豊川悦司さんが、俳優の仕事に大反対だった父への思いを語りました。
4月2日(日)の『ボクらの時代』は、4月7日(金)公開予定の映画「仕掛人・藤枝梅安2」で共演している、豊川悦司さん、片岡愛之助さん、椎名桔平さんが登場しました。
豊川悦司 応援してくれた母、大反対だった父
豊川さんは「役者になるということに関して、父親は大反対」だったと明かしました。
豊川:母親は、すごく応援してくれた。「好きなことやりなさい」って、ずっと言ってくれて。おやじのほうは、売れてからも「もう十分、気が済んだろう」って。
愛之助:「やめろ」って言うんだ。
豊川:「やめろ」って。そうそう(笑)。言うんですよ。
愛之助:すごい。厳しいですね。
豊川:厳しいっていうか、なんだろう。嫌だったのかな。
愛之助:最後まで、そういう感じだったんですか?
豊川:いや。さすがに、役者になって20年くらい経つと、言わなくなりましたけど。でも、うちのおやじもすごく楽しい人だったので、自分がこういう仕事をしているのは、その父親の血なのかなっていうふうに思ったりはするけどね。
椎名:お子さんが「女優さんになりたい」って言ったらどうします?
豊川:うーん…「なりたい」って言ったら、たぶん応援すると思いますよ。自分がそういうふうに言われたからじゃないけど、応援してあげたいなと。ただ、二世だからって成功する、そういう世界ではないので。
椎名:うん。
豊川:二世の方でも、出てる人はやっぱりその人がすごいから、売れて出てきてるわけで。なかなか厳しい世界ですよね。(愛之助さんに)歌舞伎でもそうですよね?
愛之助:そうですね。代々ずっと引き継がれてますけど、実際、そこのおうちに生まれたら大変だろうなって、思いますね。
豊川:今の(中村)勘九郎さんとか、(市川)團十郎さんとか、生まれたときから常にカメラが家庭の中にまで入り込んで、全部撮ってたりとかするわけじゃないですか。
愛之助:はい。
豊川:ときどき、撮りためたものをスペシャルにして、歌舞伎の世界(番組)をやったりとかするけど。僕は、自分の仕事の作り方として「俳優としての自分」と「普段の自分」というものを、どちらかというと、混ぜこぜにしないようにしているタイプだと思うので。
愛之助:うん。
豊川:だから、プライベートも公にするのは好きじゃないし、できたらこういう取材も受けたくないっていうのが正直あるんですけど。
愛之助:受けたくないんですか。それは、すいません(笑)。
豊川:でも、それは必要に応じて、やらなきゃいけないことは、やらなきゃいけないんだけど(笑)。
愛之助:昔は、絶対、嫌やったんですか?
豊川:絶対、嫌でしたね。だからもう、「トヨエツ」と言われるのが嫌で名前変えてやろうかと思ったっていうくらいですからね。「もう、役者やめちゃおうかな」と思うことも、何回かあったりとかね。
椎名さんが「昔よりは、そういうところはマイルドになってきていますよね」と投げかけると、「なったね。だいぶなった」と豊川さん。
豊川:(トヨエツと)呼ばれ始めたころというのは、何か、自分の中にこう、ストンと落ちてこなくて。
愛之助:はい。
豊川:たまたま、市川崑さんという映画監督が、現場で「トヨエツくん、トヨエツくん」って呼んでくださることがあって。それから、なんかすごく自分の中でね、「ああ、これはそういうことなんだな」と腑(ふ)に落ちたということがあって。
椎名:うん。
豊川さんは「トヨエツ」と呼ばれることについて、「今では、自分にとって名誉なことと思えるようになった」と打ち明けました。
椎名桔平「佐藤浩市さんは、昭和の名優を受け継ぐ人」
3人は、椎名さんの趣味であるゴルフの話題をきっかけに、先輩俳優たちの魅力についても語りました。
豊川:(椎名さんに)ゴルフはもうプロ並みでしょう?
椎名:いや、ホント、ほどほど。自分では「中級」って言ってます。「上級」というのは、佐藤浩市さんですよ。あの人は、面倒見がいいというか、後輩たちも自分のクラブに連れて行って経験させるというか。
愛之助:うん。
椎名:後輩に対して気にかけているという、そういう姿を見たときに、「ああ、昭和の名優さんたちを受け継いでいる世代の、最後かな」っていう。
豊川:やっぱり、俺らみたいな劇団あがりとはちょっと違うんだよね。
椎名:(笑)。何か違うんですよね。
豊川:うん。僕、お父さまの、三國連太郎さんにも、かわいがってもらってた時期があったので。お家にお呼ばれしたりとか。すてきな人で。
愛之助:どういう方でした?三國さんって、僕は画面の中でしか知らないですね。
豊川:うーん、なんだろう…塊(かたまり)。
愛之助:「塊」。なんの塊なんですか?
豊川さんは、三國さんを「なんていったらいいんだろう。本当にその一挙一動から、もう目が離せないみたいな。何かとても魅力のある、いろんなものが固まった“すごい人間”という感じなのかな」と表現しました。
片岡愛之助、父からの教え「時分の花」と「まことの花」
偉大な先輩たちを語る中で、3人は俳優論も展開しました。
椎名:三國さんでも…いろんな名優の方が、もう死ぬまで役者を突き進めていったというか。
豊川:やっぱり、人が引きつけられるものって、その人が本当に心底それをやりたいとか、それに夢中だっていうものをやってるときだと思うんだよね。だから、俳優はうまければいいっていうもんじゃないっていうところは、たぶんそこにあるんだろうね。さっきの「塊」じゃないけど、そこにどうしても引き込まれていく、みたいな。
椎名:ああ、そういう「塊」なわけですね。
愛之助:よく、うちの父なんかも言ってましたもんね、世阿弥の言葉で。「時分の花」と「まことの花」。「時分の花」というのは、今の年齢に応じた、いわゆる花。若さゆえの美しさ、きれいさ、かっこよさ。「まことの花」が、今おっしゃった「塊」ですよね。本当の自分の中から出てくる、魅力であったりというものが「まことの花」なんですよね。だから(三國さんに)「まことの花」が咲いているときが、その「塊」だったんじゃないですかね。
椎名:愛ちゃんが今50歳、トヨさんの60歳って、その「まことの花」を咲かせるための時期なんじゃないかな。
愛之助:なるほど。
椎名:あとは、やっぱり60になってくると、スタッフが若くなってくるでしょう。
豊川:うん。
椎名:でも、自分たちはあまり変わったと思ってないですよね。
豊川:ないね。
椎名:気が若いのかね、僕たち。
豊川:どうなんだろうね。(60歳に)「見えない」って言ってもらえると、すごくうれしいけど、でも「見えないのか」っていうところもあったりとかするし、なんかね…。
椎名:そうそう(笑)。
豊川さんは「若く見られるのもいいけど、ちゃんと大人として見られたいっていう欲もどこかにある。贅沢(ぜいたく)だけどね」と、複雑な心境を明かし、3人で笑いました。