さまざまな世界で活躍するダンディなおじさまに、自身の半生を語ってもらうインタビュー企画「オヤジンセイ~ちょっと真面目に語らせてもらうぜ~」。
年を重ね、酸いも甘いもかみ分けたオトナだからこそ出せる味がある…そんな人生の機微に触れるひと時をお届けする。
今回登場するのは元プロボクサーで俳優・タレントの赤井英和。後編ではボクサー引退のきっかけとなった試合、その後の俳優への転身、父として夫として、そして今、Twitterで話題を呼んでいる、妻・佳子さんが11月17日に上梓する「赤井図鑑」(扶桑社)について語ってもらった。
<【オヤジンセイ:前編】赤井英和 やんちゃだった学生時代と壮絶なボクシング人生「ただただ一生懸命だった」>
壮絶KOでボクサー引退。俳優・赤井英和の誕生
1985年2月に行った大和田正春戦は7ラウンドKO負け。試合後、意識不明になり、そのまま病院に運ばれて開頭手術を受けました。今、ほんまに生きてるだけで儲けもんです。あのとき、すさまじい大けがをしたけど、かろうじて命が助かった。そのおかげで、今こうして芸能界で仕事をしていられるんだと思います。
(俳優デビューとなった)映画「どついたるねん」に出たのが30歳の時ですから、そこから約30年。ぼちぼち、ちょっとずつお仕事が増えていく中で、毎回、いただいた台本を必死に覚えて、覚えて、もう30年以上も経ったのかというのが正直な気持ちです。
『高校教師』『人間・失格~たとえば僕が死んだら』『略奪愛・アブない女』『半沢直樹』(以上、すべてTBS)。おかげさまでいろいろなドラマや映画に出させていただきましたが、一緒にお仕事していただいたスタッフ・キャストのみなさんにはセリフ覚えの悪さも含め、えらいご迷惑をおかけしたと思います。「また赤井(がNG)か~」みたいな(笑)。
それこそ「どついたるねん」の時は最初ですから、もう何したらいいかまったく分からなかったです。今でも覚えているのは、記録係の今村治子さん、通称“おハルさん”から「役者になるんだったら、スタッフ・キャストみんなに愛される人になりなさい」と言うていただきました、その言葉。それは、今でも自分にとっての宝物ですし、これからもそうあるように目指していきたいですね。
父として長男へ、夫として妻へ贈る言葉
ボクサーになった長男の英五郎は、こないだのデビュー戦(東日本ミドル級新人王予選4回戦)で、残念ながら負けましたが、僕は「あと30連勝せい」と言いました。強いものを持ってるから、きっとやってくれると思います。
父親と同じ道を選んだことは…めちゃめちゃうれしいです。誰に似たのか真面目な男なんですよ(笑)。地道にコツコツ練習を重ねているので、それは絶対、花が咲くと思います。練習は嘘をつかないって言いますし、努力は必ず実りますから。
先のことはともかく、「今」が一番大事やと思うんです。いつでも「今」が大切ですし、「今」を生きなあかんと思います。(そう信じる気持ちは)たぶんそれはずっと変わらないと思います。
夫婦円満の秘訣ですか?(即答で)「早いこと謝れ」。謝るのは早いに越したことありません(笑)。僕の場合、謝りすぎて、たまに何で謝ってるのか分からんなることもありますけど(笑)。
コロナ禍になって毎日マスクはしてますが、そのほかには何も変わってません。悩みといえば…悩みがないのが悩み、ですかね(笑)。
赤井英和、パイロットになる
「もし、ボクサーになっていなかったら?芸能界に入らなかったら?違った自分になってみてください」。その質問に、赤井から返ってきた答えは「パイロット」。その理由とは?
太平洋戦争中、父親は航空隊に憧れて志願したんですが、視力で落とされたんです。それを戦後、非常に残念がっていて。もちろん合格していたら生きて帰ってはいないと思いますけど。
父はその後、海軍に入って通信部でモールス信号を習って、後に教員として教えていたらしいんです。それもあって、子どもの頃、飛行機の話をしたらお父ちゃんが喜んだんですよ。せやから、よく一緒に大阪空港行って飛行機を見たりしました。
本当のところ、パイロットなんて別になりたくないんですけど(笑)、もし今、親父がおったら見してあげたいなと思って着てみました。
「赤井図鑑」発売記念 赤井英和・佳子夫妻おまけ対談
赤井佳子著「赤井図鑑」(扶桑社)
2021年11月17日発売
定価 1,650円(税込)
赤井:今度「赤井図鑑」という本が出るみたいだけど、佳子ちゃんのTwitterなんて見てないし、そもそもTwitterと言うものが分からない…。
佳子:Twitterがこの世のどこに存在するのか、探し当てられないんだよね(笑)。
赤井:近所でパチンコしてたら隣のおばちゃんから「(Twitter)見てるよ!」って言われても、「何が?」って。
佳子:最初、赤井を載せようとは思っていなかったんです。隣から聞こえる鳥の鳴き声が何だろうと気になって、そのことについてつぶやいたんですが、そのときに、隣の家がちょっと写っていたら、子どもたちに注意されて。じゃあ、赤井だったらいいか、と(笑)。
赤井:自分もやっと最近メールやLINEが出来るようになったくらいで、Twitterの見方なんて分からんし。でも、本の発売は楽しみにしてます(笑)。
佳子:(投稿される赤井の言動は)あまりにも信じられないことのように見えるのか、「やらせだ」とか言われますけど(笑)、全然そんなことなくて、すべて本当にあったことなんです。
赤井:そうやな。
佳子:そこが特に若い女性にとって意外だったみたいで、写真や動画を載せるたびに「かわいい」「かわいい」って反響をいただいて。
赤井:どこがやねん(笑)。
佳子:「赤井図鑑」も楽しみにしてただけたらありがたいです。
撮影:河井彩美
取材・文:中村裕一