現できたら

これまでは誕生日にイベントを行ってきたが、今回は24歳の誕生日、その日を含む5日間、フィンランドに滞在し、撮影を行ってきた。当初の目的通り、小関がフィンランドで目にしたものを自分のカメラにおさめながら、一方で、写真家・今城純氏がそんな小関の姿を撮影。写真集ではフィンランドの人々や文化、自然、デザインに触れ身を委ねることで、表情が豊かになり変化していく小関を見ることができる。そして、小関自身が撮った写真には、これまで撮ってきたものとは違う感情が詰まっているという。

「僕、今回すごく意識したのが、写真展に向けて撮っているので、どういう写真を撮ろうかってことで。撮ったものがどう見られるんだろう？とか、自分は何を見て欲しいんだろう？とか、すごく迷ったんです。正直、フィンランドに着いた初日は、まだ決まり切っていなかったんですけど、ある瞬間に僕は“人”とか“もの”を撮りたいのかもしれないって思ったんです。

“もの”っていうと何でも物なんですけど、感情が見える“もの”というか。（写真展で）窓枠にレイアウトしているのは“もの”が多いんですけど、“もの”の質感だったり、色味だったりを見せたくて“もの”に寄って撮っているんです。そもそも“もの”には感情はないんですけど、撮り方によって感情が見えてくるなって思っていて。例えば、数量限定でフォトパネルにもした標識は、向こうでは何でもないポピュラーな標識なんですね。でも、日本人の僕からすると珍しく見えて。何よりあのくねくね曲がった感じがかわいい（笑）。で、見ているとなんか人生を表しているかのようにも見えてきて。直線じゃなくて、曲がったり、時に別れたり。そういうメッセージが感じられるなって思って」

――物ではあるけど、そこに感情がある“もの”を撮っていると。

「そうですね。今回はそういう“もの”の写真を選びました。もしかしたら、年を重ねて、僕の価値観が変わったら、また違う写真を撮るようになるかもしれないんですけど、今は写真に撮ることによってもともとはない“もの”の感情を表現できたら面白いなって思ってます。風景もいいんですけど、僕の感情的には広すぎるというか。ファインダーの中だけにおさめるのがもったいない、目の前で見て、体感したいって思っちゃうんです。だから、撮った写真の中には花とか木とか、一見、風景を写したものもあるんですけど、僕としてはその木とか、花に寄って、敢えて背景をぼかしていて。その草木から出ているエネルギーとか、ピュアさみたいなものを見る人にも感じてほしいなって思って撮っています」

自分探しのツールから、誰かに届けるという感覚が一つ増えた

そんな想いを聞いてから改めて飾られた写真を見ていると、何だか写真の中の“もの”たちが、こちらに何か話しかけてくるような気分にもなる。“写真家”としての一歩を踏み出したのかもしれない小関に、今、自身にとって写真はどんな存在なのかを聞いてみた。

「今まではカメラは自分探しのツールだったんです。左目だけでファインダーを覗くと、自分がどんなものが好きで、どんな色が好きで、どんな風景が好きで、どんな明るさが好きなのかとか、ホントに小さい範囲の中で自分の好きと対面できるから、自分の性格を知るためのツールになるんです。もともと旅が好きだったりするのも、自分探しが好きだったりするからで、これはぴったりだなって思ってカメラを始めたんですけど、今回はそこにどう見てほしいかっていう気持ちがついてきて。自分が好き、素敵って思いながらも、皆さまにも素敵だなっていう写真を撮りたいっていう想いが加わりました。視野が一つ広がったというか。届けるという感覚が一つ増えましたね」

毎年、6月8日の誕生日付近の日程で行ってきた企画が今年は11月となってしまったが、来年の構想は早くも練り始めているとのこと。

「もう自分の中ではやりたいことが決まってます（笑）。例年だと終わってから半年くらい考えられなくて、残りの半年くらいでいろんな人を巻き込んで、迷惑をかけながらやるんですけど。来年はもうフィンランドから帰ってきて、会議を始めたくらいからもう自分の中では決まってきていたので。ここ数年、新しいことにいろいろチャレンジさせてもらってきたんですけど、その中で、その道のプロの方と触れ合う中で、何か一つのことと向き合っている方って強いんだなっていうことに気づいたんです。だから、新しいことにも挑戦しつつ、これまでやったことをブラッシュアップすることも必要だなって思ったので、今までやってきたことをより膨らませてお見せできたらいいなって思ってます。ただ、時期的には初めてのミュージカル（『四月は君の嘘』2020年7月上演）の時期と準備が重なりそうなので、大変かな？とも思うんですけど、今はやってみたいなって思っています」