7月19日、一般社団法人 日本音楽事業者協会(以下、音事協)の違法薬物対策プロジェクト「~違法薬物撲滅動画~絶対零度のオアシス」の完成披露記者発表が行われ、脚本の石井光太さん、監督の田中慎太郎さん、監修の鈴木賢司さんが出席しました。
音事協は、2009年に、違法薬物対策本部を設置。社会に大きな衝撃を与えた一部アーティストによる違法薬物問題を真摯に受け止め、違法薬物問題は芸能界に特化されるものではなく社会全般に及ぶ問題と捉えての措置です。
今回、音事協が制作した動画は、全3話(1「夜の街の飢餓」、2「逮捕の連鎖」、3「なれの果て」)からなる「違法薬物撲滅啓発」を目的とした作品。
違法薬物は、人生を台無しにするどころか家族崩壊、命まで脅かす、いかに危険なものであるかが描かれます。
記者発表には、エピソード1~3までの主人公をそれぞれ務めた、佐久間あゆみさん、鈴原ゆりあさん、堀源起さん、白上心望さん、田中柊羽さんも登場しました。
脚本の石井光太が語る「薬物は自業自得で済む問題ではない」
本作の監修を務めた元厚生労働省 東北厚生局 麻薬取締部 部長の鈴木さんは、「今回の違法薬物撲滅動画は、昨今の薬物乱用の実態が描写されている作品だと思います。例年、1年間で違法薬物で検挙される人数は、1万3千人ほどいます。単純に、1時間に1.5人が検挙されているという状況です」。
「昨今は、大麻汚染の低年齢以下が危惧されています。一生涯このような違法薬物に関わらない方がいいのですが、この作品では、いま日本で実際に起こっている違法薬物問題をとらえていて、薬物問題はひとごとではないと感じていただければ」と紹介しました。
また、「違法薬物に対して警鐘を鳴らす本運動は、芸能関係者の方のみならず、広く一般の方への大きな影響を与えて、薬物乱用啓発活動になると感じています」と語りました。
脚本の石井さんは、「いろいろな薬物の啓発活動の動画などでは、最後に更生をしてハッピーエンドを迎えることが多いのですが、今回の作品では、バッドエンドになります。それは、自分がノンフィクション作家として、さまざまな現場を取材してきたときに、ハッピーエンドというのを見たことがない。極端ではなく、行きつく先は、墓場か精神病院しかないんです」とコメント。
本作の制作で留意したのは、「フィクションではあるけれど、個々の小さな物語はノンフィクションなんです。僕が取材をし、聞いて、見て、知ったことを一つの物語の中に散りばめました」。
「違法薬物は、本人だけの問題ではないんです。取材をしていて思うのが、薬物をやった人だけではなく、家族、友達、親族にものすごく迷惑がかかる。当たり前のように人を狂わせるんです。薬物は自業自得で済む問題ではない。『ありとあらゆるものを壊してしまうんだ』ということをこの動画で知っていただきたいです」と呼びかけました。
田中監督は、「僕が現在30歳なのですが、これから芸能界に限らず、僕ら世代がこれからの日本を作っていくと思います。違法薬物は、これからの若者が努力をしていく中で、絶対に邪魔になってくるものだと思います。それを撲滅できる作品に携わらせていただき、とてもうれしいです」と語りました。
一部合法な医療用大麻でも手を出したらダメ
鈴木さんは違法薬物について、「もし相手がタバコを吸っていたら、自分の愛情でやめさせられますか?ほぼ無理ですね。タバコすらやめられない人が、麻薬や覚せい剤をやってしまったら、もう無理です。当然、治療施設がありますが、かなりの気持ちの決断がなければ、やめられない。だからこそ、1回でもやったらダメなんです」。
「大麻もソフトドラッグと言われていて、医療用の大麻なら合法な国がありますが、手を出さない方がいいです。大麻も中毒になって、大麻精神病になり、精神的におかしくなってしまう。石井先生のストーリーは、3部作になっていますが、最後のエピソード3は、本当に“なれの果て”なんです。お骨すら、灰になってつかめない。骨の髄までボロボロにしてしまうのが、麻薬や覚せい剤なんです。それをこの作品を通して、実感してもらえれば」と強調しました。
最後に、「(違法薬物に手を出してしまい)一人で閉じこもってしまうパターンも多いんです。できれば、警察などの相談窓口がありますので、ぜひ相談していただければ。そうしないと、ドロドロと沼にハマってしまうので」と呼びかけました。
動画は、本日20時から音事協の公式YouTubeで配信されます。