視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。

2月23日(火)放送回では、小説家・新川帆立に密着。“新人ミステリー作家の登竜門 ” 「このミステリーがすごい!」で、昨年10月、大賞に選ばれたのが、彼女のデビュー作「元彼の遺言状」。「自分を殺した犯人に遺産を譲る」という奇抜な遺言状や、主人公である女性弁護士のキャラクターが評価され、満場一致で選ばれた。

東大法学部を卒業し、24歳で司法試験に合格した新川は、弁護士として、企業間の金融取引を担当してきた。さらに、弁護士のかたわらで、プロ雀士として活動していたことも。そんな異色の経歴を持つ、彼女のセブンルールとは。

ルール①:小説はベッドで横になって書く

新川帆立の弁護士としての仕事は、顧客企業のやりたいことが法的に可能か否かを確認するということがメイン。契約書などの作成を行なっているという。コロナの影響で、仕事はもっぱら在宅だが、テレワークでも彼女は毎日、身支度を整える。

午後4時、弁護士としての仕事を終えた彼女は、出版社を訪れ、デビュー作の宣伝のために直筆のサインを300冊に入れていく。自身の執筆活動を、彼女はこう表現する。「海で泳ぐみたいなもので。入った以上、泳がないと死ぬから、泳ぐしかない」。

出版社からの帰路、「小説のことをやっていると元気が出る」と話す彼女。「普段、弁護士の仕事して疲れたなと思っても、小説に関する仕事とか、小説を書いているうちに、どんどん元気になる感じです」と語った。

帰宅し、「小説の執筆にとりかかる」と、彼女が向かった先はベッド。「リラックスしているほうが頭は働くので、この状態が私にとってベストです」という。

「机に座るのがストレスなので、そこでハードルが1個ある。試験勉強とかするときも、だいたいこういう感じで。書いて、このまま寝てまた起きて書けるので便利なんです」と笑った。

ルール②:ストーリーは紙に付箋を貼って作る

アメリカで生まれ、生後半年で宮崎に移り住んだ彼女。小中学校では、自他ともに認める“勉強の虫”。「“宇宙人”的なポジションで、いまいち集団生活になじめてないなと思っていて。『田舎だからいけないのかな』とか思って」と振り返る。

宮崎を飛び出したい一心で猛勉強し、父の単身赴任先である茨城県の進学校に入学した。高校では囲碁部に入部すると、全国大会に出場する腕前になるほど熱中した。その後、東大へ入学し、24歳で司法試験に合格。 

大学時代は麻雀を打つことも多かった。「『彼氏に教えてもらったの?』みたいな感じでくるおじさんがいて、毎回ちょっとイラッとしてたので。『いやいや、こっち結構真剣にやってるんだけどな』みたいな」 と話す彼女だが、その真剣さを示すため、プロ雀士のライセンスも取得したという。 

多才な彼女が、小説を書くときに必ず使っているのが「付箋」。入れたい場面を付箋に書き、それを紙に貼り付けてストーリーを構成していく。

この方法は、弁護士になる過程で身についたものだという。

刑事裁判では、人の供述や記録をまとめた膨大な資料を読み、そこから事実や証拠を抽出して、被告の有罪・無罪を立証する。彼女は「それとは逆のことをすればいいんだ」と、付箋に書いた重要な情報からストーリーを組み立てる手法を取るようになった。

間違いがあってはならない裁判の現場。そこでの経験が、彼女の作品に活かされている。

ルール③:家事は7割 夫に任せる

普段、ガチャピンのYouTubeチャンネルを見て息抜きしているという彼女。「ガチャピンのYouTubeの作風と私、共鳴していて。私の小説の文体も、エグいこと書いても軽い感じになってしまう文体なので、悩んでいた時期もあったんですけど。ガチャピンを見ていると、『こういう軽いままで良いのかな』っていう気になってくるんです」と話す。 

そんな彼女が同居しているのは、彼女いわく、ムックに似ているという夫。東大ロースクールの同級生で、同じく弁護士になった夫だが、彼女には執筆に集中してほしいと、食材の買い出しから料理に洗い物まで、家事の7割ほどを担当している。 

「すごい才能があるから。作家として新しい世界を作るって、普通の人ができない最たるものだから。そういうことをやれる人が『やりたい』って言うなら、ぜひ応援したい」という献身的な夫の支えもあり、「このミステリーがすごい!」大賞受賞を果たした。

その賞金1200万円については、「“内助の功”なので、賞金の半分は夫のもの」と、半分は夫にあげる予定だという。

ルール④:麻雀中はひたすら耐える

弁護士の収入も本の印税も折半する新川夫妻。2人は現在、籍は入れておらず、事実婚の関係を続けている。

「家の中では“森くん”とかって呼んでいます。夫婦の名前一緒になっちゃったら、私も森さんにならなきゃいけないじゃないですか。それが、私の名前の字面的にイヤで。『自分だったら小説の主人公にこの名前はつけない』って思うので、自分がそういう名前に変えることが、自分の人生の主人公から降りたような気分になる」と語る。

