宿題以外の学習をしない「家庭学習0分層」への学習機会の提供が課題
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市、代表取締役社長:岩瀬大輔)の社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所と国立大学法人東京大学社会科学研究所(所在地:東京都文京区、所長:宇野重規)は、2014年に「子どもの生活と学び」共同研究プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは、同一の親子(小学1年生から高校3年生、約2万組)を対象に2015年以降追跡して調査を実施することで、子どもの学びの変化を明らかにしてきました。
今回は、子どもの学校外の学習時間に着目し、分析を行いました。この11年で子どもの学ぶ意欲や目的意識、工夫しながら学ぶ姿勢が弱まる中、学校外の学習時間は約2割減少していました。とくに、「学校の宿題」と「宿題以外の家庭学習」の時間が減少しています。このうち、宿題以外の家庭学習の時間の長さは、成績との関連が強いことがわかりました。また、家庭の社会経済的地位(SES)※が低いほど、宿題以外の家庭学習に費やす時間が短い傾向がみられました。
さらにこの11年で、成績やSES別にみたときの宿題以外の家庭学習時間の差が広がるとともに、宿題以外の家庭学習をしない子ども(家庭学習0分層)の割合が10ポイント前後増加し、4~5割となりました。宿題以外の家庭学習をまったくしない家庭学習0分層の子どもは、学ぶ意欲や目的意識が低く、学習の自己調整を行わない傾向がみられます。子どもがおかれた状況によらず、放課後等の学習機会を確保することで、子どもが自ら学ぶ経験を通して、学ぶ意欲や目的意識を高め、学びを調整する力を育むことが求められます。
本プロジェクトでは、子どもの実態を継続的に捉えることによって、子どもの学びに関する課題提起や提案を行ってまいります。
調査結果サマリー
1.学校外の学習時間の変化―この11年で1日あたりの学校外の学習時間は約2割減少
●1日あたりの学校外の学習時間(宿題+宿題以外の家庭学習+学習塾)は、この11年で高校生が22分、中学生が19分、小4~6生は17分、小1~3生は9分減少した。どの学校段階も約2割減少した。【図1-1】
●内訳をみると、どの学校段階でも「宿題」時間の減少が大きく、次いで宿題以外の「家庭学習」が減った。【図1-2】
2.学習意識の変化―この11年で「勉強が好き」が減少し、「何のために勉強しているのかわからない」が増加
●「勉強が好き」と回答する割合が、とくに小学生で減少している。【図2-1】
●「何のために勉強しているのかわからない」と回答する割合が、いずれの学校段階でも増加している。【図2-2】
●「勉強のやり方を工夫する」といった学習の自己調整ができる子どもが、小中学生で減少している。【図2-3】
3.成績上位層は下位層に比べて宿題以外の家庭学習時間が長く、経年では上位層と中・下位層との差が拡大
●成績上位層は下位層に比べて学校外の学習時間が長く、宿題以外の家庭学習時間の差が大きい。【図3-1】
●この11年で成績中・下位層の宿題以外の学習時間が減少し、成績上位層との差が拡大している。【図3-2】
4.社会経済的地位(SES)※により宿題以外の家庭学習時間に大きな差があり、経年ではSESによる差が拡大
●SES別に学校外の学習時間の違いをみると、宿題以外の家庭学習時間に大きな差がみられる。【図4-1】
●この11年で、SESが低いL層の家庭学習時間が減少し、SESが高いH層との差が拡大している。【図4-2】
5.この11年で宿題以外の家庭学習をしない子ども(家庭学習0分層)が10ポイント前後増加し4~5割に
●宿題以外の学習をしない家庭学習0分層は、この11年で10ポイント前後増加し4~5割となった。【図5-1】
●宿題以外の学習をしない家庭学習0分層は、成績下位層ほど、また、SESが低い層ほど多く出現している。さらに、勉強の好き嫌いや学ぶ目的が明確かどうか、学習の自己調整をするかどうかと関連している。【図5-2】
※社会経済的地位(SES: Socio-Economic Status)は、家庭の社会的・経済的・文化的な豊かさを表す指標。本分析では保護者の学歴・職業・世帯年収より算出した指標を用いている。
【調査結果詳細】
1.学校外の学習時間の変化―この11年で1日あたりの学校外の学習時間は約2割減少●1日あたりの学校外の学習時間(宿題+宿題以外の家庭学習+学習塾)は、この11年で高校生が22分、中学生が19分、小4~6生は17分、小1~3生は9分減少した。どの学校段階も約2割減少した。【図1-1】
●内訳をみると、どの学校段階でも「宿題」時間の減少が大きく、次いで宿題以外の「家庭学習」が減った。【図1-2】
◆図1-1 学校外の学習時間(宿題+宿題以外の家庭学習+学習塾の合計)

