安楽死を求める人々を見つめます。
第32回FNSドキュメンタリー大賞 エントリー作品『最期を選ぶ 〜安楽死のない国で 私たちは〜』(10月7日/フジテレビ ※関東ローカル)が放送されます。
「FNSドキュメンタリー大賞」は、フジテレビ系列各局の番組制作能力向上とその蓄積を図る趣旨から、1992年に創設。
FNS系列28局の中から、毎年優秀作品1点に「FNSドキュメンタリー大賞」が贈られ、同賞にノミネートされた作品の多くは、日本民間放送連盟賞、ギャラクシー賞などを受賞しています。
日本で禁じられている安楽死を選ぶ理由
不治の病に苦しむ女性が安楽死を求めてスイス行きの便を待っていました。彼女は、娘に見守られながらスイスで死を遂げます…。
スイスを訪れると、死ぬ直前まで笑顔で家族と過ごすスイス人女性の姿が―― “最期を選ぶ”とはどういうことなのでしょうか。
『最期を選ぶ 〜安楽死のない国で 私たちは〜』では、日本で「スイスで死ねることが私の幸せ」と語る女性、黙々と死にたい理由を綴(つづ)る男性を取材。安楽死を願う人々にカメラを向けます。
「『死ねる』と思えるだけで安心できる」安楽死を望む人々が口にする“安堵”の選択肢
主に終末期の患者を苦痛から解放するための安楽死。
日本では、病に苦しんだ患者が死を望んでも、その自死に関与すれば、医師も含めて「自殺幇助(ほうじょ)」「嘱託(しょくたく)殺人」などの罪に問われます。
一方、スイスをはじめ欧米など一部の国では安楽死が認められていて、さらに法整備のために国民的議論が始まっている国も出てきています。
2019年、難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う京都の女性が、薬物を投与され亡くなりました。関わったのは、2人の医師。嘱託殺人の疑いで逮捕され、現在裁判が行われています。
この女性は、スイスでの安楽死を望んでいましたが、すでに身体の自由がきかず渡航できなくなっていました。
同じく体が不自由になっていたある女性は、娘につき添われてスイスへ。渡航の目的は安楽死。2人は、“最期の瞬間”までの数日間をスイスで過ごし、母はそこで帰らぬ人に。
なぜ、そこまでして“死”を求めるのでしょうか… その答えに近づくため、スイスでの安楽死を望む人々を取材します。
丁寧な英語で「なぜ自分が死にたいのか」を黙々と書いている矢島さん(仮名)も難病に苦しんでいました。
安楽死の希望を切々としたためた文書を投函し、ポストに「よろしく」と語りかけます。日課の山登りは、無心になって病気を忘れるため。離れて暮らすパートナーとは、安楽死の話題を境に疎遠になってしまったといいます。
東京都在住の良子さん(60代)もまた、スイスを目指していました。
難病に苦しみ続け、安楽死を望んでいます。「もう十分に人生を楽しんだ。早く痛みから解放されたい」。彼女の言葉には、迷いがなく、着々と準備をしているように感じられました。
そして、ある日を境に良子さんと連絡がとれなくなります。その後、彼女から1通の手紙が届きます。消印は、スイス。
スイスでは、国内の死亡者の実に約2%が安楽死です。安楽死をサポートする団体を訪れると、そこでは毎日、当たり前のように安楽死が行われていました。
穏やかな笑顔で死を迎える人々。夫や息子、そして孫に見守られて亡くなる80代の末期がんの老婦人、安楽死が社会的にまだ認められていないドイツから娘を伴ってやってきた、難病を患う60代の女性…。
番組は、彼女たちの死に立ち会います。
安楽死を望む人に、スイスは「理想郷」のように見えるかもしれませんが、しかし、誰もが“安楽死の権利”を手に入れられるわけではありません。スイスの法律により厳正に求められる必要書類は、日本人が手に入れるのは非常に困難です。
そんななか、矢島さんから「“安楽死をする権利”を手に入れた」と連絡が入ります。会ってみると「『死ねる』と思えるだけで“安心”して生きられるんです…」と、晴れやかな表情。
“死”という“お守り”を手に、矢島さんは病気と闘い前向きに生きる決意をしていました。
「死」に救いを求める人とその家族の、静かな葛藤を綴ります。
語りを、俳優の余貴美子さんが担当します。
第32回FNSドキュメンタリー大賞 エントリー作品『最期を選ぶ 〜安楽死のない国で 私たちは〜』(関東ローカル)は、10月7日(土)25時45分より、フジテレビで放送されます。
<余貴美子 コメント>
――収録はいかがでしたか?