高校生の頃に読んだ夏目漱石の「吾輩は猫である」をきっかけに、作家を目指し始めた彼女。しかし、「経済的に食べていけないと夢も追えない」と、選んだ職業は弁護士だった。 

弁護士のかたわらで8作を書き上げたが、新人賞の一次選考にすら通らない日々が続いた。東大から司法試験に合格し、プロ雀士にもなれた。しかし、「まずそもそも作家デビューに何年かかるか分からない」という彼女の予想通り、夢の小説家デビューは遠かった。 

ある日、彼女がリモートで始めたのは、弁護士仲間との麻雀。プロ雀士として活動していた彼女のスタイルについて、仲間は「固め」「守備型」「諦めない感じ」と分析する。

自らも「(打ち方は)あんまり派手じゃない」といい、「麻雀はどちらかというと、ストレスが溜まる」と話す彼女。麻雀には、「我慢をすること」が大事な側面があるのだという。

「諦めないというか、折れない心が大事なので。 折れない、ブレない、メンタルで打ち続ける。それは結構小説も一緒で。新人賞の投稿とかを続けていて、結果がついてこなくても応募し続けるっていうのは、麻雀で鍛えられたメンタルかなって思います」と話した。

ルール⑤:週に5冊 自己啓発本を読む

彼女には、デビュー前からおよそ2年間通っている小説教室がある。篠田節子や宮部みゆきなど、名だたる作家を輩出した歴史ある講座だ。

講師を務める、手塚治虫や西村京太郎を担当した元編集者・山口十八良(やまぐち・とうはちろう)さんは、彼女を「センスのある方」と称する。「悲哀みたいなものを、計算をしないで書けたというのは、センスの良さだと思うんですよ」という賞賛の言葉を受け、彼女は「こんなに褒めてもらえることもないので、褒められた内容をメモしました」と笑った。

小説を書くための努力を惜しまない彼女は、週に5冊の自己啓発本を読み、インプットを増やすことを心がけている。

「自分と同じ考えを持ってる人の本ばっかり読んでても、居心地が良すぎて飽きちゃいますよね」と話し、「違う思考パターンをトレースできる。自分の中にないものは、面白い」と、あえて、自分にはない発想が詰まった自己啓発本を選んでいる。

ルール⑥:木曜日はかわいい服を着る

デビュー作の発売日前日、着物姿の彼女は、夫とともに神田明神を訪れた。人生で大切なことがあると、いつも訪れるという。祈願したのは、デビュー作「元彼の遺言状」のヒット。 

この日の着物のテーマは、最近気に入ってる“和洋折衷”。マスクと色を合わせた赤色の帯に、帯締めの代わりのベルトを締める。彼女がこうして着飾ったのには、毎週木曜の“かわいいDAY”の存在がある。この日は、夫から、ちょっと多めに「かわいい」と言ってもらえる日なのだという。 

月・火・水と頑張った彼女に、夫からの褒め言葉。「褒めそやされると週末まで頑張れる」と話す彼女に対し、「妻はあまり夫のことを褒めてくれない」と、夫は冗談っぽく笑った。

ルール⑦:すべてのエネルギーを小説に注ぐ

デビュー作の発売当日、いても立ってもいられず、書店にやってきた。著書が平積みされているのを目にし、彼女が抱いた感想は、「自分が目標にしていた先輩たちと同じ棚に並んでいるので、『うれしい』とかよりも、『厳しい世界に足を踏み入れた』みたいな」だという。

その後も本の宣伝のため、数多くの店に足を運ぶ。中には、あらすじ紹介などのポップとともに大規模にコーナーを展開する書店も。担当した書店員は、「いち読者として読んで、それをじゃあどうやって読者に伝えられるかってところで、こういった思いきった展開になった」と説明。

彼女は、「内容を読んで、理解して、愛してくださっている結果の展開なので、本当にありがたいです。うれしいというか、ありがたい」と喜びをあらわにし、その後もしばらく、売り場から離れなかった。

そんな彼女は、これから専業作家として、執筆活動に専念することを決めた。

東大受験、雀士、弁護士。これまで興味のあることには全力をもって取り組んできた。長年の夢にすべてを注ぐ決心をした彼女は、こう意気込んだ。「今の状態だと、強制的にインプットしないと圧倒的に足りないので。自分が知っている世界のことしか書けていないですけど、それをちょっとずつ広げていきたい」。

次回作は、自らの世界を広げた専業作家・新川帆立として、初めての作品になる。

「小説のことって、やっていて全然苦痛じゃない。自分が一番好きな作業なので。24時間365日、自分の好きなことだけしていればいいってことですよね。それがすごいハッピーだなと思って、幸せな身分になったなと思って。楽しみだし、うれしい」と、彼女は期待感を滲ませた。

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次回、3月2日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、演歌歌手・丘みどりに密着。伸びのある歌声と、歌の世界観を情感たっぷりに演じる表現力でファンを魅了し、演歌界の次世代を担うホープと期待される、彼女の7つのルールとは。