◆図1-2 学校外の学習時間(学校段階別)

【注】(図1-1、図1-2共通)※小1~3生は保護者が回答、小4生以上は子ども自身が回答。※「宿題」は学校の宿題をする時間、「家庭学習」は学校の宿題以外の勉強をする時間を示し、「しない」を「0分」、「4時間」を「240分」、「4時間より多い」を「300分」のように置き換えて算出した。また、「学習塾」の時間は、「通っていない」と回答した子どもを0分、「通っている」と回答した子どものうち「1回にどれくらいの時間、勉強していますか」という質問に対して、「30分」を30分、「1時間」を60分、「4時間」を240分、「4時間より多い」を270分のように置き換え、週あたりの通塾回数をかけあわせて7で割って算出した。
2.学習意識の変化―この11年で「勉強が好き」が減少し、「何のために勉強しているのかわからない」が増加
●「勉強が好き」と回答する割合が、とくに小学生で減少している。【図2-1】
●「何のために勉強しているのかわからない」と回答する割合が、いずれの学校段階でも増加している。【図2-2】
●「勉強のやり方を工夫する」といった学習の自己調整ができる子どもが、小中学生で減少している。【図2-3】
◆図2-1 勉強が好きか ◆図2-2 勉強する目的 ※逆転項目

※「勉強が好き」は「とても好き」と「まあ好き」の合計(%)。「何のために勉強しているのかわからない」は「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計(%)。※いずれの項目も、小1~3生にはたずねていない。また、「勉強する目的」は、2016年、2019年、2025年でのみしかたずねていない。
◆図2-3 勉強のやり方の工夫(学習の自己調整)

※「よくする」と「ときどきする」の合計(%)。※小1~3生にはたずねていない。また、2015年、2016年ではたずねていない。
3.成績上位層は下位層に比べて宿題以外の家庭学習時間が長く、経年では上位層と中・下位層との差が拡大
●成績上位層は下位層に比べて学校外の学習時間が長く、宿題以外の家庭学習時間の差が大きい。【図3-1】
●この11年で成績中・下位層の宿題以外の学習時間が減少し、成績上位層との差が拡大している。【図3-2】
◆図3-1 学校外の学習時間(学校段階別/成績別、2025年データ)

※小1~3生は保護者が回答、小4生以上は子ども自身が回答。データは2025年調査のもの。※「宿題」は学校の宿題をする時間、「家庭学習」は学校の宿題以外の勉強をする時間を示し、「しない」を「0分」、「4時間」を「240分」、「4時間より多い」を「300分」のように置き換えて算出した。また、「学習塾」の時間は、「通っていない」と回答した子どもを0分、「通っている」と回答した子どものうち「1回にどれくらいの時間、勉強していますか」という質問に対して、「30分」を30分、「1時間」を60分、「4時間」を240分、「4時間より多い」を270分のように置き換え、週あたりの通塾回数をかけあわせて7で割って算出した。※時間の合計は小数点以下の合計によりずれることがある。※成績層は、小1~3生は国語、算数の2教科、小4生は国語、算数、理科、社会の4教科、小5生以上は国語、算数・数学、理科、社会、英語の5教科の成績(自己評価)を合算し、「上位層」「中位層」「下位層」がそれぞれ1/3ずつになるようにグループ分けした。図では中位層を省略した。
◆図3-2 宿題以外の家庭学習時間の変化(学校段階別/成績別)

