最低の最終回で最高！！
何が最低で最高かって、第5話に登場したあの“チンピラ”がまさか、最終回に繋がってるって誰が想像しました？大興奮だった第5話のレビュー（https://www.fujitv-view.jp/article/post-70433/）で、「突然に、ホントになんの脈略もなく突然に、昭和のチンピラに絡まれる」って書いたのに、ちゃんと脈略用意してくるとか、ホントに『パパ恋』クリエイター陣、最高過ぎる。そんなとこわざわざ拾わなくてもいいし、あそこは誰も別に本気で疑問に思ってやいないし、むしろあの脈略ない感じが面白いとすら思ってたのに、ちゃんとストーリーとして繋げてくるとか、その謎の作り込み具合を想像するだけで笑えてくる。
そして最低の頂点に達したのは、開始40分付近に訪れる大スペクタクル！
おっさん多恵子（塚地武雅）のおっさん部分の過去によって、山下家が警察に包囲され（しかも結構な部隊）、チンピラにも追い回され、そのピンチを『パパ恋』オールキャストの活躍によって脱する…という字面で書いててもどうかしてるとしか思えない大スペクタクルのオチが、まさか過ぎて茫然となります。今、一体、何を見ているんだろう…？あれ？これ夢？と戸惑いますが、あ、そうだ、このドラマ『パパ恋』だったってすぐ我に返る…そんな感じで、邪念が一瞬にして吹き飛ぶ、笑うしかない痛快なシーンになっていること間違いなしです。
この超くだらない、最低で最高なシーンこそが『パパ恋』の真骨頂、到達点と言っていいでしょう。それにしても、そのオールキャストが登場して山下家の危機を脱するという筋書きのオチが、“あれ”に辿りつくだなんて、ホントに『パパ恋』クリエイター陣、どうかしてますよ。どうしたらそうなるのよ。凡人には全く理解できない異次元の創造力。
またそのオールキャストパートには、個人的にお気に入りだった宮下コーチ（黒木啓司）が、その一瞬のためだけに登場して、しかも第一声が「レッツパーティータイム！」って言いながらスマッシュを放つっていうわけのわからなさ。もうどうしたらそうなるの。最高にヒド過ぎる。宮下コーチ演じる黒木啓司さんはEXILEの一員でもあるというのに、そんなのお構いなしにあんなクレイジーな役を振る制作陣、そしてそれを快諾し（おそらく）、全力で「レッツパーティータイム！」って言う黒木さん、最高ですね。
黒木さんの個人的思い出は『名前をなくした女神』（11年）の、元人気モデルで今は大きな仕事はなく鬱屈を抱え浮気するっていう結構ヒドイキャラクターなんですけど、それがずっと印象に残ってて忘れられなくて（黒木さんごめんなさい。でもこの役もすごく素敵なんです。是非FODにてご覧ください）、それが時を経て、宮下コーチというこれまたヒドイ（だけど最高）キャラによって更新されるとは…。歌番組で黒木さんが踊ってる時、つい「レッツパーティータイム！」を思い出しちゃって集中できなかったら『パパ恋』のせいだからね！
もちろん今回は最終回なので、大スペクタクルのオチで爆笑してたと思ったら、急にハンドルを切りはじめて、すっごく素敵な感動のラストを迎えます。
僕はハマったドラマほど、これまでの思い出を回想していく、最終回あるあるなシーンに弱いんですけど、『パパ恋』は回想すると必ず「ターミ―ネーター」パロディの全裸おっさん多恵子もセットになってくるから、笑えるんだか感動できるんだか、なんだか複雑な気持ちになります。また、スローの感動的回想に加えて、とある瞬間に超高速プレーバックも挿入されているんですが、それがまたこのドラマらしくて、すごく画期的で、淋しさと爽快感が入り混じる新感覚な回想になっているので必見です。
そして最後、これまで散々ふざけてたはずなのに、多恵子とのお別れのシーンで放たれる“ある秘密の言葉”にはかなりグッときちゃいます。数分前まで全力でふざけてたのに、あんなにもグッとくる一言で締めにかかるとかホント卑怯。だけど、やっぱり全裸のおっさん多恵子が蘇っても来るもんだから、泣けるっていうか、とても爽やかな気分になるんですよね。最後の最後までらしさ満載の最終回でした。
役者さんを好きになるドラマってあると思うんですが、この『パパ恋』はまさにそれ。小澤さんはこれからも『スッキリ』で見かけたら心の中で「パパ！」って呼ぶし、塚地さんを見たら絶対あの全裸ターミネーターを思い出すし、もっかい言うけど黒木さんを歌番組で見たら「レッツパーティータイム！」が重なるし…そんな風に役者さんたちのこれからが全部『パパ恋』につながる、そんなドラマでした。
で、次作（4月11日スタート）が、『隕石家族』…？。予告見たらコメディなのかシリアスなのか、全然想像できない仕上がり。最近の「オトナの土ドラ」、ゾーンに入ってます。なんのゾーンかは不明ですが。
text by 大石 庸平 （テレビ視聴しつ 室長）
