中村勘九郎「40代の僕たちがまだまだ頑張っているのを伝えたい」中村屋一門が全国巡業

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中村勘九郎さん、中村七之助さんを中心とした中村屋一門が全国巡業を行う「中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演2023」が、10月に開催されることが決定。

2005年から、季節によって「春暁」「陽春」「新緑」とタイトルを変えて毎年行われてきたこの公演は、今年で19年目を迎えました（2020年は新型コロナウイルスの影響で中止）。

10月5日（木）の埼玉県所沢市での公演を皮切りに全国14ヵ所を巡る本公演の見どころなどを、勘九郎さんと七之助さんが語った取材会の様子をリポートします。

公演で披露するのは、2人が演目について解説したり観客の質問に答えたりする「トークコーナー」と、中村鶴松さんによる「女伊達」、勘九郎さんが浦島を、七之助さんが乙姫を演じる「天日坊五十三次より『桑名浦乙姫浦島』」。

江戸時代に実際にあった「天日坊事件」の舞台を鎌倉時代に置き換えた河竹黙阿弥作の演目「天日坊五十三次」は、2012年に宮藤官九郎さん脚本＆勘九郎さん・七之助さん出演の舞台「天日坊」として約150年ぶりに復活し、話題を呼びました。

「桑名浦乙姫浦島」は、その劇中の一場面。乙姫と舞い踊った浦島が桑名浦の船の上で目覚めるというエピソードが、舞踊として復活するのはなんと156年ぶりとなります。

勘九郎さんは、「桑名浦乙姫浦島」について「この巡業の特徴は、普段、歌舞伎の本興行でなかなかかからない演目を見ていただくこと。かからない演目＝つまらない演目とも言えるけれど（笑）、力を合わせてお客さまに楽しんでいただけるものにしたい」と意気込みを。

黙阿弥が書いた台本の「ト書き」はあるものの、振り付けも曲も台詞も残っていないため、現在は一座で史料を掘り起こす「発掘作業」のような状態が続いているそうです。

曲は浦島にまつわる歌舞伎の複数の舞踏をベースにアレンジし、「（黙阿弥の）ト書きをリスペクトしつつ、そこをどう発展させるか、どう調理するか。ベースとなるものがほぼゼロなので、みんなでセッションして話し合って…江戸時代の座付き作家と作品を作り上げていったような状態」「そのチャレンジを楽しんでいるし、楽しみに待っていただきたい」と、笑顔を見せました。

吉原仲之町が舞台の「女伊達」は、上方の男伊達を相手に華麗な立ち回りを見せる女伊達を鶴松さんが演じる、華やかで痛快な演目です。

七之助さんは、「鶴松が最近メキメキ腕をあげているので、踊りたいものを聞くようにしているのですが、彼の口から『女伊達』が出てきて驚きました。鶴松がこういう役どころを演じるのを見たことがないので、楽しみです」と期待を寄せました。

また、コロナ禍以降、観客から質問を紙に書いてもらい、それに答える形になっていた「トークコーナー」は、今回の公演から当初の「挙手制」が復活。

「手を挙げていただくと、お国柄が出る」（勘九郎さん）、「可能な限り昔に戻して、各地のお客さまと直に触れ合っていきたい。（挙手制なら）こちらから逆質問をすることもできるので、以前は『美味しいお店はありますか？』とお客さまに質問して、教えてもらったお店に兄弟でうかがったこともありますよ」（七之助さん）と、楽しみにしているポイントを語りました。

中村勘三郎さんとの親子会から続く本公演には、勘九郎さんの息子・中村勘太郎さん、中村長三郎さんが参加したことも。

記者から「歌舞伎界では10代の方の躍進が続いているが…」と質問されると、勘九郎さんは「子どもたちとの巡業は今後もやっていきたい」と前置きしつつ、「40代の僕たちが頑張っているというのを、伝えていきたいと思います」とキッパリ。

最後に勘九郎さんは、「今年は久々にうかがう土地もございます。まだ歌舞伎を見たことがない方、歌舞伎を好きで見てくださる方にも楽しんでご覧いただけるような作品を、特に今回は新作と言っていいような作品もございますので、試行錯誤して、みなさんに少しでも楽しんで帰っていただけるようなものづくりをしていこうと思っています。ぜひぜひ楽しみに待っていていただけたら」と、ファンにメッセージを。

会見場となった「文京シビックセンター」の名誉館長を勘三郎さんから受け継ぎ、「館長の名に恥じないように」と意気込む七之助さんは、「トークコーナーも昔の形が戻ってきて、みなさまと交流できるのが楽しみ。みんなで一生懸命すばらしいものを作り上げて、小さい子供からご年配の方々まで楽しんでいる作品にしています」と、会見を締めくくりました。

『中村勘九郎　中村七之助　錦秋特別公演2023』
出演：中村勘九郎、中村七之助、中村鶴松ほか
演目：「トークコーナー」「女伊達」「天日坊五十三次より『桑名浦乙姫浦島』」

【公演日程】
10月5日（木）埼玉県所沢市所沢市民文化センター ミューズ　マーキーホール
10月6日（金） 東京都大田区 大田区民ホール･アプリコ 大ホール
10月7日（土） 新潟県長岡市 長岡市立劇場 大ホール
10月8日（日） 東京都文京区 文京シビックホール 大ホール
10月9日（祝・月）大阪府高槻市 高槻城公園芸術文化劇場 トリシマホール
10月11日（水） 石川県金沢市 本多の森ホール
10月12日（木） 富山県氷見市 氷見市芸術文化館
10月13日（金）愛知県刈谷市 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
10月14日（土） 長野県長野市 長野市芸術館 メインホール
10月15日（日） 静岡県富士市 富士市文化会館 ロゼシアター 大ホール
10月17日（火） 青森県八戸市 八戸市公会堂 大ホール
10月18日（水） 青森県弘前市 弘前市民会館 大ホール
10月20日（金） 山形県南陽市 シェルターなんようホール（南陽市文化会館）
10月21日（土）山形県酒田市 希望ホール（酒田市民会館） 大ホール

公式HP＝https://kinshu2023.com/