7月18日(日)14時から、フジテレビでは『ザ・ノンフィクション「最期の願い ~父と息子と家族の2週間~」』が放送され、語りを井上真央が担当する。
最後まで教師であることを貫こうとする父と、家族の愛憎をリアルに綴った物語
2021年3月16日、父・静徳(しずのり)さん(60)は自宅に戻ってきた。頸椎にできたがんが神経を圧迫し、首から下は自力で動かすことができない。さらに、肺にもがんが見つかり、緩和ケア病棟から自宅に帰る決断をしたのだ。
父には、どうしてもかなえたい願いがあった。自身が校長を務める小学校の卒業式に出席すること。定年退職となる今年、教師人生「最後の卒業式」だった。
3月25日に行われる卒業式で、最後の教え子にどうしても伝えたいメッセージがある。病状が悪化していく中、この願いをかなえることができるのか…。
そんな静徳さんには、心配事がもう一つあった。それは長男・将大(まさひろ)さん(33)のこと。教師の仕事に人生をかけた父は、家庭の事や子育ては妻に任せっ切りだった。
学校でいじめを受け、次第に心を病んでいった将大さんとの間には、深い溝ができていた。変形したストーブ、壁に空いた穴。家のあちこちに、将大さんの怒りが刻まれている。
寝たきりとなって帰宅した静徳さんは、将大さんとの会話を試みるも、普通の親子のようにはいかない。しかし、卒業式に出席したいという父の願いをかなえようと、介護を続けるうち、将大さんの中で何かが変わろうとしていた。
今まさに命が燃え尽きようとしながらも、父が貫こうとする教育者としてのプライドと、それを間近で見守るうち、変化していく息子の思い。むき出しの生きざまに触れた井上は、どんなことを感じたのか。収録後に聞いた。
<井上真央 インタビュー>
――2週間の間に起こった父親と息子、そして家族の物語を読んで、どんなことを感じましたか?
将大さんが「理想の家族の形があった」と話していたように、こうでなければ…という思いが、かえって自分を苦しめてしまったり、関係をこじらせてしまうことってありますよね。
今回は、松下家のお父さんの闘病と介護を通しての家族の物語でしたが、同じ状況のような方々に限られた話ではなく、親子や家族の関係性という意味では誰もが共感できる部分があるのではないかな、と思いました。
――井上さん自身はどんなところに共感しましたか?
共感というところでいうと、私はしっかり者の長女ですので(笑)、私が頑張らないと、と思いながらも、時には現実から逃げ出したくなってしまう、長女の瑛梨歌さんの気持ちはよく分かりました。瑛梨歌さんの存在は、この一家にとっての希望ですけど、とても明るい瑛梨歌さんにも、きっといろいろな葛藤があったのかな、と。
また、将大さんがお父さんと初めて向き合った時、責める言葉しか出ていなくても、そこから寂しさのようなものも伝わってきました。
お父さんは、立派な教育者でしたが、将大さんにとっては普通のお父さんでいて欲しかったんだろうなと。
――ほかに印象的だったシーンはありますか?
最後の食卓の場面ですね。みんな黙々と食べていましたが、それぞれの中にいろいろな思いがあった2分間だったのでしょうし、将大さんも、お父さんに「お礼を言った」というほど抱えていた思いがあったんだなと思いました。
――ご自身の家族に対して思ったことはありますか?
大変な状況になると、自分だけが頑張っているような気持ちになることもあります。家族であっても当たり前のことに感謝をしたり、思いやりを持つことの大切さを改めて感じました。
――最後に、改めて読者、視聴者にメッセージをいただけますか?
家族の問題は、その家族にしか分からないこともありますが、共感できる部分は多くあると思います。
最後まで教師を貫いたお父さんと、2週間という時間の中での家族の変化を見て欲しいですね。