大ヒットしたコンサート映画「THE ERAS TOUR」以上のデザイン性
今回の「THE ERAS TOUR」は、昨年3月に全米でスタートした。ファンの間でコスプレが流行し、この日も大胆なコスプレを楽しむファンはいたけれど、それよりも驚いたのは観客の多国籍ぶりだった。
今までも海外からの観客はいた。テイラーの前回公演もそうだった。でも、今回はその人数も国の数もまるで違う。ちょっと大げさに言うと、私の周りは外国語しか聞こえなかった。その様子からも国を超えて人々を夢中にさせているテイラーの影響力がうかがえた。
さて、「THE ERAS TOUR」は、冒頭のMCでテイラーが「この18年のEra(=時代=作品)を一緒に楽しみましょう」と呼びかけたように、1stアルバムを除く9枚のアルバムで構成されている。
とは言っても、よくあるオールタイムヒッツのようなライヴではなく、楽曲をアルバムごとに衣装もセットも演出も変えながら演奏していく。その1stセクションに選ばれたのは、コロナ禍でツアーを断念した2019年のアルバム「Lover」だった。
ここから時間軸とは関係なく、「Fearless」「evermore」「reputation」「Speak Now」「Red」「folklore」「1989」と続き、2曲のサプライズソングを挟んで、最後は「Midnights」となった。
日本でも昨年10月に公開となった「THE ERAS TOUR」のコンサート映画は、観ていたけれど、実際目にしたステージは、デザインがより凝っているように映った。
正面に大きなメインステージがあって、巨大ヴィジョンの左右にバンドとコーラスがいる。そして、メインステージ中央からアリーナの真ん中に長く張り出したスラストステージがあって、その先端がT字型になっている。
そこから広めのダイヤ型ステージがつながっていて、主にそこでパフォーマンスをするのだが、せり上がりの可動式ステージなどさまざまな仕掛けがある。
オープニングではダンサーが手に持っていた大きなカイトのような布で、スラストステージの床を覆い隠して開けると、テイラーがファンタジックに登場して、「Miss Americana & The Heartbreak Prince」を歌った。
作品ごとに個性があって、「reputation」などはエッジが効いているが、全体を通して“ファンタジー”がひとつのキーワードになっていたと思う。
そして、2曲目の「Cruel Summer」から早くも大合唱となった。
5万5千人の大合唱は、2008年の2ndアルバム「Fearless」のセクションでも起きた。「You Belong With Me」で歌い、「Love Story」のイントロでもすぐに大歓声が沸き上がった。2015年の東京ドーム公演ではなかったことだ。新しい観客も古い曲をよく知っている。2010年の3rdアルバム「Speak Now」でも同じだった。これもテイラーズ・ヴァージョンの効果なのだろう。
5曲目の「Lovers」ではピンク色のアコギで弾き語り。このアコギの弾き語りは、「Long Live」や「betty」など随所にあって、そのたびに衣装に合わせてギターの色が変わったり、また中盤の「All Too Well」は10分超のフル尺で演奏された。
弾き語りはテイラーの原点だ。ダンサーと一緒に華やかに踊るパフォーマンスは、ポップスターだけれど、弾き語り、とりわけギター&ベース4人とのパフォーマンスが良かったけれど、そこではミュージシャンの顔になっていた。
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