さまざまな世界で活躍しているダンディなおじさまに、自分の人生を語ってもらう「オヤジンセイ~ちょっと真面目に語らせてもらうぜ~」。
年を重ね、酸いも甘いもかみ分けたオトナだからこそ出せる味がある…そんな人生の機微に触れるひと時をお届けします。
今回は、3月12日から公開される映画「ウェディング・ハイ」に出演している俳優、高橋克実さんが登場。俳優としての転機、記憶に残るエピソード、そして娘さんを持つ父親として、“その時”への心がまえなどについて語ってもらいました。
憧れの存在・松田優作を追い求めて…
東京に出てきたことで、自分が子どもの頃に憧れていた俳優の方々と会うことが出来たのですが、そういう“運”だけは昔からあったのかもしれません。
上京1年目に、新宿で映画「蘇る金狼」(1979年)のポスター撮りに遭遇したことがありました。その時、そこに主演の松田優作さんはいらっしゃらなかったのですが、成田三樹夫さん、小池朝雄さんほか7人くらいのキャストの方々が集まっていて。その時はもう、大興奮でしたよ。
この年は優作さんが「蘇る金狼」に加えてドラマ『探偵物語』(日本テレビ系)、映画「処刑遊戯」など、たくさんの作品に出演されていた年でもあるんです。優作さんが下北の焼き鳥屋さんや、渋谷のバーによく来ていると聞けば、会えるかもしれないと思って実際に行ったりしていました。
「処刑遊戯」のパンフレットを買って、優作さんが着ていたのと同じMA-1を着て、もう1回映画を見たり。今思うとちょっとアブない人でしたね(笑)。
『ショムニ』の現場でアドリブがスタッフに大ウケ
俳優としてのターニングポイントは、間違いなくドラマ『ショムニ』(フジテレビ系/1998年)です。それまではドラマが決まっても、1シーンだけの出演ということも多かったですし(笑)、『ショムニ』のシーズン1の時はまだバイトをしていました。いくら1クールのレギュラーが決まっても、それだけではとても食べていけなかったんです。
あの時は、同じ新潟出身の伊藤(俊人)ちゃんとコンビを組んでいろんなことをやりました。行きも帰りも電車が同じでしたし、2人とも時間だけはたくさんありましたから。当時、ロケ場所が幕張にあったのですが、ものすごく朝早くから1シーンだけ撮影したら、もうやることがないので、そのままコンビニで酒を買って幕張で飲んでいたこともありました。
そうして伊藤ちゃんと次の台本を読みながら「部長、○○です!」「おぉ、○○だねぇ」なんていうやりとりを何度も何度も練習して。絶対に放送では使われない下ネタとか盛り込んで、アドリブもどんどん入れたらスタッフさんたちにめちゃくちゃウケて、自然と現場の空気が楽しくなっていったんです。
鈴木雅之監督に「馬鹿野郎だな」なんて笑われたりしながら、なんとか使っていただきました。確かに余計なことでしたけど、それを受け入れる余裕というか、空気みたいなものがあったんですね。うまく言えませんが、「みんなで作っている」感覚がすごくありました。
60歳を迎え「バッテリー残があと2個(笑)」
僕を「オヤジ」と呼んでもいいか、ですか?もう60ですよ。全然オッケーです。
この歳ですから、肉体面の調整もきちんとやっていこうとは思ってますが、追い詰められないとなかなかやらない性格で。正月に一度、目標は立てるんですが、頑張るのはその日だけ(笑)。「よーし、今年は下半身を強化するぞ!」って元旦に決意して、スクワットをし始めるのですが、なかなか3日も続かない。
「ここから人生の折り返しだ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は思わないです(笑)。むしろ僕の場合、「残りはどれくらいだろう」って思ってしまいます。60歳になってそう感じるようになりました。電動自転車のバッテリーの「残」があと2個、みたいな感覚です(笑)。
結婚式は「面白いことの宝庫」
今回出演している映画「ウェディング・ハイ」では、スピーチに命をかける財津という男を演じています。晴れの舞台でもある披露宴で一般の人が何かしゃべるというのは、相当な勇気が必要だと思います。あまり場数も踏んでいないでしょうし、我々ですら舞台の初日ではどれだけ稽古を重ねても緊張しますから。
結婚式というのは、これまで芝居でも、映像でもネタとしてたくさん扱われてきていますし、一度しかないこの瞬間にかける気持ちが強い分、面白いことの宝庫だと思います。何かが起きて当たり前というか、お酒も入ってますしね。
以前、『しあわせドキュメント 結婚までの1週間』(BS朝日)という番組のナレーションを担当していたのですが、あの時に見た、娘を嫁に出したくなくてベロッベロに酔っ払ったお父さんが、花束贈呈のときに立っていられなくて最後は外に連れ出される、という映像は非常に印象的でした。
スピーチではありませんが、八嶋智人くんの披露宴の司会進行をした時は、さすがに何冊か本を買って勉強しました。スピーチは自分で原稿を書かないといけないのがなかなか難しい。その人のエピソードとか自分との関係とか盛り込まないといけないですし。でも、やるからにはやっぱりウケたいですよね(笑)。
「娘の結婚式の時は、ベロンベロンに酔っ払うと思う」
自分が若い時はそうでもなかったですけど、子どもがいると、どうしても“結婚式”の想像はしますね。
自分の息子と娘は2人ともまだ小さいので、まずは子どもたちが結婚する姿を見届けられるように頑張らないと(笑)。でもたぶん、娘の結婚式の時には、さっきお話した番組のお父さんのように、ベロンベロンに酔っ払うかもしれません(笑)。息子の時はどうだろう…。とにかく、お父さん、子どもの成長を楽しみに頑張ります!
撮影:河井彩美
取材・文:中村裕一
<映画「ウェディング・ハイ」ストーリー>
結婚式、それは新郎新婦にとって⼈⽣最⼤のイベント。
ウェディングプランナーの中越(篠原涼⼦)に⽀えられ、新郎・彰⼈(中村倫也)と新婦・遥(関⽔渚)のカップルも幸せな式を迎える、はずだった…。
しかし、スピーチに⼈⽣を懸ける上司・財津(⾼橋克実)をはじめ、クセ者参列者たちの熱すぎる思いが⼤暴⾛。式はとんでもない⽅向へ…!?
中越は披露宴スタッフと共に数々の問題を解決しようと奔⾛するが、さらに新婦の元カレ・裕也(岩⽥剛典)や、謎の男・澤⽥(向井理)も現れて…。
果たして絶対に「NO」と⾔わない敏腕プランナーは、全ての難題をクリアし、最⾼の結婚式を2⼈に贈ることが出来るのか──︖
映画「ウェディング・ハイ」は、3月12日(土)ロードショー。
最新情報は、映画「ウェディング・ハイ」公式サイトまで。