森川葵が、11月7日(日)14時~フジテレビで放送される『ザ・ノンフィクション「『おかえり』の声が聞きたくて〜歌舞伎町 真夜中の処方箋〜」』の“語り”を担当する。

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「真夜中の薬局」を一人で切り盛りする薬剤師と、そこに集う女性たちの心の交流を追う

新宿・歌舞伎町…ホストクラブのネオンと喧噪(けんそう)が響く街角に、夜8時に開店する薬局がある。深夜に薬局を訪れる客の8割は女性。ほとんどが“夜の街”で働き、歌舞伎町に暮らす人も。そんな彼女たちから「歌舞伎町のお父さん」と呼ばれ信頼を寄せられているのが、たった一人で薬局を切り盛りする、中沢宏昭さん(43歳)だ。

ただ、中沢さんとおしゃべりをする女性、人生相談をしにくる女性、話題は、仕事や恋愛の悩みなど実にさまざま。夜な夜な薬局にやってくる客は、処方箋を手に薬を求めるだけでなく「自分の居場所」を求めて、ここを訪ねる。

そんな中沢さんのもとを決まって火曜日の夜に訪れる女性がいる。20代の智花さんは、高校生の頃から気持ちの浮き沈みに悩み、心療内科への通院を続けている。

この薬局に通い始めたのは1年ほど前。常連客の中では珍しく、智花さんは歌舞伎町で働いているわけでもなく、住人でもない。それでも智花さんがここに通う理由は、中沢さんが「おかえり」と言ってくれるから。地方から上京し、都会で一人暮らしをする智花さん。中沢さんがまるで家族のように、迎え入れてくれることが、彼女にとって心の安らぎになっているのだ。

そんなある日、智花さんが、薬を大量に飲み救急車で搬送されたという知らせが…。

世界有数の“夜の街”、新宿・歌舞伎町の「真夜中の薬局」で交わされる心のやり取りをカメラは見つめた。今回、約2年ぶりに番組の“語り”を担当した森川は、そんなやりとりをどのように感じたのか。収録後に聞いた。

<森川葵 インタビュー>

――“語り”の収録を終えた今の感想は?

まず、こういう、中沢さんのような人がいることで救われる人はかなりいるだろうな、と思いました。

私自身もそうですけど、友だちにはちょっと相談しにくい悩みってあるものじゃないですか。距離が近い分、余計に言いにくい…みたいな。そういうときに、中沢さんのような(ただただ聞いてくれる)方がいてくれると、心が救われることがあるだろうな、というのを感じました。

――森川さんにとって中沢さんのような存在はいますか?

母ですかね。家族ではありますけど、離れて暮らしていて適度な距離があるので、「誰かに相談しにくいな」ってことがあると、相談します。「お母さんなら、何があっても味方でいてくれる」という気持ちで連絡します。

逆に母以外だと面と向かって何でも言えるという人はいないので、中沢さんに会えた人たちはすごく幸せだろうな、って思います。

――実際に、中沢さんのような方がいたら話したくなりますか?

なりますね。なんかこう絶対的な安心感があると思いましたので。それに、薬剤師さんということで、こちらの状態もわかったうえでアドバイスをしてくれるのもありがたいなって。

――薬局に訪れる女性たちもさまざまな事情を抱えていましたが、彼女たちを見てどんなことを感じましたか?

一人暮らしをしていると、悩みや話したいことがあっても、人に話す機会がなくて、自分のなかでグツグツと煮詰めて、それが、悲しみやイライラに変わってしまうということってあると思うんです。

今回の女性たちのなかにもそういう感情がある気がして、「すごく分かるな」と思って、共感しながら読みました。

――中沢さんに「おかえり」と声をかけられると「泣きそうになる」という女性もいました。

そこもわかります。友だちの家に遊び行ったときに、「いらっしゃい」と声をかけてもらったり、人のいる家の温かみを感じたりすると、ホッとするというのはありますよね。だから、「おかえり」なんてやさしく言ってもらったら、うれしいだろうなって。

私は自宅で猫を飼っているのですが、帰ったときに「にゃー」と言われると、「おかえり」と言ってもらっているようでうれしくなりますから。

――中沢さんにはどんな印象を持ちましたか?

お仕事終わりにラーメンを食べているときの笑顔がとても素敵で、あの笑顔を見た瞬間に「ああ、この人は本当にやさしい人なんだろうな」と感じました。

人の悩みを聞くのは、負担になることもあると思いますし、意外とご自分の悩みは人に話せなかったり、抱え込んでしまったりしていることもあるんじゃないかと思うんです。でも、あの笑顔を見て、ちょっとした幸せがあることでも、人は元気になれたりするものだよなと改めて思い、ちょっと安心しました。

――今回、『ザ・ノンフィクション』の語りは二度目でしたが、森川さんにとってナレーションの仕事はどのようなものですか?

昔から好きで、特にやりたいと思うお仕事です。今回もそうでしたけど、自分が今まで知らなかった世界を知ることもできますし、ほかの人の人生をちょっと離れたところから見て、それを視聴者の方に届けるというのが、すごく好きといいますか。

映像の邪魔をしないように、いかに見てくださる方がスッとその世界に入れるか、というある意味での進行役ができるのはうれしいですし、今後も頑張っていきたいお仕事です。