安楽死を求める人たちを見ていて、みんな「死ぬも生きるも死に物狂い」なんだという不思議な印象を持ちました。…人間が生きるとは、どういうことなんだろう?と感じています。
私自身、70歳近くなって「死」というものを、本当にいつも考えます。コロナ渦でも本当にたくさんの方が目の前で亡くなるのを見て、「誰もが経験したことのない死をどうやって迎えるのか?」というのを考えざるを得ない時代ですよね。
スイスに安楽死をサポートしてくれる団体があるんだと知りましたし、より深く「死」を考えるきっかけになったなと思います。
安楽死を願うスイス人の女性たちは、よく最期を撮らせてくださったなと思いました。でも、「自分の最期の姿は誇らしい」という気持ちだからこそ撮らせてくれたんでしょうね。
――余さん自身は、自分の死の決め方をどう考えますか?
「自分のことは自分で決めたい」って思いますよ。やっぱり…苦しみたくないかな。
親がもし望んだら…でも、安楽死を選んだスイス人の女性は、反対しそうな長男には知らせてないじゃないですか。長男はどう思うか、とか考えたら苦しいですよね。
もし90歳を過ぎている私の母が病気で苦しかったら、スイスのこの方法もあるよって教えてあげるかもしれないです。身内だったらどんなことがあっても生きていてほしいって思うんですけど、人の幸せとか尊厳ってそれぞれですから。どうやってそこを見極めてあげるかというのも難しいですね。
寄り添うとか、人のことを思いをはせるとか、安楽死を考えるときに大切なんだなと思いました。
<山本将寛(ディレクター)コメント>
「安楽死ができなかったら“死”を考える」。スイスで最期を遂げようとする女性が、私に放った言葉です。まだまだ死が身近ではない20代の私は、ハッとさせられました。
“死”は同質でないのだと。その“異質な死”を遂げようとする人々は、なぜ自然死を望まないのだろうと思っていたことが、今では恥かしくなるほどに、彼らはもがき苦しみながら自分の死と向き合っていました。
旅立ちを祝いながらの死や、生きたい気持ちとの葛藤に揺れながらの死、孤独な死。さまざまな死を目の当たりにして、誰にでも訪れる人生の幕引きについて、我々はなぜこんなにも話さないのだろうかと、いまだ釈然としません。
自分の尊厳のために“最期を選ぼう”とする人々を通して、「最期を選ぶ」という選択肢の存在につ
いて考え、議論するきっかけになることを心から願ってやみません。
そして自分が、自分の家族や友人がそうなったら…自分ごととして見てもらえれば幸いです。
<番組概要>
第32回FNSドキュメンタリー大賞 エントリー作品『最期を選ぶ 〜安楽死のない国で 私たちは〜』
放送日時:10月7日(土)25時45分~(関東ローカル)
語り:余貴美子
構成:石井成和
編集:宮島亜紀
音響効果:石﨑野乃
AD:益田果穂 (フジテレビ情報制作センター)
協力プロデューサー:西村朗(フジテレビ情報制作局)
プロデューサー:濱潤(フジテレビ情報制作センター)
ディレクター・撮影:山本将寛(フジテレビ情報制作センター)
制作著作:フジテレビジョン
(敬称略)
公式HP:https://www.fujitv.co.jp/fnsaward/
“ドキュ大”を読む!FNNプライムオンライン:https://www.fnn.jp/subcategory/fnsaward
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