※小1~3生は保護者が回答、小4生以上は子ども自身が回答。※時間の計算方法や成績層の区分は、図3-1と同様。
4.社会経済的地位(SES)により宿題以外の家庭学習時間に大きな差があり、経年ではSESによる差が拡大
●SES別に学校外の学習時間の違いをみると、宿題以外の家庭学習の時間に大きな差がみられる。【図4-1】
●この11年で、SESが低いL層の家庭学習時間が減少し、SESが高いH層との差が拡大している。【図4-2】
◆図4-1 学校外の学習時間(学校段階別/SES別、2025年データ)

※小1~3生は保護者が回答、小4生以上は子ども自身が回答。データは2025年調査のもの。※「宿題」は学校の宿題をする時間、「家庭学習」は学校の宿題以外の勉強をする時間を示し、「しない」を「0分」、「4時間」を「240分」、「4時間より多い」を「300分」のように置き換えて算出した。また、「学習塾」の時間は、「通っていない」と回答した子どもを0分、「通っている」と回答した子どものうち「1回にどれくらいの時間、勉強していますか」という質問に対して、「30分」を30分、「1時間」を60分、「4時間」を240分、「4時間より多い」を270分のように置き換え、週あたりの通塾回数をかけあわせて7で割って算出した。※時間の合計は小数点以下の合計によりずれることがある。※SESは、保護者の学歴・職業・世帯年収をもとに各層が25%ずつになるように、L層(Lowest層)、LM層(Lower Middle層)、UM層(Upper Middle層)、H層(Highest層)に分類した。図ではLM層、UM層を省略した。SESにかかわる質問は保護者が回答。
◆図4-2 宿題以外の家庭学習時間の変化(学校段階別/SES別)

※小1~3生は保護者が回答、小4生以上は子ども自身が回答。※時間の計算方法やSESの区分は、図4-1と同様。
5.この11年で宿題以外の家庭学習をしない子ども(家庭学習0分層)が10ポイント前後増加し4~5割に
●宿題以外の学習をしない家庭学習0分層は、この11年で10ポイント前後増加し4~5割となった。【図5-1】
●宿題以外の学習をしない家庭学習0分層は、成績下位層ほど、また、SESが低い層ほど多く出現している。さらに、勉強の好き嫌いや学ぶ目的が明確かどうか、学習の自己調整をするかどうかと関連している。【図5-2】
◆図5-1 宿題以外の学習をしない子ども(家庭学習0分層)の出現割合の変化(学校段階別)

◆図5-2 宿題以外の学習をしない子ども(家庭学習0分層)の出現割合(2025年、小4~6生データ)

