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ソプラノ歌手・田中彩子「未熟者の私ですが…」実現したいビッグプロジェクトとは?

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「世界が尊敬する日本人100人」(Newsweek日本版)に選ばれたソプラノ歌手・田中彩子(35)が立ち上げたプロジェクトが大きな山場を迎えようとしている。それは“アルゼンチン国立青少年オーケストラを日本に招待すること”

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天使の歌声で世界を魅了する田中は、18歳で単身ウィーンに留学し、22歳でスイス・ベルン州立歌劇場で日本人初&最年少でソリスト・デビュー。今年7月にはフジテレビで放送されたボクシング村田諒太戦で国歌独唱し話題になったばかりだ。

今はウィーンを拠点にしヨーロッパと日本を行き来する多忙な田中が、一体なぜアルゼンチンの青少年オーケストラに興味を持ったのか?フジテレビュー!!の単独インタビューに応じた。

半分壊れている家で生活する子供達を見て「想像を絶する世界」

ヨーロッパがオフシーズンの時は南半球がオンシーズンなので、演奏家たちがアルゼンチンのブエノスアイレスでツアーをするという伝統があり、2013年に田中もコンサートに呼ばれ初めて現地を訪れた。

田中:空港から市内へ向かう高架から見えたのが、鉄格子に囲まれた“グレード4”と呼ばれる警察も入れない貧困層の地域でした。ボロボロという言い方では伝わらない、家も半分壊れていてどこからか拾ってきたベッドで生活している様子が上から丸見えになっているのです。そういう状況で子供達が普通に遊んでいて…それは想像を絶する世界でした。

それから毎年夏になるとアルゼンチンへの演奏旅行へ呼ばれることに。すると、貧困地域の青少年たちも参加するオーケストラがあると聞いて見に行くと、そこに広がっていたのは驚きの光景だった。

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田中:プロ顔負けのレベルでした。面白いことに、その青少年オーケストラは、貧困の子供だけではなく、普通の家庭出身の子供もいるんです。毎年オーディションがあり、どんな環境の子でも、怠けたら落ちる、弱肉強食の世界。かわいそうな子供達に音楽に触れさせようというボランティアではなく、本気でプロを目指す子供達を、育った家庭は関係なく指導しているのです。

しかし、家が壊れているような地域で育った子供達が楽器に触れられる機会があったのだろうか?

田中:ブエノスアイレスは、南米のウィーンと言われるくらいクラシック音楽が盛んで、イタリア移民やドイツ移民が多く、音楽の文化が根付いています。貧しい地域とはいえ、バーの一角にもおんぼろのバイオリンなどが置いてあり、子供達が気軽に触ることができる環境が身近にあるのです。

アルゼンチン×日本 子供達の交流目指す背景に自身の経験

田中はそんな才能ある青少年オーケストラを、日本に連れてきて、コンサートを開き、日本の子供達と交流させたい!というのだ。

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田中:日本では、私のことがメディアで取り上げられるたびに10代から20代の方々から相談が寄せられます。留学したいけど勇気が出ない、音楽家になりたいけどどうしたらいいのか、才能がないのかな…など。最初は「なぜ私に?」と思いましたが、たぶん私が音楽を志す上で(日本の音楽大学などを卒業する)“王道”のルートを通ってきていないから、何らかの光や違う方法があるのかもしれない、という期待を持って聞いてくれるのかな、と。日本でも悩んでいる青年達が多いのだなと思って…。

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田中自身、3歳からピアノとエレクトーンを始めたが、手が小さかったためにピアノでプロになることは断念。楽器もいらないし、ただだから…と声を出してみたら高い音が出るとわかり「正直、最初は興味がなかったが、歌をやらなければ音楽の道に行けない」(本人談)と思い歌の道へ進んだ。18歳の時、片道切符でウィーンへ飛び、最初は音楽学校ではなく語学学校からスタートして、今の地位まで上りつめた。

単身ウィーンへ 忘れらない先輩の言葉「自分の好きなように歌え」

田中:色々な人と関わることで、自分が開花したし変わったと思うのです。国際交流など新しい経験ができれば、自分を信じることや新たなチャレンジをするきっかけになるかもしれない。関わる大人も同じで、自分も未熟者ですが、近くで成長していけるのかな、と。こういう機会がないとなかなか関われない日本とアルゼンチンの青年たちそれぞれにとって何かの“きっかけ”になればと思うのです。決して甘やかしているわけではありません、自分自身が「やるんだ!」というきっかけ作りです。

田中にとっても、国内外での多くの出会いや彼らの言葉が、自分の進む道に大きく影響したというのだ。中でも、忘れらない先輩の言葉があったという。

田中:15歳くらい上のアルゼンチン出身のテノール歌手で、私がキャリアについて悩んでいた時、他人から言われるがままに歌っていた時期があったんです。でも彼は「なぜそんなに人の意見を聞くのか?自分のやりたいように歌わないと才能は開花しないよ。わがままに歌わないと死ぬ時後悔すると思う」とアドバイスをくれました。彼は残念ながら若くして病に倒れ亡くなりましたが、その時は本当にそうだな、と気持ちを切り替えることができました。

いざプロジェクト実行へ!しかし壁は高く不安に…

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そんなきっかけ作りをアルゼンチンと日本の青少年のためにも…と、田中がこのプロジェクト決行を決意したのは去年のこと。一体何から始めたのだろうか?

田中:まずは、思い当たるスポンサーを巡って「こんな企画があるんです!」と説明しました。みなさん興味は持っていただけるのですが、本当にこんな小娘が大勢の外国人を日本に呼ぶことができるのか?難しいのでは?という印象を持たれてしまったかもしれません。

そこで考えたのが、自分で実績を作ってプロジェクト自体を知ってもらうということだった。

田中:300万円のクラウドファンディングをスタートしました。もちろんこの額で50人以上をアルゼンチンから連れてくるのは不可能ですが「これだけの人が集まりました、賛同いただけました」という実績になるのではと思いまして。でも実際に支援の受付を始めてから、最初は不安で眠れませんでした。1%とか5%しか集まらなかったらどうしよう、と…でも現在まで75%以上の方に賛同いただくまでに。まだ終わっていないのですが、始めて良かったと思っています。

しかしなぜ田中は自身の歌だけでなく、このような新たな活動にまでチャレンジするバイタリティがあるのだろうか?

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田中:私は、自分自身にそんなに興味がないのです(笑)。自分が歌手でいることだけならとっくに辞めていたと思います。周りの方々のサポートがあったから、そして彼らに対して「これだけできたよ、ありがとう」と言いたいがためにやってきました。クラシック音楽の魅力を広めるためにも、そしてアルゼンチンと日本の青少年たちにも、ちょっとだけでも「こんな道もあるよ」と何かに気づいてもらえれば、それでいいのです。

支援の受付は11月29日まで。青少年の交流コンサートは2021年1月、京都と東京にて予定している。

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