今年のヤングシナリオ大賞の、大賞と佳作の受賞作が決まりました。
「第34回ヤングシナリオ大賞」受賞会見が、11月29日(火)にフジテレビ本社にて行われました。
「ヤングシナリオ大賞」は、坂元裕二さん、野島伸司さん、野木亜紀子さんなど、大勢の人気脚本家を輩出してきたコンクール。昨年の大賞受賞者・生方美久さんは、現在放送中の木曜劇場『silent』の脚本を手掛けています。
今回、応募総数1,535編の応募の中から大賞に選ばれたのは、市東さやか(しとう・さやか)さんが書いた「瑠璃も玻璃も照らせば光る」。
会見冒頭、審査員長の中野利幸(フジテレビ映画・ドラマ制作部)は「フジテレビらしい、キラキラしたドラマを選出した」と、あいさつしました。
今を生きる若者をリアルに描いた「瑠璃も玻璃も照らせば光る」
市東さんは「選考が進んでいくにつれ、途中から怖くなってきて『誰か止めてくれないかな』と思うほどでした。でも、いざ受賞の連絡をいただいたら、腹を括(くく)れて、『絶対にやってやるぞ』と思うことができました」と、コメント。
「瑠璃も玻璃も照らせば光る」は、うつ病の母と、脳梗塞で倒れた父の世話をする女子高生が、演劇部の照明係の活動をとおして、葛藤を抱えながらも青春を過ごす物語。
選考委員からは「希望や夢を抱きづらい時代に、希望の光を与えてくれるような作品で、読んだあとに清々しい気持ちになれた」と評価されました。
兵庫県出身の市東さんは、もともと看護師として働いていましたが、現在は神戸市看護大学の大学院に進学。「受賞できなかったら就職するつもりでした。大学院を卒業したら、仕事という“保険”を捨てて、関西から東京にやって来ようと思います」と、意気込みました。
そんな市東さんは、宮藤官九郎さんの作品に憧れて、脚本を書きはじめたそう。脚本は独学で学んだと言い「図書館で、シナリオの書き方についての本を全部借りて読みました」と明かしました。
次回作について聞かれると「私は最近、離婚をしたのですが、それを乗り越えたいと思っているので、離婚の話にしようと思っています」と告白。
そして、自身の作品に出演してほしい俳優を聞かれると、大ファンだという阿部サダヲさんの名前を挙げて「明日も阿部さんの舞台を観に行く予定です。阿部さんは、殺人鬼から市役所の職員まで、どんな役でもできるのが本当にすごい。阿部さんのセリフを書けたらうれしいです」と、笑顔を見せました。
時代を感じさせる恋愛作品「夜が明けても」
本山航大(もとやま・こうだい)さんが書いた「夜が明けても」(佳作)は、性的接触に嫌悪感を持つアセクシュアル(無性愛者)の男女が、お互いの関係性に向き合う恋愛作品。
選考委員からは「大賞候補に挙げる人も多かった。『今』を感じるテーマをうまく恋愛ドラマに仕立てた、作者の力量を感じた」と評価されました。
もともと、地元の佐賀新聞社で記者をしていたという本山さん。「上司から『疑問と好奇心を持て』と教えられたことが、作品づくりの大きな根幹になっています」とコメント。
そして、本作について「“幸せ=結婚”という時代ではないなか、セクシュアルな結婚や出産などを諦めた方々も、かけがえのない人と一緒にいるという選択肢を増やしてもいいのではないか、という疑問から作りました」と語りました。
勢いのあるキャラクターとセリフ「ラストチャンス」
井本智恵子(いもと・ちえこ)さんが書いた「ラストチャンス」(佳作)は、独身・彼氏なしのアラフォー女性が、まさかの妊娠をきっかけに葛藤の日々を送る物語。
審査員からは「即戦力として活躍してくれるであろう、作者のポテンシャルを感じた」と評価されました。
井本さんは「7年前の『ヤングシナリオ大賞』では最終選考に残ったのですが、そのときは落ちてしまって。今作のタイトルは『ラストチャンス』ですが、これからは“ワンチャンス”をつかんでいきたい」と、作品にかけてあいさつ。
井本さんは、もともと編集者として、書籍の編集などをしていたそう。編集者時代は、ホストクラブやキャバクラの取材をしていたこともあり「夜の世界のお話も書きたい」と、意欲を見せました。
当たり障りない物語ではない「父を還す」
伊藤優(いとう・ゆう)さんが書いた「父を還す」(佳作)は、過去に、父から虐待ともいえる仕打ちを受けてトラウマを抱える女性の物語。
審査員からは「突拍子もない冒頭からクライマックスへ至るまでの熱量が高い作品」と評価されました。
伊藤さんは、2年ほど前まで、舞台俳優を目指していたといいます。自分で脚本を書いて上演することもあったそうで「俳優より、脚本を書いているほうが楽しいなと思った」と話し、今回の受賞を受けて「覚悟を決めて、やらなあかんな」と、決意を新たにしました。
伊藤さんは、自身の作品に出演してほしい俳優は特にいないものの「魅力的だなと思う俳優さんは、渡辺大知さんとか、吉高由里子さんとか、徳永えりさん。ちょっと艶かしいというか、人間味のある人が好きです」と明かしました。
大賞受賞作「瑠璃も玻璃も照らせば光る」は、12月27日(火)13時45分〜フジテレビ系(全国ネット)にて放送予定です。