※数値は、宿題以外の家庭学習時間をたずねる質問で「しない」と答えた子どもの割合(%)。2025年の小4~6生のデータを図示した。※成績層は、小1~3生は国語、算数の2教科、小4生は国語、算数、理科、社会の4教科、小5生以上は国語、算数・数学、理科、社会、英語の5教科の成績(自己評価)を合算し、「上位層」「中位層」「下位層」がそれぞれ1/3ずつになるようにグループ分けした。また、SESは、保護者の学歴・職業・世帯年収をもとに各層が25%ずつになるように、L層(Lowest層)、LM層(Lower Middle層)、UM層(Upper Middle層)、H層(Highest層)に分類した。※「勉強が好きかどうか」は、勉強が好きかどうかをたずねる質問で、「まったく好きではない」「あまり好きではない」と回答した者を「嫌い」、「とても好き」「まあ好き」と回答した者を「好き」と表記した。※「学習目的がわかるかどうか」は、「何のために勉強しているのかわからない」に「とてもあてはまる」「まああてはまる」と回答した者を「わからない」、「まったくあてはまらない」「あまりあてはまらない」と回答した者を「わかる」と表記した。※「自己調整をするかどうか」は、「自分に合った学習のやり方を工夫する」に「まったくしない」「あまりしない」と回答した者を「しない」、「よくする」「ときどきする」と回答した者を「する」と表記した。
解説
自ら学ぶ子どもを育むために―11年にわたる追跡調査から学びへの向き合い方の変化―学びに対する興味・関心や目的意識の弱まり
今回の分析では、子どもの学びへの向き合い方に、いくつかの重要な変化がみられました。まず、子どもの学校外の学習時間は、この11年で約2割減少していました。学校段階を問わず、とくに「宿題」と、宿題以外の「家庭学習」の時間の減少幅が大きい点がポイントです。
学校外の学習時間の減少と合わせて、この11年で、学ぶことへの意欲を表す「勉強が好き」という子どもが減少し、「何のために勉強しているのかわからない」といった学ぶ目的が見出せない悩みがある子どもが増加していることから、学習に対する肯定的な意識や意味づけが弱まっている可能性が示唆されます。また、「自分に合った勉強のやり方を工夫する」といった学習の自己調整ができる子どもは、小中学生で9年前に比べて減少がみられます。近年、子どもが自ら学ぶことを通して、自分なりに工夫したり試行錯誤したりする機会が減っているようです。
これらの結果を踏まえると、子どもの学校外の学習時間の減少の背景には、この11年で子どもの学びに対する興味・関心や目的意識の弱まりや、自分なりの工夫や試行錯誤をしながら学ぶ機会の減少などの、学びへの向き合い方の変化があると考えられます。
4~5割を占める「家庭学習0分層」の課題
この11年で、宿題以外の家庭学習をしない子ども(家庭学習0分層)が、どの学校段階でも10ポイント前後増加し、4~5割を占めるようになりました。家庭学習0分層は一部の子どもに限られた存在ではなく、学校外の学びのあり方を考える上で無視できない層となっています。
家庭学習0分層は、成績が低い子どもほど、また、家庭の社会経済的地位(SES)が低い層ほど多く出現しています。成績やSES別に学校外の学習時間をみると、とくに宿題以外の家庭学習時間に大きく表れており、経年ではその差が拡大している傾向がみられます。一方で、経年で減少している宿題時間には、成績やSESごとの大きな差はみられません。
家庭学習0分層の子どもには、学ぶ意欲や目的意識が低い傾向がみられ、学習の自己調整を行っていない割合も高くなっています。与えられることが多い宿題とは異なり、家庭学習は、子ども自身が何をどのように学ぶかを選びながら取り組む時間です。宿題以外の家庭学習をまったく行わない子どもが増えていることは、子どもたちが自ら学ぶ経験を通して、意欲や目的意識、学びを調整する力を育む機会が十分に得られていない可能性を示しています。
学校や家庭への示唆―自ら学ぶ経験を支える学習環境の重要性
子どもの学ぶ意欲や目的意識、自ら調整しながら学ぶ姿勢は、子どもの日々の学習経験の中で育まれていくものと考えられます。重要なことは、子どもが自ら学習に関与し、自ら進めていく経験に目を向けることです。学校の授業が子どもにとって楽しいものであることや、信頼できる周囲のかかわりや学ぶ環境づくりが、学びの第一歩となります。近年、急速に発達するデジタルやAI技術を適切に生かすことで、学びの機会が広がる可能性もあります。子どもがおかれた状況によらず、放課後等の学習機会を確保することで、子どもが自ら学ぶことを経験しながら、学ぶ意欲や目的意識を育んでいくことが求められています。
ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所による本共同研究プロジェクトでは、今後もパネル調査の特徴を生かしながら、子どもの学びの実態を継続的に捉えることで、子ども一人ひとりが学びに向かうための課題や解決策を社会に広く発信し、多くの方とともに、これからの学びのあり方について考えてまいります。
ベネッセ教育総合研究所のホームページから、調査結果をまとめたレポートをダウンロードできます。
https://benesse.jp/berd/shotouchutou/research/detail_260331-1.html

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