テレビマンの仕事の極意と、彼らの素顔に迫る「テレビマンって実は」。
今回は、『めざましテレビ』（毎週月〜金曜 5時25分〜）に放送開始から関わり27年、現在はエンタメコーナーの発生演出を担う、石田央美が登場。
長年、お茶の間に親しまれている朝の情報番組は、どのように作られているのか？全4回にわたる連載の第2回目では、連載に石田を推薦してくれた高橋龍平チーフプロデューサーを交えて、石田がテレビの世界へ入ったきっかけや、その気さくな人柄に迫った。
＜【第1回】『めざましテレビ』ひとすじ27年！エンタメ演出・石田央美が語る生放送の舞台裏＞
テレビ番組を作りたいなんて思ってもいなかった
――石田さんは、もともとテレビが好きだったのですか？
石田：子どもの頃は好きで見ていましたけど、特に「テレビ番組を作りたい」という気持ちはありませんでした。青森県で生まれ育ったこともあり、そもそもテレビは、東京のいい大学を出た、一握りのテレビ局員が作っていると思っていたんです。
でも小学生のときから、何かを演出するのは好きでしたね。クラスの“お楽しみ会”で、「すずめのお宿」津軽弁バージョンを作って自分のチームで発表してみたり、パーティを仕切ったりすることが多くて。
そうして高校生になり、大学へ行くか専門学校へ行くか…と考え始めた頃、学校資料の山をなんとなく見ていたら「放送専門学校」というのを見つけて。どんなところだろうと思って、東京にいた従兄弟に、パンフレットを送ってもらいました。親に反対されると思ったので、こっそり。
送られてきた資料を見て驚きました。放送業界は大卒のテレビ局員だけではなく、専門学校を出て制作会社に入って携わる人もいると、初めて知ったのです。それまでテレビ番組を作りたいなんて思ってもいませんでしたが、がぜん興味が湧いてきました。
予想どおり、親には反対されました。悩んで大学受験もしましたが、どうしてもテレビの世界を諦めきれなくて。1ヵ月ほど、親と口を聞かない日々を過ごしましたが、最終的に青森から東京の放送専門学校へ進学しました。
――専門学校卒業後、すぐに『めざましテレビ』に関わったのですか？
石田：本当はドラマに興味があったのですが、卒業後は制作会社に就職し、『追跡』（※日本テレビ系列）という情報番組を担当していました。そこでいろいろあって大喧嘩して、1年弱で飛び出しちゃったんです（苦笑）。
無職でブラブラしていたら、その会社で気にかけてくれていた方から電話がきて「いつまでブラブラしてるんだ、働け！」と怒られまして。そして、「明日、新しい仕事の面接をするから来い」と呼ばれて。行ってみたら、そこが新番組『めざましテレビ』制作チームだったんです。
（※）『追跡』：当時、参議院議員だった青島幸男氏と、女優の高見知佳による情報・ドキュメンタリー番組。「はじめてのおつかい」や「大家族特集」といった企画の元祖的存在。
――1994年4月、『めざましテレビ』が放送開始されます。石田さんはどのようにキャリアを築いてきましたか？
石田：初めはADとしてフロア（スタジオ仕切り）を担当し、2年弱でチーフADになりました。そして現在の「ココ調」の前身である「めざまし調査隊」を5〜6年ほど行うなどしてエンタメに関わるようになり、27年間のうち実質半分くらいはエンタメに携わっています。
――2年弱でチーフADになるのは早いほうですか？
高橋：チーフADは3〜4年目で就任するケースが多いので、少し早いかもしれません。全ADのトップですから当然、重要な役割を担います。現在の『めざましテレビ』はスタッフは全員で約210人いて、ADはそのうち70人程です。石田さんがチーフADになったときは、スタッフの人数は今の半分ぐらいでしたか？
石田：そうですね、当時は本当に少ない人数で作っていました。現在は「スポーツ班」や「エンタメ班」など班ごとにADがいますが、あの頃はいなかったので、すべてのコーナーを担当するADチーフという役割でした。
あと、今でこそ女性スタッフは大勢いますけれど、当時はほとんどいませんでした。フジテレビ社員の女性は1〜2人いたと思いますが、制作会社の女性スタッフは、AD5人だけでした。今では半数近くが女性になっています。
自分が面白いと思った演出を信じられる
――高橋さんから見て、石田さんのどんなところを「すごい」と感じますか？
高橋：誰にでも図々しく馴れ馴れしく、気さくに話せるところ（笑）。大物芸能人でも旬の若手女優さんでも、誰が来ても懐に入っていけるところが素晴らしいと思います。相手をのせるのが上手です。
そして、自分が「面白い」と思った演出を信じられるところも。たまに“寒い”演出のときもあるんですけれど（苦笑）。自分のセンスを信じて主張できる石田さんは、『めざましテレビ』に欠かせない存在です。
――石田さんは昔からコミュニケーションを取るのが得意だったのですか？
石田：高橋さんに笑われると思いますけど…いまだに人見知りなんですよ。人見知りで“緊張しぃ”なんです。でも、ゲストやマンスリーエンタメプレゼンターの方が来たら、そんなことは言っていられません。
場が盛り上がるように、おちゃらけたり、ちょっと際どいジョークを飛ばしてみたりするんですが、実は大汗かいてるんですよ…（苦笑）。「あはは！」と笑いながら、何でもないように振る舞っていますが、本当はアホみたいに汗かいています。やらないといけないからやるぞ！と、自分を奮い立たせて。
親しい人からは「石田はおしゃべりでうるさい」と言われるんですけどね。でも本来、人前で何かしたり、初対面の方と話したりするのは、そんなに得意ではありません。昔、一度だけ合コンに行ったときも、あまりにもしゃべれなくて、つらくて途中で帰りました。「もう二度と行かない」と思って（笑）。
――「自分が面白いと思った演出を信じられる」のはなぜでしょう。
石田：やっぱり「経験」があるからですね。今までたくさん怒られたし失敗もしてきたから、ダメと言われそうなことは、なんとなくわかります。だから「これはちょっとできない」と言われても、すぐに「じゃあこの方法は？」と“経験の引き出し”を引っ張ってきて演出ができる。
キャスターやゲストの方に何かお願いするときも、「この人はどこまでお願いしても大丈夫か」「どんな伝え方をしたらのってくれるか」みたいな勘が働くんです。相手に合わせて言い回しをちょっと変えるだけで、うまくいくこともあります。
＜第3回「生放送のスタジオに誰もいない…『めざましテレビ』エンタメ演出家がヒヤリとした瞬間」＞
